本朝徒然噺

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新橋演舞場「花形歌舞伎」(夜の部)へ

2006年11月25日 | キモノでお出かけ
<お出かけ先>新橋演舞場(「花形歌舞伎」夜の部)
<着物>濃紺の鮫小紋
<帯>クリーム地「丸に四季の花」の柄の織り名古屋帯
<羽織>淡い藤色地「楓と菊」の柄の長羽織
<帯揚げ>水色地に白の水玉絞り
<帯締め>ピンクと水色の丸組

長唄のお稽古が終わってから、一目散に新橋演舞場へ。
開演10分前くらいに無事到着しました。

場内が暑くて羽織を脱いだ時にもきちんとした感じに見えるほうがいいかなあ……と思ったので、上記のようなコーディネートにしましたが、羽織は一度も脱ぎませんでした(笑)。あ、お稽古の時には脱ぎましたが……。

今回も演目に因む手持ちがなかったので(勧進帳の帯だと「船弁慶」にはちょっと合わないし……)、季節の柄にしました。
いちおう、帯の前柄とお太鼓柄に牡丹と菊があるので、何となーく役者さんに因んでいます(笑)。
場内では、鼓の柄の帯を締めた女性を何人か見かけました。「義経千本桜」が出るからですね。演目や役者さんに因んだお召し物を見ると、うれしくなります。

お芝居に話を移して……。
夜の部の一幕目は、「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)」。
織田信長に対する明智光秀の謀反を題材に、史実を脚色して作られたお芝居です(登場人物の名前も史実とは微妙に異なっています)。
主君・小田春永(市川海老蔵)に満座の中で恥をかかされ、謀反を決意する武智光秀を、尾上松緑さんが演じました。
毎度毎度言うようですが、松緑さん、ほんとに口跡がよくなったなあ……と思います。
4代目松緑を襲名したばかりのころは、台詞が鼻から抜けていて、とてもじゃないけど聴いてられなかったんですから……(ゴメンナサイ!)。
それが今では、まさに「段違い」! きっと、人知れず努力をされたんだろうなあ……と思います。
名人とうたわれたお祖父さまの2代目松緑さんの舞台は、テレビでしか観たことがないのですが、今日の松緑さんの光秀を観ていて「台詞まわしがなんとなくお祖父さんに似てるなあ……」と思いました。抑揚があって、かつ繊細な台詞まわしによって、人物の心情が丁寧に表現されていたと思います。
もちろん、お祖父さまの域に到達するまでには長い年月がかかると思いますが、一歩一歩着実に前進していることは確かだと思います。これからがますます楽しみです。


二幕目は「船弁慶」。
能の「船弁慶」に題材をとった、いわゆる「松羽目物」です。
その昔、能をかじっていた私は、「松羽目物」を観た時の感想は大きく二つにわかれます。
一つは「能とは違うことがたくさんあるけれど、違和感なく、気持ち良く観ていられた」という場合。もう一つは反対に、「能と違ってて気持ち悪い」と感じる場合。
松羽目物は台詞や演出が大きく変わることはありませんから、どちらの感想をおぼえるかは、演じる役者さん次第。「松羽目物」の品位が保たれていれば、違和感なく観ていられるのです。

そういった私なりの判断基準で見て、今回の「船弁慶」は……観ていてまったく違和感をおぼえることなく、気持ち悪さどころか心地よささえ感じました。「合格!」です(笑)。
シテの菊之助さんはもちろんですが、周りを固める役者さんたちもみなさんそれぞれに品格があって、美しい舞台だったと思います。
特筆すべきは、市川團蔵丈の弁慶! 重厚ですが決してシテの妨げにならず、役の品位を保っていて……ほんとにカッコよかったです。
ここだけの話、昼の部の「勧進帳」の弁慶より、「船弁慶」の弁慶のほうが頼りになりそうでした(笑)。

余談ですが……、「船弁慶」の途中でハプニング発生。
後シテ・平知盛の霊が持っているなぎなたの刃が、抜け落ちてしまったのです。
すぐさま後見が替えのなぎなたを知盛(菊之助さん)に渡して事なきを得ましたが、一瞬びっくりしました。
お能の場合もそうですが、アクシデントが起こったときはとにかく後見が何とかしてくれるので(それほど後見の役割は重要なのです)、シテはその間、何事もなかったかのように所作を続けていればよいのです。
小道具さんは、万一のときのために必ず同じ道具を二つ作っておくと聞きました。本当にそうなんだなあ……と、裏方さんの努力にあらためて感じ入りました。

あ、でも!
三河屋さん(市川團蔵丈)扮する弁慶の法力によって、なぎなたの刃が抜けたのかもしれない!
そうよ、きっとそうだわ!(笑)


おしまいは「義経千本桜」より「川連法眼館」の場。通称「四の切」と呼ばれる場面です。
市川海老蔵さんが、狐忠信に初役で挑みました。
うーーーーむ…………。
一言で感想を述べるとするならば、「狐じゃなくて猫みたいな忠信」といった感じでした……。鼓の代わりに三味線置いておきたくなっちゃいました……。
台詞が鼻から抜けまくっていて、「ニャーオ」みたいな雰囲気が…… 
笑うところでも何でもないのに客席から笑いが起きてしまっても、お客さんを責められないかも……。
いったいどうしちゃったんでしょう……。千秋楽までにのどを使い果たしてしまって声が裏返っちゃったんでしょうか、それとも……。うーーーむ……。

