ダマスカス留学生有志による情報ブログ

ダマスカス留学生有志とそのOBがアラビア語やイスラームについての情報をお送りします。

イスラームのここがおかしいQ&A ②

2010年02月07日 | ★イスラームって?(初級~)

質問
私は仏教徒です。死ねば地獄に落ちるとイスラム教徒に言われるのは、勝手ですが、7世紀ムハンマドが仏教のなんたるかを知ってのことですか?

回答
地獄というのは、神の存在を、否定する者のみが行くところです。
人が自分をどう名付けようとも、キリスト教徒と名付けようとも、仏教徒と名付けようと構いませんが、神の存在を否定していないのなら、あなたが、自分のことをどう名付けようとも、問題はありません。

クルアーンの中でアッラーが言われているのは、

【本当に(クルアーンを)信じる者、ユダヤ教徒、キリスト教徒とサービア教徒で、アッラーと最後の(審判の)日とを信じて、善行に勤しむ者は、かれらの主の御許で、報奨を授かるであろう。かれらには、恐れもなく憂いもないであろう。】(2 雌牛章62節)

私たちは誰も、自分のことも、他人のことも、死後、地獄に入るかどうか判断することはできません。
誰にもそれは知らされていません。
アッラーのみがご存知のことです。

あるとき、預言者様(彼に平安と祝福ありますように)の教友が、殉教者として亡くなりました。
彼の母親が墓に来て、土をなでながら、「息子よ、あなたが天国に入れることを祝福します。」と言っていました。
預言者様(彼に平安と祝福ありますように)が、それをご覧になられ、
『誰があなたに、彼が天国に行くと告げましたか?』
と、母親に尋ねました。
母親は、「彼は殉教者ですよ。」と言うと、預言者様(彼に平安と祝福ありますように)は、
『アッラーのみが、それをご存知です。』
とおっしゃいました。

アッラーにしか、それはわからないのです。
ですから、誰かがあなたに、「仏教徒だから地獄に行く」と言われたようですが、あなたが、神の存在自体を信じていなければ、問題は、仏教徒であるとか、キリスト教徒である、とかいうことではありません。
問題は、神がいるということを信じているかどうか、という点です。

誰一人、あなたに、「あなたは地獄に入る」と言うことはできません。
あなたが、今現在、神の存在を信じていないとしても、将来、もしかしたら、信じるようになるかもしれません。
それは誰にもわかりません。
ですから、あなたが天国に入るか地獄に入るかは、アッラー以外、誰にもわかりません。

今ムスリムであっても、礼拝をしていて、断食をしていても、死ぬ直前になって、信じることをやめてしまうかもしれません。
それは誰にもわかりません。
アッラーのみがご存知です。

最後の審判の日の主催者である、アッラーのみが、私たちが死後どこに行くかを決定します。
もっとも公正で、私たちがこの世で何をしたかをすべてご存知のアッラーが、誰が天国に行き、誰が地獄に行くかを決定します。


質問
ブログ内の「人を許すこと①~③」利他主義に関する話への質問として。)
教義としては立派ですが、…。ならば、アラブの人達は、イスラエルに対して、一番親切にしてあげるべきだしそのはずです。でも、うちの近所のイマームでさえ、例えば去年1月の攻撃にイスラエルを激しく非難していましたが。

回答
イスラームにおいて、権利というのは、2種類に分かれます。
個人的な権利と、集団の権利、です。
個人的な権利、というのは、私個人だけの権利、例えば、所有権などです。

この携帯電話は、私のもので、これは、私に所有権があります。
誰かがこの携帯電話を私に黙って持って行ってしまったとしたら、私は彼を追いかけて自分の携帯電話を取り返そうとするでしょう。
しかし、もし彼が、それを返してくれず、逃げてしまったら、私は、他の人のところに行って、彼の悪口を言い回ったりすることなく、自分の権利に対して彼を許し、口をつぐんで、黙っていることができます。
自分だけの個人の権利の場合は、相手を許して、自分の権利を放棄することができるのです。

