山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

読書感想文を書きたい

2019-01-12 | 妙に知(明日)の日記
読書感想文を書きたい
読書感想文をどう書けばいいのですか。よく受ける質問です。5册以上の本を併読しなさい、と答えます。併読すると、読みかけの本のおさらいをする習慣が身につきます。もちろんポストイットを貼る、メモをとる、のも大切なことです。併読していると、1冊だけを集中的に読むよりも、頭に入りやすいメリットがあります。ぜひ試してみてください。
山本藤光2019.01.12

2019-01-12 | 知育タンスの引き出し

相撲を観ていたら「もう一丁取り直し」と審判長がいいました。普通なら「もう一番」というのだろうな、と思いました。「丁」はサイコロの丁半で知られていますが、偶数を意味します。豆腐を数えるときや、本の裏表1枚も意味します。乱丁などといいますね。
ほかにどんなものに使われるのでしょうか。調べてみました。「天丼一丁」「一丁目」などがありました。「丁」を「てい」と読む場合は。「丁寧」などもあります。そのほかには、「丁稚」(でっち)や「丁髷」(ちょんまげ)など、別の読み方もあります。「丁」は超奥深い漢字なのです。
山本藤光2018.03.25

252:心のハンディキャップ

2019-01-12 | 小説「町おこしの賦」
252:心のハンディキャップ
 金田じいさんと小松ばあさんは、テーブルをはさんでサイコロを転がしている。
「出た。九だよ」
 小松が叫んで、自陣のトランプを裏返す。壁の成績表では、三勝一敗と好調である。隣りのテーブルでは、三好ばあさんが対戦相手のくるのを待っている。三好は三連勝と負け知らずであった。一人のばあさんがやってきた。三好は、声を張り上げて呼んでいる。
「田口さん、勝負、勝負」
 おあしすのシルバーコーナーは、SSTバトル導入で賑やかになった。

おあしす温水プールでは、シルバー向けの水中ウォーキング教室が開かれている。田口さんと呼ばれたばあさんは、そこからの帰りである。
幸史郎町長になってから、町民向けの施策が急増している。心のハンディキャップを払拭しよう。幸史郎は職員に向けて、いつもそう伝えている。心のハンディキャップとは、田舎だから、年寄りだからといった、マイナスの発想のことである。
北村広報課長は、真剣な老人たちのサイコロ裁きを見ながら、町民の心の変化を感じていた。SSTは、ボケ防止の役にも立つかもしれない。北村は、やさしい眼差しで、三好と田口の戦う姿を見ている。

瀬口恭二と詩織は、来月の「知だらけの学習塾」の教材作りをしている。
「人生には三つの山がある。一つ目は学生期、これは勉強と日常の山。二つ目は会社期、これは仕事と日常の山。そして最後は老齢期、これは日常だけの山。これを一枚目のスライドにしよう」
「次は日常の概念だね。日常とは、勉強や仕事以外のすべての時間。通学、通勤時間もここに含まれるのね」
「通勤時間に居眠りをするのと、本を読むのとでは、どちらが知的な行為なのだろう。こう問いかける」
「日常は、自分自身でどうにでもできるわけね。勉強とか仕事とかは、学校や会社に束縛されているので、自由にはならない時間というわけね」

「詩織、おれたちまだ、日常の設計ができていないな。睡眠や食事や入浴以外の時間を、いかに知的なものにするか。これが『人間力マネジメント』だよな」
「恭二、今晩シーフードレストランに、連れてってくれない。彩乃さんから聞いたんだけど、とてもおいしいって」
「おいしいものを選んで食うのは、知的な活動だよな」
 シーフードレストランは、タイの味をそのまま日本で再現している。シェフのタイ人・レイさんは、魚や貝に独特の風味を加えて提供している。温泉客からの評判もよい。
「詩織、今年も暮れから正月の三が日を、タイでのんびり過ごそうか? 新婚旅行を兼ねて」
「すてき、恭二。目標ができたら、お仕事ももっと頑張れる」

093cut:社内ニートがいる

2019-01-12 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
093cut:社内ニートがいる
――15scene:6月のチーム会議
影野小枝 いつもの喫茶店「場」です。今朝も常連幹部が集まっています。
常連E ニートとフリーター、この社会現象は何とかならないものか。
常連B 社会全体で、彼らを甘やかしたツケだ。
漆原 定職につかない。自分自身を磨かない。とんでもない世の中になったものです。
常連D 武家時代には素浪人はいた。我々の時代には大学浪人がいた。そして現代はニート。時代はめぐる。
常連C ニートといえば、うちには社内ニートがいるよ。肩たたきされても、頑固に居座って、何もすることがないので、社内をウロウロしている。
常連D 社内ニートか、何だか身につまされる言葉だな。
常連B 若年性ニート、社内ニート、それなら、定年後のシルバーニートというのもありそうだ。
常連E ところで、ニートの定義はなんだ?
漆原 Not in Employment、Education or Trainingの略語です。職に就いていなくて、企業にも所属せず、就労に向けての活動をしていない若者。ざっとこんな意味です。その数は、80万人ともいわれています。
常連C ニートにも、いくつかの種類がある。引きこもりタイプ、享楽タイプ、落ちこぼれタイプが代表的なものだ。
常連B 落ちこぼれは、一度就労してすぐに辞めた連中のことかい?
常連C 多いらしいぜ。入社してすぐに辞める連中。

