北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「無罪請負人~刑事弁護とは何か(弘中惇一郎著・角川新書2014刊)」を読んだ。弘中惇一郎(ひろなかじゅんいちろう1945生れ)氏は、広島修道高校、東大(法学部)卒で、1970年に弁護士登録し、以来45年間に亘り弁護士として活動してきた。2019年にはカルロスゴーン氏の弁護人となり話題を呼んだ。-----
「無罪請負人」の章立ては次のとおりである。“刑事弁護という仕事”、“郵便不正事件/無罪判決まで”、“小沢一郎と鈴木宗男/国策捜査の罠”、“薬害エイズとロス疑惑事件/メディアとの攻防”、“弁護士が権力と手を結ぶとき”、“刑事司法の現実”-----
日本の司法がどれほど世界に後れを取っているかに付いて、弘中惇一郎氏は、担当された事件を具体的に事例として挙げて事細かに解説してくれている本である。人は人生を重ねるにつれて幾ら正直な人でも世間に塗(まみ)れていくものだと考えていたが、弘中惇一郎氏のような何時までも正義感を失わず刑事事件の弁護士をなさっているについては本当に感心せざるを得なかった。-----
第2次大戦終了時に連合国はドイツや日本の敗戦処理をスムーズに進めるために、軍人公職追放などは行ったが、結局司法は解体しなかったとのことで、ドイツはそれでもその後自国民が戦前の司法を見直して責任を問うたのだが、日本では全くそのまま戦前の司法が残って仕舞っていて、旧態然とした取り調べが今も続いているのであると、刑事責任を問われて初めて知るのではなくて、政治の仕組みを見直す目を国民も持たなければならないと弘中惇一郎氏はこの本で訴えているのだと思った。