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特別決議、特殊決議とは

外国企業の株式を対価とする三角合併の決議要件について日本の一部経済団体と米欧の経済団体とが対立しているということで、この問題が日経の社説でも取り上げられました。

社説 経済活性化につながる三角合併解禁を(11/16)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20061115MS3M1500615112006.html


外国企業が自社の株式を対価として日本企業を完全子会社にできる三角合併制度の解禁を来年5月に控え、その具体的な実施ルールをめぐる論争が起きている。日本経団連は株主保護の必要性や、「外国企業による日本企業の子会社化がたやすくなり外国へ技術が流出する恐れ」などを理由に、三角合併を厳格に運用するよう自民党や経済産業省に要望した。米欧の経済団体はこれを批判している。株主保護は大切だが、三角合併導入の目的を再確認して、経済の活性化に役立つような適切なルールをつくる必要がある。


問題になっている決議要件ですが、米欧の経済団体(と経産省)は一般の合併と同じ「特別決議」、日本の一部経済団体は「特殊決議」にすべきと主張しています。それでは、特別決議と特殊決議はそれぞれどのようなものでしょうか。

株主総会の特別決議とは、
その株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し(定足数)、出席したその株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない(会社法309条2項前段)とされている決議
であり、

いっぽう特殊決議とは、
その株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(頭割りの半数以上が要求される。これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない決議
であるとされています。(前田庸 会社法入門 第11版より)

特殊決議とした場合、決議が成立するためには
(1)株主の頭数で見て半数以上が賛成
(2)株主の議決権数で見て3分の2以上の賛成
の両方が必要であるということになります。(1)(2)とも、総会に出席(書面やネットでの行使も含みます)した株主を母数とするのではなく、議決権を有する株主を母数としてカウントしますので、これは一般に議決権行使に関心の薄い個人株主を多く抱えている上場会社にとっては、実務上非常に難しいといえるでしょう。
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三角合併 経産省の見解

三角合併について、経済界と政府、そして欧米との対立点は、決議要件がメインになっているようす。

経済産業省 会見・スピーチ 大臣記者会見
http://www.meti.go.jp/speeches/data_ej/ej061030j.html

この↑北畑事務次官の会見では、次のようなくだりがある。
Q: 今朝方の経団連との会談で、経団連側から来年5月に解禁される三角合併の要件の厳格化ということが強く求められたという話ですけれども、経済産業省としては今後どういうふうな対処方針で臨まれていくご予定でしょうか。
 
A: 三角合併については、かなり時間をかけて経団連とは議論をしてきました。要件の厳格化というご趣旨は、特殊決議要件にせよという趣旨だと思います。私どもの方からは、国際的なスタンダードという意味で対処していくことで、基本的にはそういうご要望は難しいのではないかという趣旨でお答えをしたところでございます。
 三角合併については、会社法の現代化という法律改正の過程で産業界から問題提起がされ、それを踏まえて三角合併の部分については施行が1年延期された一方、企業買収防衛策などをできる法律改正は予定どおり施行して、株主総会でそれを導入するかどうかの2回チャンスがあるという措置をとってきたわけであり、私どもとしては三角合併の問題は措置済みのものではないかなと思っています。
 ただ、また今日そのように問題提起されたのは、むしろ三角合併の問題そのものではなく、ある意味で三角合併を一つの産業界の問題のシンボルとして提起されているのかと受け取っております。特にいろいろな業種で外国には時価総額の大きな企業があり、日本企業がそれに敵対的買収の脅威にさらされています。恐らくそれに対して有効な対応策をとってもらいたいというご要望だろうと思います。三角合併自身は友好的合併であり、敵対的買収防衛策とは違います。まず、経営陣が合併について合意し、それから、3分の2の特別決議で合併について株主総会の承認をとります。従って、合併そのものについては友好裏に行われている合併の一部です。残りの少数株主のところを三角合併というのは親会社の株でもいいということですから、外国の株でもいいということになるので、それがどうかという心配なのですけれども、これは基本的に3分の2の株主が合意している合併の話ですから、産業界が不安に感じておられる敵対的買収の対応策としては、少し焦点がずれているのではないでしょうか。
 従って、私どもは敵対的買収については、内資、外資の区別なく買収防衛策が改正前の商法でもとれるものであり、改正後はしっかりした対応がとれるのだということで産業界に説明してきましたので、そちらの方で行うべきだと思います。買収防衛策と攻める側のM&A、これは金融庁で措置をとられましたけれども、そのようなルールの整備をしてきているので、それで対応していただきたいと思っています。

