22・4・22 Tue
22年前の2000年GWに僕がV山の会のU師匠に付き添って貰いながら
辿った硫黄尾根の山行へ、今回は相棒のⅠ垣さんと共にもう一度その
ルートを辿ってみました。
前夜のうちに七倉登山口に入って、7:00にタクシーで高瀬ダムへ。
硫黄尾根の取り付きになる湯俣川出合から水俣川沿いの山径を辿
って途中の枝尾根から主尾根上へと延びる激登りの小径を経て尾
根筋に立ちました。
尾根上(12:00)に立つと傾斜が緩んでホッとします。ただ積雪が無
いので藪漕ぎを強いられながらの前進です。途中から残雪がポツポツ
と現れ始めて、やがてそのポツポツの繋がりが広くなってきた頃にな
ってようやく硫黄尾根を辿る愉しみに向き合う気分になってきました。
初日の核心部は硫黄岳のP1からP6まである前衛峰群です。目の前の
岩峰が何番目のピークかは判りかねますが、だからといって一つま
た一つと目の前に立ちはだかるピークを越えてゆくことに変わりは
ありません。
陽も傾いてきた頃、良い感じの平地(P6手前のコル)があったので
そこで幕営(17:30)。一日目の夕飯は生卵を使った親子丼です。
ルート内容からすればかなり豪華な食事を摂って、就寝…
22・4・23 Sat
四時に起床して朝食の雑煮餅を食べて出発(6:00)。今朝は硫黄岳の前に
あるP6を越えて本峰へ高度差400mを登り返します。
残雪を繋ぎながら硫黄岳山頂を目指します。所々で藪に阻まれながら
硫黄岳山頂(9:45)に到着。前回の時は雪原だった硫黄台地に積雪は
なく、藪が広がるばかりの景色です。
硫黄台地の端から雷鳥ルンゼを下って赤岳南峰・2459mへと登り返して
ゆきます。雷鳥ルンゼは予想以上にガレており、怪しげな残置を頼りに
懸垂やバックステップで下降。その後もルート上で起きる落石にヒヤヒ
ヤしながら進んでゆきました。
気疲れと昨日からの行動による体の疲れをひきずりつつ南峰に到着(12:31)。
予報では昼から雨が降りそうなので寝転んで休息をとる相棒とこの場で停滞
するか否かを相談します。時間的に早すぎるので、もう少し頑張って赤岳前
衛峰群へと踏み込んでゆくことにしました。
この赤岳前衛峰群も古くて落っこちた支点ばかりが目立ちます💦
かろうじて残っていた使えそうな残置を使い、概ね湯俣側に巻い
て懸垂を繰りながら前進。
視界が良いので、できたら今日中に赤岳主峰の次のコルまで行きたいと
話していましたが、なかなか遠い…、岩の処理一つ一つに時間がかかり
集中力も途切れそう。次善策に切り替えてよさげな幕場になりそうなロ
ケーションを求めつつ岩峰を一つまた一つと越えてゆきます。
崩壊跡が生々しいP4と思われるピークから懸垂をして狭いコル(17:00)
の千丈沢側の斜面を覆う残雪に平地を切り出してテントを張りました。
夕食は二日目の夕飯としては豪華な豚肉の鍋です。北鎌尾根を月が照ら
す、そんな美しい二日目の夜でした。
22・4・24 Sun
今日は抜けるぞ〜!と意気込んで出発(6:00)。岩がボロすぎて懸垂
できるか微妙だったので万全を期して赤岳を千丈沢側に大きく巻いて
ルンゼからコルに上がりました…💦
このコルが中山沢のコルかと思っていたけど地形図を見るとなんだか
違うような…、でもそこは中山沢のコルです。
とはいえ、僕の記憶の中の景色にある赤岳と同じ。赤岳を背に目の前に
聳えるピークへと登り返してゆきます。岩がボロいのは変わらずですが
赤岳前衛峰群に比べたら少しは歩きやすいようです。
岩峰が終わって残る西鎌尾根までのルートも意外に長いですが、硫黄尾根
が終わる…どこか安堵と寂しい気持ちを抱えつつようやく西鎌尾根のJPの
手前で休憩。ここでやっと電波が入るようになり、天気を確認すると翌日
の予報が素晴らしいらしい。
西鎌から槍ヶ岳へと進むつもりでしたが、西鎌の縦走路に立った所でガス
にまかれて小雨が降ってきました。とりあえず硫黄尾根を抜けたことだし、
早めではありますが今日の行動はここで終了(14:00)しようと思います。
三日目の夕食にしてはこれまた豪華な鶏肉たっぷりのスープスパです。食
いしん坊の僕達は毎日肉を食べてます。夕方になると晴れて先週登った笠
ヶ岳も見えてきました。明日を楽しみにして就寝
22・4・26 Mon
三時半に起床して五時に幕場を出発。予報通りの快晴の下、槍ヶ岳に
向かいます。景色はよいのですが意外と道程は長く、どうやら見た目
に思う程に槍ヶ岳は近くないようです。
最後は槍ヶ岳山荘の端を見上げながら小屋に到着(10:00)。
念のためロープだけ持って槍の穂先へ(10:22)。 遠目に硫黄尾根を
眺めながら今回の山行を振り返りました。
さて、帰りのバスがあるのであまりのんびりもできず、槍沢をせっせと下っ
て何とか最終バスに間に合いました。それにしても急いで歩くと上高地まで
も長く感じます。上高地からバスと電車とタクシーを乗り継いで七倉登山口
へと戻ったのは22時…もうフラフラです。本日はそのまま七倉で夜を過ごし
て、翌日に帰宅しました。
今回、硫黄尾根の核心は何ヶ所もあり気の張り詰めた時間が幾度と続きまし
たが、そんな日々を乗り越えられたのはⅠ垣さんのおかげでしょう。夕飯朝
食に顕れた創意と工夫に満ちた山飯のおかげで軽量しつつも相応の贅沢な食
事ができたことや、張り詰めた時間からきた心身の疲労を快復させてくれた
こと諸々に感謝です。
次の22年を経たとき、自分がどうなっているのかさえ分かりません。ただこ
の先も硫黄尾根が相変わらずそこに在りつづけることは、僕にとって少なか
らずの安らぎとなりそうです。