しかし、それが、集団の権利だった場合、国の権利だったり、共同体の権利だったりした場合には、イスラームは、私に、その権利を守りなさいと教えています。
私の携帯電話が不当に摂取されても、私は黙っていることができますが、イスラーム国の土地が、不当に摂取された場合には、私は黙っていることはできません。
それを守らなければなりません。

もし、自分の国に、他の国の人が来て、これは、私の国だ、と言い出したら、その国に住むすべてのムスリムが、その外国人に抵抗して自分の国を守る義務が生じます。
ですから、利他主義(自分よりも他人の権利を優先する)というのは、とても美しいものですが、それは、自分の権利のみに適応されます。

私が自分のものでもない、他人の携帯電話を友達にあげて、利他主義を実行するために耐えなさい、と言うのは、間違っています。
自分個人の権利を放棄することはできますが、他人の権利や、集団の権利を、あなたが個人で放棄することはできません。

もし、集団の権利において、利他主義を実行しようとしたら、その国は、無くなってしまいます。
国の権利というのは、集団の権利ですから、すべてのムスリムが、その権利を守らなければなりません。
自分の国を侵略してきた敵が、あなたにこう言うかもしれません。
「あなた達は、利他主義で、とても優く、悪いことをしても善行で返し、何でも許してくれるから、私たちは、あなたたちの国に入って勝手に何でも好きなことをします。」
それを許していたら、その国の人たちは、安全な生活を送ることは不可能になってしまいます。
そうなれば、その国は、死んでしまいます。

私は、誰かが自分の権利を侵害したときには、忍耐して、自分の権利を放棄し、利他主義に徹することができますが、国や、共同体に害を与える場合には、怒らなければなりません。
それに対して私が黙っていることは、その国の一員として、義務を怠っていることになるからです。


質問
カイロに来て住んでみてください。騙そうとする輩には、気をつけて距離をおき、時には、怒鳴りつけなければ、奪い取られ続けるだけです。私の周囲の比較的親切なエジプト人は、私が災難にあうたび、同情するかわりに、「経験から学んで、二度と○○しないことだ」と言います。○○は、妻が癌で今すぐ入院が必要なのでと泣きながら頼まれたり、家賃が払えなくて大家に妻子ともども追い出されるとかね、そりゃあ、人道的に見過しにくいことを言ってきますよ。あとで、嘘とわかるんですがね。

回答
世界中にこういった現象は多々あり、カイロに限ったことではないのではと思います。
どこの国にも、こういった嘘の劇を作り、泣いたり叫んだりして、人を騙そうとする人たちは、どこにでも存在します。

  日本人留学生:「日本では、めったにこういったことは、起こりません。ですから、彼は、すごくびっくりしているのだと思います。日本人は、こういったことに慣れていないため、すぐに人を信用するので。」

かわいそうに。
もし可能だったら、私は彼と電話で話をしたいです。
彼のことが、とても心配です。
彼は、本当にいい人です。
彼はアラビア語は話せるでしょうか?
もし話せなければ、あなたが、通訳をして、話をしましょう。
本当に彼はかわいそうです。
私は、深く彼に同情します。

問題は、嘘をつく、ということを、まったく知らない人が、嘘つきのいる社会で暮らす場合です。
彼と同じ問題が、昔、私の子供にも起こりました。
私の息子が小さいときには、彼はまったく嘘というものを知らずに育ち、そして、自分の周りの全ての人のことが大好きで、愛情深く、誠実に育ちました。
しかし、学校に行くようになって、問題が起こり、ある日、息子が私に向かって言いました。
「お母さんは、嘘をつかないようにと教えてくれたけど、嘘をつく人間がいる、ということを教えてくれなかったじゃないか。全ての人を好きになるようにと教えてくれたけど、人を憎む人がいる、ということを教えてくれなかったじゃないか。」と。

