山本藤光の「人間力」養成講座

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の続編です。


町おこし134:留美と肩を並べている

2018-05-23 | 小説「町おこしの賦」
町おこし134:留美と肩を並べている
――『町おこしの賦』第5部:クレオパトラの鼻11
 十月の模擬試験を返却されたとき、恭二は指導教官から北海道薬科大学よりも、北大薬学部を狙うべきだとアドバイスされた。成績は二百五十点を越え、順位も五十位以内になっていた。
 その日の帰り道で、久しぶりに留美の後ろ姿を見つけた。長い髪が気ぜわしげに、左右に揺れていた。足早に追いかけ、留美の肩を叩いた。驚いた顔で振り返った留美は、すぐに笑顔になった。
「あら、お久しぶり」
 二人は、肩を並べて歩いた。今では成績でも、恭二は留美と肩を並べている。

「腹ごしらえしない?」
 恭二は、小さなレストランを指差して誘った。うなずいた留美の背中を押して、二人はレストランに入った。座るなり、留美の質問が飛んできた。
「何点だったの?」
 返却されたテストの結果が、気になるようだった。
「二百六十七点。留美ちゃんは?」
「二百五十四点。負けた」
 ウエイトレスが、注文を取りにきた。恭二はビーフカレー、留美はオムライスを注文した。店内は暖房が強く、汗ばむほどだった。
「北大の薬学部を、狙えっていわれた」
 恭二が告げると、留美の瞳が輝いた。
「すてき。瀬口さんは順調だから、絶対に大丈夫よ」
 注文した料理は、同時に届いた。二人は黙々と、スプーンを口に運んだ。
「それにしても、瀬口さんの集中力はすごいね。試験のたびに、ライバルをごぼう抜きだもの。気分転換は、どうしているの?」
 
恭二は昨日作った、「笑話(しょうわ)の時代」を披露することにした。
「気分転換のために、笑い話を作っている。昨日は、こんなのを作った。タイトルは『彫刻漆器談義』。いいかい、ゆっくりとしゃべるから聞いてみて。

――鎌倉の彫刻漆器のお店でのやりとり。
婦人A「いいわね、この鎌倉彫」
婦人B「私の故郷高岡も、高岡彫が有名よ」
婦人C「私の故郷の土佐彫は、もっと有名だわ」
婦人D「大阪にだって、道頓堀があるわ」

 聞いていた留美は、口のなかのオムライスを吹き出した。
「瀬口さん、ごめん。あんまりばかばかしいんで、粗相(そそう)しちゃった」
「おかしかったかい?」
「久しぶりで笑った。瀬口さんには、そんな才能があったんだ」
 二人はあと三ヶ月の健闘を誓い合い、別れた。恭二はさっき笑った留美の両頬に、えくぼが浮かぶのを発見した。忘れかけていた詩織の影が、心のなかでかすかに動いた。
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