所作も大切ですが、芝居は台詞が命だと思います。もうちょっとがんばってほしいなあ……。
若いうちは、変に「抑えよう」などと色気を出さないほうがいいと思います。
自分に10の力があると思うなら、10すべて出し切るつもりでやってちょうどいいのだと思います。なぜなら、若いうちは10の力なんてあり得ないから。
10のうち8の力で抑えようなんて考えると、観客から見たら6くらいにしか見えなくなってしまうんじゃないかなあ……。
「いかに演じるか」ではなく、「いかにその役の人物になりきるか」を考えるほうが先じゃないかなあ……と、思いました。


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6 コメント

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ふむふむ・・・ (sachiko)
2006-11-27 00:32:29
藤娘さま こんばんは~♪

歌舞伎・・・ 難しそうとなんとなく敷居が高く
歌舞伎座の前を通っても 中には大昔一度入ったきりでした。

ところが拝読させていただき ストーリー以外に
役者さんのことをいろいろお話聞かせていただくと
舞台の裏側までも分かり 見ているだけとは
大違いだということに気が付きました。
それぞれの努力の跡が垣間見ることが出来たりと
いろいろ お勉強させていただきました。

また お教えくださいませ~
少しでも理解することが出来れば 日本の伝統文化を
知る機会を嬉しく思いますので・・・

ありがとうございました♪
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ありがとうございます! (藤娘)
2006-11-28 00:41:00
sachikoさま、コメントありがとうございます!
このブログをご覧になって歌舞伎や古典芸能にご興味をお持ちいただければ、これ以上の喜びはありません
sachikoさまにとても嬉しいお言葉をいただけて、本当に励みになります

私も初めて歌舞伎を観た時は、何が何だかわからないままに終わったという感じでした(笑)。
でも、いろいろ観ているうちに、気が付いたら内容も台詞も自然と理解できるようになっていたのです。
きっと、言葉は違っても、現代の人々に通じるものが描かれているからなんでしょうね

「古典芸能」というとついつい構えてしまうかもしれませんが、「お芝居」として楽な気持ちでごらんいただくのが何よりですので、ぜひお気軽にお出ましください♪
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お着物姿が・・ (hanahana)
2006-11-28 10:58:05
お写真拝見できなくて残念。

長唄のお稽古に歌舞伎三昧・・うらやましい限りでございます。私も長唄のお稽古始めたいのですが、残念ながら近くに先生が見つからなくて。大学時代の三味線が眠ったままですの。

松録さんがんばっていらっしゃるんですね。本当に襲名の時は「えっえ~親の七光り甚だしい」って思っていましたが、よく考えれば彼には後ろ楯になってくれるお父様はいらっしゃらないんですものね。きっと努力をされたのだと思います。
海老蔵はダメな時は徹底的にだめですよね。私も団十郎とのお祭であまりにも下手な芝居に席を立ちたくなった事があります。緊張感が持続しないのかなぁ~。彼にはもっと努力してもらいたいものでございます。

いよいよ京都顔見世が始まります。藤十朗さんと勘三郎さんの揃い組見て参りますよ。一月には大阪にいらっしゃるのですよね。お目にかかれたらうれしいな。
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失礼いたしました……(汗) (藤娘)
2006-11-28 22:21:33
hanahanaさま、コメントありがとうございます!

着物写真を記事に添付し忘れておりました
hanahanaさんが教えてくださるまで全然気付きませんでした……(汗汗)ありがとうございますーー!
さっそく添付いたしましたので、ご笑覧いただければ幸いです

hanahanaさんも、お三味線をなさってたのですねー!
よいお師匠さんに巡りあえるとよいですね

海老蔵さんは、新之助さん時代のほうがよかった感じですよね……
海老蔵を襲名して、お父様を意識し過ぎてしまうんでしょうかねえ……
まあ、藤十郎さんも、若かりしころには「扇雀(当時)に台詞を言わすな」と言われていたくらい下手っぴだったらしいので(笑)、海老蔵さんもまだまだこれからなのかなあ……。

いよいよ南座顔見世の初日が近付いてきましたね!
ぜひ楽しんでらしてください
1月の松竹座には、ぜひ行くつもりです
hanahanaさまにお目にかかれるといいなあ……
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うっとり~ (hanahana)
2006-11-29 11:43:00
お写真拝見できてご機嫌!長羽織がおしゃれですね。
わざわざ私のために・・ありがとうございました。

籐十朗さんにそんな時代があったとは・・扇雀時代はそれはそれは美しくて人気の的だったと聞いたのですが・・。海老蔵は下手と言うより、手抜きのような気がします。一月の松竹座が楽しみですね。どんな芝居をしてくれることやら・・。

私は金曜日に行く予定です。お目にかかれたら嬉しいな
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ありがとうございます! (藤娘)
2006-11-29 23:07:22
hanahanaさま、着物の写真をさっそくご覧くださって、ありがとうございます
終演後に、人通りが激しくなる前に演舞場の前であわてて撮ったので、なんだかお見苦しい写真になってしまっており、お恥ずかしい限りです……

藤十郎さんは、下手っぴだった(笑)時代に、幸いにして武智鉄二さんの主宰する「武智歌舞伎」に入られて、武智鉄二さんの口ききで義太夫や能や京舞など、当時一流の師匠についてみっちり芸を仕込まれたそうなんです。その甲斐あって、見違えるようになって、「曾根崎心中」で大ブレークしたそうです
海老蔵さんも、「基本」を大事にしてお稽古してくれるといいですよね……

私は、チケットがとれれば(今、先行抽選の結果待ちなのですが)1月6日の土曜に行く予定なのですー(でも、後半にもう一度日帰りで行こうかという無謀なことも企て中でございます……笑)
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