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物価上昇で年収500万世帯はほぼ壊滅「インフレに負ける年金」

2022-06-21 06:22:57 | 日記
政府が2004年に導入した「マクロ経済スライド」という支給抑制策で今後30年間、年金額はほとんど増えない 。
現役の平均収入(額面)は現在の月額「45.11万円」が54年度には「73.34万円」にまで上がる生涯(20~59歳)の平均年収500万円の会社員世帯(同い年の専業主婦と2人)が受給する年金は当初の月額「21.57万円」が「23.55万円」にしかならない。つまり、現役の収入は6割以上も増えるのに対して、年金額は1割弱しか上がらないのだ。年金額がどんどん「目減り」していき、その結果として「世の中の水準」に比べて高齢者が相対的に「貧乏」になっていく構図である。
■生活費増えるが年金額は横ばい
 生活費は標準的な家庭を想定し、総務省の家計調査なども参考にして「月額25万円」(年額300万円)とし、年金額は「マクロ経済スライド」の結果、30年間ほとんど上がらない。しかし、生活費は物価上昇(年間0.8%)に合わせて毎年少しずつだが着実に値上がりしていく。当初の300万円は32年度に「332万円」と約1割増になり、44年度には「365万円」に、そして54年度は「396万円」まで膨らむ。
 長い間のデフレ経済に慣れてしまったため、「モノの値段は上がらない」という先入観をお持ちの方も多い。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻などで原油を筆頭に各種商品の「値上げ」が相次いでいる今こそ、頭を切り替えてほしい。経済の成長に合わせて物価が適度に上がっていくことこそがノーマルな状態なのである。
 さて、増えていく「300万円」の生活費と増えない年金額を比べた結果はどうか。「年収500万円世帯」は、ほぼ壊滅状態だ。夫婦の年金額は月21.5万円がスタートだから当初から赤字、そして生活費は毎年増えるので赤字幅は年々膨らんでいく。最初のころは40万円台、50万円台だったのが50年には100万円を突破する。同様に「累計赤字額」も膨らみ、最終54年度は「2774万円」の赤字だ。
■物価に負けると「赤字」が膨らむ
 かつては「インフレに負けない」点が公的年金のメリットだったが、「マクロ経済スライド」で「インフレに負ける年金」になる結果だ。
 一方、「年収700万円世帯」は、年金額が月3万円ほど「500万円世帯」より高いのでここまでの赤字は出ない。年間赤字額は100万円以下で済み、累計赤字額も100歳で1200万円弱でおさまる。つまり、累計赤字額程度を100歳までに準備できればこの家計は成り立つ。
 ただし、700万円世帯はやや高給取りをイメージしていることを思い出してほしい。現役時に高収入だった家計はおのずと膨張する。支出が増え、それを減らせない家計が多いのだ。従ってむしろこのケースは、やや高給取りがリタイア後の生活費を「300万円」程度に抑えられた場合には、この程度の赤字額で済む、と解釈したほうがいいだろう。
 その証拠に、高給取りらしく旺盛な消費生活を続けるとみられる前半の20年間、つまり84歳までの生活費を2割増の「月30万円」として試算すると、85歳以降を今と同じ「月25万円」に抑えても累計赤字額は「2500万円」近くまで膨らんでしまった。
 逆に、「500万円世帯」が85歳以降の生活費を2割減の「月20万円」に抑えると、累計赤字額は「1600万円」程度でおさまった。
 
 今のお金の価値である「現在価値」から、変動率を使って将来のお金の価値を意味する「将来価値」を求める手法にも慣れてほしい。「将来価値」は計算式を使えば電卓で簡単に計算できる。「物価は上がる」を前提に、将来の費用も物価に合わせて値上がりしていくという思考習慣を、このさい思い出そう(デフレ前は、そうだったのだ)
「500万円世帯」の年金額はもらい始めの月額約21.5万円(年間259万円)が34年度には「同約25万円」(同300万円)を超え、最終54年度には「同約32万円」(同383万円)まで増える。しかし、生活費はもっと上昇ピッチが高く、当初300万円だったのが最終的には「約474万円」まで5割以上も膨らむ。結局、「家計の長期予想表」に数字を落とし込むと、累計赤字額は54年度で「2900万円」を超えてしまう。「マクロ経済スライド」は過去2015年しか発動されていないが、今後常態化すると貧困老人が飛躍的に増えるはずです。
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