山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

知だらけ055:名文を書き写す

2018-08-04 | 新・知だらけの学習塾
知だらけ055:名文を書き写す
――第4講義:書く
文章を上達する近道は、名文を書き写すことです。小説の場合、特に作家が魂を込めるのは書き出しの文章です。書き出しで有名な作品をいくつか拾ってみます。

――国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。(川端康成『雪国』新潮文庫、冒頭より)

――木曽路はすべて山の中である。あるところは岨(そば)づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。(島崎藤村『夜明け前』新潮文庫、冒頭より)

――祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。おごれる人も久しからず、只春の夜の夢のごとし。たけき者もついには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。(『平家物語』角川ソフィア文庫、冒頭より)

冒頭の文章を書き写す。この習慣が身につけば、たちまち文章力は上達します。朝日新聞朝刊コラム「天声人語」の書き写しも有効です。専用の書き写しノートもあります。朝日新聞の販売所で扱っています。

ネット検索をすると、「名文!胸震える文学作品書き出し50選」などにもめぐり合います。これらの文章の書き写しも、立派な訓練になります。

質を測る080:人生の設計

2018-08-04 | 営業の「質を測るものさし」あります
質を測る080:人生の設計
――第7章:知を磨く
50歳を目の前にした日、若いころ尊敬していた上司に偶然に会いました。仕事バリバリの典型の人で、同行もよくしてもらいました。いつも剛速球で勝負をするため、いくつもの得意先からは「もう連れてくるな」といわれたほどです。定年になったのは知っていましたが、別のところで精力的に仕事をしているとばかり思っていました。声をかけられたとき、一瞬だれかがわかりませんでした。張りつめていた面影が消え失せていたのです。
「何もやることがなくて、毎日ぶらぶらしている。ヒマで死にそうだよ」
 吐き捨てるように語ったその人には、もはや昔の輝きはありませんでした。遠ざかる丸まった背中を見送りながら、「ああなってはいけない」と自分自身にいい聞かせました。思わず天を仰いだとき、ナナカマドの赤い実が鮮やかに目に映りました。

 それから、あわてて人生設計をはじめました。定年後に、楽しんでできるなにか。少しでもだれかの役にたつなにか。仕事バリバリ家でゴロゴロの典型だった私には、危機感がありました。好きな読書で社会貢献をする。真っ先に浮かんできたのは、身近な世界でした。私の読書は自己完結型で、読んだ、感動した、書棚にポンでディ・エンドでした。書評を発信することにしました。感動を、共感を第三者に伝えたい。そう決意すると、書棚から蔵書を引っ張り出し、ジャンル別のランキング表の作成を開始したのです。当時札幌支店長でしたので、仕事は多忙をきわめていました。うず高く積んだ本の山を見ながら、何度もため息をつきました。書評を書くような時間はありません。

 そんなときに偶然に読んだのが、花村太郎『知的トレーニングの技術』(JICC出版局)でした。ハンマーで頭を叩かれ、目玉が飛び出して、目のウロコがどさどさと落下しました。遅くはないと思いました。「知への渇望がぼくらのなかに眠っていて、それが疑問や不安から痛みのかたちであらわれているのだとぼくは思う。(中略)世界と時代と自分の人生にたいして、より自覚的により賢くかかわりたい」との惹句(じゃっく)に思わず落涙してしまいました。そして花村太郎の著作を繰り返し読みながら、定年までの青写真を描いている自分がいました。棟方志功ではありませんが、「我はゴッホになる!」の境地で、「我は花村太郎になる!」と雄叫(おたけ)びをあげている自分がいたのです。
 ちなみに花村太郎『知的トレーニングの技術』は絶版(注:最近ちくま学芸文庫になっています)で、入手できません。私が買いあさって、配り過ぎたのでしょうか。花村太郎氏は現在、長沼行太郎の本名で活躍中です。考え抜いたすえに、私は書斎の机の前に1枚の紙片を張りました。41歳の誕生日の日でした。

55歳:書評発信を軌道に乗せる
60歳:我は花村太郎になる!を実現
65歳:本を出版する
70歳:古本屋を経営する

同行時のツール(2):めんどうかい132

2018-08-04 | 営業リーダーのための「めんどうかい」
同行時のツール(2):めんどうかい132

「○×メモ」

 顔つなぎの訪問には、「うまく行った」「失敗だった」という結果がありません。つまり○と×がなく、△の訪問なのです。こうした営業担当者には、「○×メモ」を使っていただきたいと思います。
 