Q: いまの三角合併の件ですけれども、経団連側の要求、厳格化というのは基本的に難しいということになりますと、このままいけば特殊決議ではなくて特別決議による法務省施行令というものが適用されることになるというふうに見ていらっしゃいますでしょうか。
 
A: 法務省の判断ですから、法務省に聞いていただきたいということが基本であり、従って一般論ですけれども、特殊決議をする理由というものが難しいわけです。なぜ1人1人の株主の数で過半数で行わなければならないか、それは少数株主の権利を保護するためにということなのでしょう。ところが、合併決議の際に買い取り請求を出せば外国の未公開株ではなくて現金でもらえるわけですから、少数株主の権利を保護するために特殊決議というのはなかなか理屈として成り立たないのではないかと思います。これは私どもの判断です。法務省はどのように考えておられるかはわかりませんので、所管は法務省ですから、法務省に確認いただきたいと思います。
 申し上げたいのは、産業界が恐れておられるのは外国企業による敵対的買収ですから、三角合併のところはそうではありません。そこを争点にしても、これは仕方がない話であり、三角合併はすべて友好的合併に基づく措置ですから、それでは株式を3分の2の決議をとって合併決議をするところを敵対的買収でやられたらどうか、67%をTOBでかけられたらどうかというご議論があるのですけれども、それならそこで戦うべきであり、そこで企業買収防衛策を行う、あるいはM&Aルールをきちんと国際水準のものにして、公正な手続に従って行うべきだという点が争うべき基本であって、三角合併は守っても仕方がないところを頑張るということになりかねないわけですから、理屈が合っていないのではないかという気がします。
 別に外資に特定するわけではなく、日本で、ニッポン放送の件では時価総額の大きな会社が敵対的買収にかけていると、かなり問題になりましたが、別に内資、外資で区別はないのですが、M&Aがこれから盛んになっていく過程で、あのような敵対的買収は増えてきます。だからこそ、企業買収防衛策が商法あるいは改正後の会社法でできますということを私どもは法務省と一緒にガイドラインをつくって、その普及に努めていますから、そのように対応されるのが本筋ではないかと思います。


主管は法務省であるとはいえ、経産省が経済界との折衝を任されていることからすると、法務省を含む政府の現段階の見解としては、
・そもそも、三角合併を含む合併等対価柔軟化について、経済界の要請を受けて施行を会社法のほかの規定よりも1年遅らせた。
・施行を遅らせたのは、日本企業が敵対的買収防衛策を導入する時間を与えるためであった。
・また、三角合併はあくまで「友好的な買収」に用いられるものであり、敵対的買収の増加の懸念を理由にこれをやりにくくするというのは筋が通らない。
として、外国会社の株式を対価とする三角合併については、通常の合併と同様、特別決議によるべきものと考えられているようです。

しかし、経済界は特殊決議によるべしという趣旨をかなり強く主張しているようであり、参院選を来年に控えた自民党がどう動くかによってまだまだわからないのではないかと思います。
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三角合併とは

前回出てきた三角合併とはどのようなものかといいますと、野村證券の「証券用語解説集」では次のように解説されています。


三角合併とは、会社を合併する際、消滅会社の株主に対して、存続会社の株式ではなく親会社の株式を交付して行う合併のこと。平成17年に成立した新会社法では、消滅会社の株式の対価について、存続会社の株式ではなく、現金その他の財産(例えば親会社株式。外国会社の株式ということもありうる)を用いてもよいことが明確化された。

日本においては、現金や外国会社の株式のみを対価とした合併が可能かどうか疑問とされ、国境を越えたM&Aの障害として指摘されることもあったが、新会社法により、外国会社による日本の会社の子会社化が加速する、という予測もおこなわれている。

なお、新会社法は平成18年5月1日に施行されたが、対価の柔軟化に関する部分については、その1年後の施行となった。これは、対価の柔軟化により、企業価値を損なうような敵対的買収がおこなわれやすくなるとの懸念に配慮し、それぞれの会社が敵対的買収に対する防衛策を講じる機会を確保するためである。