097:野中郁次郎先生から学んだこと(その2)

2019-01-12 | 銀塾・知だらけの学習塾
097:野中郁次郎先生から学んだこと(その2)

SSTプロジェクト導入以前にも、日本ロシュでは同行専任部隊プロジェクトを実施していました。ところがこれは、まったく成果をあげないままに頓挫しています。

失敗の原因は明らかでした。メンバーの推薦を支店長に任せたために、優秀な人を送りこんでもらえなかったのです。したがってSSTの人選は、SST事務局が強引に実施しました。

選ばれたメンバーは2年間も、単身赴任者のような生活を余儀なくされるわけですから、まず家庭に育児や介護などの不安がある人は除外しました。つぎに独特の営業力で売り上げの高い人も除外しました。同行指導を受けるMRが、マネできないからです。そして「人間力」の高い人を優先しました。

SSTがスタートする以前に、2か月間本社で合宿させました。話法を磨き、同行の心得を指導し、文章の書き方まで鍛えました。メンバーは夜遅くまで、自発的に勉強を継続しました。2年間のSSTプロジェクトも壮烈ですが、2カ月の事前合宿も常識的には考えられないことだと思います。

スタートを大切にする以前に、そのための準備をおこたらないこと。そのためには膨大な時間が必要です。

日本ロシュという会社は、中外製薬との合併で消えてしまいました。しかしSSTメンバーは、毎年1回、それが先週だったのですが、リーダーだった故中島則雄の墓参をかねて集まっています。

メンバーの1人が、私にこういいました。
――SSTに生命を吹きこんでくれたのは、野中郁次郎先生だった。

SST以前に、日本ロシュは大失敗をしたと書きました。新たなプロジェクトを立ち上げるとき、社長の繁田寛昭は野中郁次郎先生に相談しています。2人は米国バークレイ大学院の先輩後輩だったのです。(明日につづく)

むしずがはしる

2019-01-12 | 知育タンスの引き出し
むしずがはしる
むしずがはしる。読むことはできても、書けない漢字が「むしず」かもしれません。「虫唾」と書きますが、漢字検索すると「虫酸」も出てきます。私はずっと「虫唾」と書くとばかり思っていました。『朝日新聞の漢字用語辞典』で調べてみました。「虫酸」が正解で、「虫唾」は当て字でした。虫酸の語源もついでに調べてみました。

――「虫唾」は「虫酸」とも書き、胃がむかむかしたときに逆流する酸性の胃液、転じて、「虫唾が走る」でむかむかしてふかいである意になった。(日本語語源辞典)
山本藤光2019.01.12

ジョージ・エリオット『ミドルマーチ1』出た

2019-01-12 | のほほんのほんの本
ジョージ・エリオット『ミドルマーチ1』出た
※ジョージ・エリオット『ミドルマーチ1』 (光文社古典新訳文庫、廣野由美子 訳)が出ました。著者(彼女)については、『サイラス・マーナー』(岩波文庫)を紹介しています。しかし私は『ミドルマーチ』の方を、もっと高く評価しています。
本書は講談社文芸文庫(全4巻、工藤好美・淀川郁子・訳)になっています。古書価格はべらぼうに高く、入手しにくいので紹介を控えていました。新訳版が全巻そろったら、読んで必ず紹介させていただきます。
山本藤光2019.01.11
※昨朝アマゾンへ注文した本は。昨晩届きました。帯には「ジョージ・エリオット生誕200年」「偉大なるイギリス小説100・第1位」とあります。全四巻の刊行予定で、第二巻は今年の秋とあります。全巻完結までは、相当の時間がかかりそうです。熟読させてもらえるので、ありがたい話なのですが。
山本藤光2019.01.12

ジョン・ディクスン・カー『三つの棺』(ハヤカワ文庫、加賀山卓朗訳)

2019-01-12 | 書評「カ行」の海外著者
ジョン・ディクスン・カー『三つの棺』(ハヤカワ文庫、加賀山卓朗訳)

オールタイム不可能犯罪ミステリ・ランキング第1位! ロンドンの町に静かに雪が降り積もる夜、グリモー教授のもとを、コートと帽子で身を包み、仮面をつけた長身の謎の男が訪れる。やがて二人が入った書斎から、銃声が響く。居合わせたフェル博士たちがドアを破ると、絨毯の上には胸を撃たれて瀕死の教授が倒れていた!  しかも密室状態の部屋から謎の男の姿は完全に消え失せていたのだ!  名高い〈密室講義〉を含み、数ある密室ミステリの中でも最高峰と評される不朽の名作が最新訳で登場!(アマゾン内容紹介)

