桂の小箱

㈱クラウドゲートが運営するWTRPG、AsuraFantasyOnline、舵天照、ELYSIONについての独り言。

月満ちて

2011-02-22 20:39:59 | AFO



月が、綺麗ね。

呟いた。
聞く人は居ない。
居ない、は少し違うかもしれないけど、まだ「聞く」器官はないと思うから。

あれから、真円の月を、三度見た。
いよいよ、間違い無い。
あまり驚きは無く、寧ろ、やっぱり…と思った。
なぜ、と聞かれれば、直感、である。
あの時、そんな気がした。それだけ。
直感だけは、人並み外れて鋭いのだ。

江戸を発つ前日、ふたつ前の満月の夜。
高い窓からおちる月影が、男の横顔を照らしていた。
寝顔が存外あどけなくて、先刻までの表情との差異が面白かった。
あの夜も、月が綺麗だったのだ。
熱で滲んだような、ぽってりとしたひかりの円。
それを、見上げた時に…時が、満ちてゆくのを感じた。

さて、どうしよう。
江戸から、少し下った街道沿いの宿場町。
秋の夜風が、洗い髪を撫で、ゆるゆると体を冷やす。
…ああ、冷やすの、駄目なんだっけ。
新しい命の準備と、誕生を、何度も見てきた。
旅の一座はまるごと家族。皆で労わり、祈り、祝い、そして育ててきた。
だから、大体の事は解る。
だから、ひとりではどうにもならない事も、知っている。
しかし、父親…に、あたるひとを頼るのは、違う気がした。
あれとは、惚れたはれたの関係ではなし。
そういう人ではないから、そういう関係ではないから、互いの抱えた隙間を埋め合うように、冷えた体に熱を分け合うように、ほんのひと時、寄り添った。
気の良い馴染み、友達であるからこそ、父として頼る…伴侶として、見ることは、互いに出来そうになく、したくもない。

ふたたび、夜空を見上げる。
一年で、最も美しいとされる秋の月。
闇に、ただひとつ開いた出口のようにも、見えた。
ぼんやりと、その光を身に受ける。
ふと、浮かんだ土地があった。
この身は、かの地で生まれた、らしい。
旅に生き、何処までも流れる自分達にとって、故郷はこの空の続くところ、全て…ジ・アースそのもの。特定の場所を定めることは、しないのだけれど。
しかし、偶然その地にあった、という縁に寄り、名は「アニェス」、ノルマンの音。
思い起こせば、かの地で知り合った冒険者は、皆前向きで、どこか楽天的で、気持ちの良い者達だった。
妹のように可愛い、異種族の友人も居る。

行って、みようかな。
確としたあてがある訳では、ないけれど。
ここで、思い出したのも、何かの縁。
時間が経てば、旅もままならなくなるから、今のうちに。

ひらり。
指を揺らすと、月光が手のひらで踊った。
そのまま、腹にそっと添える。

来年は、一緒に見られるかしらね。

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2 コメント

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こちらでは初めまして (帯刀)
2011-02-23 20:52:54
別HNですいません、御凪です。

雰囲気あるイラストだなと思ってたのですが
こんな裏話があったとは!
フヅキさんほど素敵な文章は書けませんが、
自分も絵の設定的な物書こうかななんて思いました。

また素敵な文章楽しみにしてます^^
Unknown (フヅキ)
2011-02-26 08:31:14
わぁ、ようこそいらっしゃいませ~!
まさか、ご覧頂いていたとはっ

えへ。実は、こういう裏話があったんですよ、というお話です。
終わってしまったゲームではあるのですが、だからこそ、遊べる部分もあるのかなぁと、思うのです。

帯刀さんも是非♪
素敵なOMCが多いのですもの。きっと読み応えのある物語が沢山詰まっている筈…楽しみです!
是非見せてくださいね。

こちらの次回更新は未定…ですが、なにか振ってきたら、また^^;

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