質問してくださった彼は、私の息子と同じような状態に陥っているのしょう、かわいそうに。
私は息子に、そのときから、善いことと悪いことを両方教えなければなりませんでした。
あなたに嘘をついた人がいたら、その人に挨拶はしますが、あまり深く関わらないように、そういう人には注意するよう、話しました。
嘘つきの人や、ねたみ深い人や、人に憎しみを抱く人たちは、心に病気を抱えていますから、その人たちと関わり合いになるのは、とても危険です。
私が息子に教えたように、彼は、人に何かを言われたら、まず最初に、この人は本当のことを言っているのか、それとも、嘘を言っているのか、と調査し、疑うことが必要です。
誠実な人かもしれないし、嘘つきかもしれないからです。
なぜなら、あなたのお金を、嘘つきに与えてしまうのは問題です。

教友ウマルさま(彼にアッラーのご満足がありますように)は、ある伝承でこう言われました。

≪私は、人を騙す者ではありませんし、人に騙される者でもありません。≫

この意味するところは、私は、嘘つきではないけれど、嘘つきの人に騙されるままにしておくこともありません、ということです。

周りの人々に確認したり、調査をして、その人のことを、本当に誠実な人か、冷静に判断しなければなりません。
その人が、自分をムスリムと名付けていたとしても、イスラームは嘘を禁止していますが、ただ外見上の名前だけで判断してはいけません。
残念なことに、イスラームをまったく実践しない人たちは、自分の利益のために何でもするからです。


質問 
イスラムはすばらしいのかもしれない。でも、それを信じている人の態度は、そう誉めたもんじゃないですね。後悔させ正しい道に進ませる力のない宗教なんですかね。

回答
彼の言葉は、すばらしいですね。
彼と連絡を取ることができたら、どうか、私からサラーム(彼に平安があるように)を伝えてください。
本当に私は、彼の質問が気に入りました。

イスラームというのは、例えると、飛行機のようなものです。
飛行機は、ある国から他の国に多くの人々を簡単に運ぶことができますが、操縦士が、もしその飛行機の操縦方法を知らなかったら、何の役にも立ちません。
何億円もする高額な飛行機で、最新式の機能のついたすばらしいものだったとしても、その操縦方法を知っている操縦士がいなければ、何の役にも立ちません。
では、飛行機自体に問題があるのでしょうか?
そうではなく、その飛行機を操縦する人がいないことが、問題なのです。

イスラームというのは、歴史的事実が証明しているように、その教えに従った人々を、正しい道に進ませ、歴史的に偉大な事業を成し遂げさせました。
イスラームの教えを忠実に守っていた人々が、どのように人々と接し、どのように文化を発展させることができたか、歴史が証明しています。
ぜひ、預言者様(彼に平安と祝福がありますように)の時代とその後、十字軍襲来までのイスラームの歴史を勉強してみてください。
(参考:http://www.uraken.net/rekishi/reki-westasia22.html)
(参考:預言者ムハンマドの足跡を辿って《前編・生誕からヒジュラ(マディーナへの移住)まで》-アフマド・クフターロー師の預言者伝講義より-) 

私の亡くなった師の最後の言葉ですが、
「イスラームは、その導きへと導いてくれる操縦士が、不足しています。」
と、先生はおしゃいました。
現在のイスラーム社会の混乱は、その真実の教えイスラームへと導いてくれる、操縦士の不足によるものです。



これら7つの質問は、コメントにて、「とおりすがり」さんが寄せてくださったものです。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います、本当にありがとうございました。回答が大変遅れましたことを、深くお詫び申し上げます。
また、答えてくださった、ダマスカスの大学教授でもあるイマーン先生が、とおりすがりさんとぜひ直接お話をしたいと言われていますので、お手数ですが、もし、これをお読みになられたら、留学生有志のメールアドレス(damas327@hotmail.com)の方へ、メールにて直接ご連絡を頂けると助かります。
エジプトでの生活の大変さは、こちらでも耳にすることがありますが、日本人として、誠実に対応されている姿に、とても感動しました。
ご質問をお寄せいただき、ありがとうございました!


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