◎密室ミステリーの最高峰

ジョン・ディクスン・カーを読まずしてミステリーを語るな。というわけでカーの代表作であり、密室ミステリーの最高峰といわれる『三つの棺』(ハヤカワ文庫、加賀山卓朗訳)を紹介させていただきます。
私の手元に文藝春秋編『東西ミステリーベスト100』(文春文庫)があります。それも1985年版と2013年版の2冊です。これを見比べると、評価の推移がわかります。『三つの棺』は26位だったのに、2013年版では16位に急上昇しています。これは近年、古典的ミステリーが見直されていることの証になります。

ジョン・ディクスン・カーは1906年にアメリカで生まれ、1977年に没しています。したがって死後40年になるのですが、その人気は衰えていません。『三つの棺』は「サンデー・タイムズ・ベスト100」に取り上げられています。私はそれを、丸谷才一監修『探偵たちよスパイたちよ』(文春文庫)で読んでいます。なぜ『三つの棺』を選んだのかについて、次のような説明がなされています。

――ここに描かれている怖しい雰囲気には常軌を逸するほどの迫力があること、謎ときそのものがカーのいつもの手腕さえ超える力量で構成されていること、そして密室トリックのさまざまなパターンについての「講義」が含まれていることである(同書P232、中野香織訳)

本書のなかでは、長々と「密室講義」(第一七章)がなされています。フェル博士という探偵役が講義をする形になっています。この章だけを抜粋して、さまざまな作家の密室談義に用いられているほどです。

『三つの棺』には、たくさんの伏線があります。しかし私はひとつも、謎解きの役には立てられませんでした。本書には巧みな、想像を超える仕掛けがあります。カーの作品には、賛否両論があります。私からすれば、謎解きは破綻のないものです。しかしあまりにもトリッキーな展開に、着いてこられない読者がいるためだといわれています。
 
カー作品は本書から入り、自分と波長があったら他に手を伸ばす方がいいかもしれません。「密室の総帥」と呼ばれるカーは、多くのミステリ作家に影響を与えています。それを探るのも、カー作品を読む魅力となります。

◎2つの不可能殺人事件

グリモー教授は仲間と、吸血鬼の話をしながら酒場で飲んでいます。そこに一人の男が割り込んできて、「三つの棺」という言葉を投げかけます。そしてグリモー教授に「近いうちに自分か弟が訪問することになる。弟はあなたの命をほしがっている」と続けます。男はグリモー教授にだけ顔を見せ、「奇術師・ピエール・フレイ」と書かれた名刺を渡します。

『三つの棺』はこの場面から、幕が上がります。グリモー教授は動揺し身を守るために、なぜか大きな絵を買い求めます。その絵には荒涼とした風景のなかに、三つの墓が描かれていました。

これらのいきさつを耳にしたフェル博士は、心配になってグリモー邸を訪れます。しかしグリモーの部屋から銃声が響き、そこには瀕死の状態でグリモー教授が転がっています。犯人は見あたりません。雪の降っていた夜ですが、どこにも人の足跡は見つかりません。グリモーが撃たれた部屋にあった絵は、荒々しく切り裂かれていました。病院に搬送されたグリモー教授は死に、こうして密室殺人事件が勃発します。グリモー教授がいまわの際に残した言葉を、著者はこう書いています。

――彼はたんに「煙突」と「花火」についてうわ言を言うばかりで、あとは何もしゃべりませんでした。(本文P313)

 前記のように、このような仕掛けがちりばめられています。しかし翻訳された単語は原語とはちがうので、深読みしても意味はないと思います。

 後段では、もう一つの不可能殺人事件が起きます。グリモー教授殺害の首謀者と目されていた、奇術師・ピエール・フレイが通りで殺害されます。目撃者が三人いますが、誰一人犯人を見ていません。また雪道には、フレイの足跡しかありません。しかも落ちていた拳銃は、グリモー殺害に使われたものだったのです。グリモー教授を殺害したのは誰なのか。フレイを殺害したのは誰なのか。フェル博士の怒濤の推理が始まります。

本書のストーリーは、あまり追わないことにします。なぜなら不可能な二つの殺害事件が、微妙に絡め合っている細部を説明したくないからです。多くの読者は結末部分の種明かしで、驚愕することでしょう。

『三つの棺』については、多くの作家が書評を書いています。それらを承知のうえで、キーティングは次のようにまとめています。

――ミステリ名作一〇〇選に、〈密室・不可能犯罪〉として知られる特別コーナーから作品を選ばなければ、完全なものとはいえないだろう。ほとんどあらゆる解説者によって、その分野における最高傑作と認められている作品がある。ジョン・ディクスン・カーの手になる『三つの棺』がそれだ。(キーティング『海外ミステリ名作100選』早川書房)

密室殺人の総帥・カーのひねくりまくった『三つの棺』は、考えつつじっくりと読み進めてください。どこかの時点で二つの不可能殺人事件を結びつけたなら、あなたは名人級の読者といえましょう。
山本藤光2019.01.12