 営業リーダーは同行時に、面談目的を必ず確認します。定期訪問とか顔つなぎを、許してはなりません。面談を終えます。営業リーダーは、○か×で成果を記入します。1日の育成同行を終えて、1勝でもしていれば成果ありです。
 
 この習慣は、他のメンバーにも実行させたいものです。訪問目的が希薄な営業担当者は、意外に多いものでぜひ活用してください。
 
「今日は何勝何敗だった」が、定着したチームがあります。訪問目的が明確になり、成果が上がってきたとの報告もありました。

「片想いスケール」

 どうしても攻略しなければならない、顧客がいたとしましょう。営業担当者には、次のように問いかけてもらいたいと思います。それが「片想いスケール」です。特に製薬会社のMRは、同じ医局のなかで競合会社としのぎを削ります。
 
 私たちは「初恋の教室」と称して、「片想いスケール」を次のように説明しています。
上司「教室のなかに、好きな異性がいたとしよう。きみなら、どうする?」
部下「相手のすべてを知りたくなります」
上司「そうだよね。そのあとはどうする?」
部下「ライバルとの差別化のために、自分を売り込みます」
上司「そうだよね。それから?」
部下「デートに誘います」

 あなたの部下は、どのステップにいるのでしょうか。同行時に「片想いスケール」を使って、顧客攻略状況を確認したいものです。
 
◎考えてみましょう

・「PPF話法」は、営業担当者を気持ちよくさせます。その理由を考えてみましょう。

・「身の丈コンピタンシー」は、営業担当者に考えさせ、ワンランク上の活動を可視化させます。通常のコンピタンシーモデルとの違いを、考えてみましょう。

町おこし196:その二

2018-08-04 | 小説「町おこしの賦」
町おこし196:その二
――『町おこしの賦』第6部:雪が31 
 翌日、恭二は約束の時間に、藤野温泉ホテルを訪ねた。詩織が迎えてくれた。レストランに案内された。
「ちょっと待っててね。さっきまで、必死で料理していたんだ。私の作ったその二を運んでくるから。その前にビールだね」
 ジョッキのビールが、テーブルに置かれた。二人は乾杯した。
「じゃあ、運んでくるね」
 ほどなく詩織は、大皿に盛りつけられたキンキを運んできた。みごとな色つやで、甘い香りが鼻孔に広がった。
「詩織、見た目は最高だよ」
 恭二の向かいに座り、詩織は目を輝かせている。箸をつける。口に運ぶ。咀嚼(そしゃく)する。完璧な味だった。

「詩織、おいしい。これまで食べたなかで、一番おいしいよ」
 詩織の大きな瞳から、涙がこぼれた。恭二は詩織の隣りの席に移動して、揺れる肩を抱いた。そしていった。
「詩織、合格だよ。最高の味だ」
 詩織の肩に回した手に、力を入れる。その肩は、激しく揺れていた。恭二は元の席に戻る。そしていった。
「詩織、一緒に食べよう」
恭二は自分の箸を、詩織に渡した。前髪をかき上げながら、詩織は箸を動かす。口に運んだ。
「恭二のキンキ、とてもおいしい」
 涙顔はしっかりと、恭二をとらえた。また新しい涙が浮き出てきていた。恭二は、詩織を愛おしく思った。詩織がキンキを乗せた箸を、恭二に差し出している。恭二は口に入れた。涙腺が緩んだ。恭二は手のひらで、目頭を拭う。そして、告げた。
「明日、九時の電車で釧路へ行こう。その三の日がきたんだよ、詩織」

妙に知180804:ハードカバーの文庫

2018-08-04 | 妙に知(明日)の日記
妙に知180804:ハードカバーの文庫
▼読書中に「飯事」という単語に出逢いました。文脈から「ままごと」と判断できました。「ままごと」は英語の「MAMA」が由来だと思っていましたので、この漢字は意外でした。ぽつんとこの漢字だけが出てきたら、あなたは読めましたか?▼古書店で文庫なのにハードカバーの本を見つけました。谷川俊太郎『はるかな国からやってきた』(童話屋)です。こんな装丁の本は見たことがありません。
山本藤光2018.08.04