個人的な思いですが、これまで現代短歌にはあまり興味がありませんでした。面白くない、と思っていました。ところが、利用者の短歌づくりにかかわるようになって、「そんなにつまらないものではない」「生き生きと輝いているではないか」と思うようになりました。山折哲雄さんの言葉を借りれば、
・そこには凝縮された人生がうたわれている
・切れば血の噴き出るような人生の物語が読む者の側に伝わってくる
・そこに採りあげれている短歌のひとつひとつに、かけがえのない人生の物語を読みこみ、それを数珠玉のようにつないで、もう一つの「現代短歌」の世界という大きな流れをつむぎだそうとしている
ということになるのでしょうか。
当所は、平成元年2月6日に身体障害者を対象として、孤独・生活不安感から解放、「生きがい」を求める場として開所されました。利用者一人一人の力を試す世界は無限に広がっています。本作業の利用者の一人は、まさに文芸の領域にまで手を伸ばそうとしているのです。のんびりでもいいのです。蝸牛の歩みでもいいのです。希望をもって新たなる一歩を踏みだしたのです。