野村證券のサイトhttp://www.nomura.co.jp/terms/japan/sa/sankakugappei.htmlでは、上記の解説のほかにも図入りでわかりやすく説明されているので、ぜひ参照してみてください。

この三角合併では、合併するのは子会社と対象会社ですので、(子会社に親会社株式を付与する段階で必要になる場合を除けば、)親会社においては株主総会の決議や事前開示手続等を要しないことになります。
しかし、対象会社を親会社の完全子会社にし、対象会社の株主に親会社株式を渡すというのは、親会社と対象会社との間で株式交換を行うのと実質的に同じことといえるでしょう。株式交換を行うのであれば、(簡易株式交換や略式株式交換の要件を満たす場合を除けば、)親会社において株主総会の特別決議が必要となります。
この点はかなり不均衡だと思いますが、特に問題にならないのでしょうか。
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三角合併で買収目指す企業 国内上場義務化?

三角合併で買収目指す企業 国内上場義務化を : 金融ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20061020mh07.htm


日本経団連は19日、外国企業が来年5月に解禁される「三角合併」を利用して国内の上場企業を買収する場合は、国内の証券取引所への上場を義務付けるよう政府・与党に要望する方針を明らかにした。


実務界として要望しているとのことであるが、これは立法としては無理でしょう。
証券取引所は民間の自主規制機関であり、上場を認めるか認めないかは証券取引所が定める上場審査基準に従って証券取引所が決めることです。法律で「上場しなければならない」と定めたとしても、証券取引所にその会社の上場を認めることを義務付けするというのはまずありえない話だと思います。
有価証券報告書の提出を義務付ける等、開示を強化することで投資家(株主)保護を図るというのが妥当な線ではないでしょうか。

このほか、決議要件も厳格化するように求めているようで、これは三角合併の前段階でどれだけ買い集めておく必要があるか、という問題に関わってきます。
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2007年版 携帯用六法について

仕事場や家で法令の規定を調べるとき、法令データ提供システムhttp://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgiを使う人が多いと思います。私もそうです。データであるがためにコピー&ペーストもできるので、仕事をPCでする前提では使い勝手も(紙の六法と比べて)こちらが上です。

しかし、モバイルでネットを使う環境がないので、やはり携帯用六法を買う必要がまだあります。
今年は、あまり比較検討せずに、「去年と同じ」という理由で「デイリー六法」にしました。ところが、今日たまたま会議室で使っていて、「有限責任組合契約に関する法律(LLP法)」が収録されていないことに気づき、びっくりしました。
昨年(2006年度版)には確かに入っていたのに・・・

職場の自分の席に戻って確認したら、やはり2006年度版にはありました。2007年度版で削除されています。どうやら、会社法施行規則や会社計算規則を収録した一方で、LLP法は削られてしまったようです。
携帯用六法の性質上、取捨選択は避けられないとはいえ、LLP法が削除されたのは残念です。今後、LLPの設立例がどんどん増えて、実務的な重要性が増してくれば、また収録されることもあるかもしれません。(LLPが増えれば、LLPが絡む紛争も増え、学問的な重要性も高まるかもしれませんね。)

ほかの携帯用六法ではLLP法は収録されているのかと「ポケット六法」をWebで調べてみたら、2007年度版にも、2006年度版にも(つまり制定された直後からすでに)収録されてなかったみたいです。

<参考>
デイリー六法(三省堂)
・詳細
http://www.sanseido.co.jp/publ/roppou/roppou_dic/daily_roku2007.html
・収録法令
http://www.sanseido.co.jp/publ/roppou/roppou_dic/daily_roku2007_hanre_syurokui.html

ポケット六法(有斐閣)
・詳細
http://www.yuhikaku.co.jp/bookhtml/comesoon/00001.html
・収録法令
http://www.yuhikaku.co.jp/roppo/hourei02.html

コンパクト六法(岩波書店)
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/08/0/0831070.html
・収録法令については情報がない。

「特例有限会社」が存在する限り(会社法の整備法では期限はありません)使う可能性が常にある「有限会社法」は、デイリー六法では2006年度版では別冊付録になっており、2007年度版では収録されていませんので、2006年度版の別冊は手元に置いておくほうがよさそうです。(法令データ提供システムでも有限会社法は引けなくなってますし。)
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