戦後70年をファシスト日本に勝利した戦勝記念として大々的にアピールする中国の存在がそれである。事実、中国は国連の場で尖閣諸島を巡る問題に関して「第二次大戦の敗戦国が戦勝国中国の領土を占領するなどもってのほかだ」(2012年9月27日)と日本を名指しで非難しているのだ。
つまり中国は、国連の場で暗に敵国条項を意識した発言を行ったわけである。スプラトリー諸島の埋め立ての例を挙げるまでもなく、東シナ海での尖閣に対する領海侵犯、さらには勝手に防空識別圏を設定するなど、国際海洋法などの国際法をことごとく無視してきた中国が、70年前の条文を案に持ち出してきた
1945年の終戦当時、成立もしていなかった中華人民共和国が国連敵国条項を持ち出して、自らを戦勝国と位置付けるカードとして使っているわけだ。事実上は死文化していると言われていても、敵国条項は未だに削除されていない。
日本は敵国であるがゆえに、戦争はもとより国際紛争を解決する手段としての武力行使は認められていない。日本国憲法でもそのための明文規定である第9条が存在している。日本が敵国であるままで、集団的自衛権行使容認の解釈変更を閣議決定して、平和維持活動(PKO)の枠を超えて多国籍軍に参加したり、あるいは国連平和維持軍(PKF)に参加したりすることは、論理上は真っ向から敵国条項に衝突することになる。
このような論理を持ち出してくる中国は、国連の場において戦勝国の資格のない自己矛盾もお構いなく、日本国家の選択肢を狭めようとするばかりでなく、国連安保理の常任理事国である限り、いつでも敵国条項を持ち出して、日本の安保理常任理事国就任の道を閉ざす口実になるのである