Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

傷つきやすい少年の世界「ウォール・フラワー」

2014年10月05日 | 映画


映画好きな友人から勧められていたこの作品、ようやく鑑賞。
原作は1999年に出版されたベストセラー「the perks of being a wallflower」( 壁際の花であることの特典)。
原作者のスティーヴン・チョボスキーは数々の映画化のオファーに満足できず、
遂に自ら脚本・監督を手がけたといいます。

チャーリー(ローガン・ラーマン)はピッツバーグの高校の新入生。
自意識過剰で孤独な、本ばかり読んでいる冴えないタイプ。
中学の時の親友が自殺したこともあり、新しい友達を作れず、学校に馴染めないでいる。
そんな彼がひょんなことからパトリック(エズラ・ミラー)とサム(エマ・ワトソン)兄妹と
知り合い、彼らを通じて新しい世界、新しい友達と出会っていくのですが…

孤独なチャーリー、明るいパトリック、綺麗なサム、その三人が三人ともに
大きな秘密を抱えている。
チャーリーに至っては、彼自身も気づいていないという秘密もあり、
それが彼の精神疾患の原因となっている。
嫌な記憶を封鎖したいという本能によるものなのでしょうか。
その秘密が段々解かれてゆくというミステリー要素も含みながら
アメリカの高校の授業やカフェテリアやパーティなどを舞台に、話は展開してゆく。
彼らは親しくなり、ぶつかり合うことによって、その傷を暴露し、
それによって更に傷つきながらも成長していくのです。

その秘密というのが、同性愛であったり不倫であったり(高校生なのに)、性的虐待であったり
というところが、いかにもアメリカ的ではあるのですが
しかし傷つきやすく転びやすい青春期であるという点は、日本もアメリカも同じです。
若さゆえの繊細さ、痛さ、愚かさ。
初恋の甘酸っぱさ、それが壊れた時の切なさ、もどかしさ。
そういったみずみずしくもほろ苦い思いが、画面いっぱいから伝わってきます。

この作品の宣伝文句は「あの頃の自分と会える」というようなものだったような。
確かに、はるか昔の、頭でっかちであった高校生の頃の自分を思い出しました。
ただ残念なのは、自分はあの頃から、こんなに自分をさらけ出したり、
本気で友人とぶつかり合ったりはしなかったのではないかということ。
無論、この登場人物たちのような深刻な悩みはありませんでしたが
それなりに自分としては精一杯の悩みを抱えていた。
傍から見れば笑止千万なことであっても、当人にとっては世界のすべてであったりするのが
あの頃の悩みなのですから。
でも私は、この作品の中の連中のようにぶつけ合うことができただろうか。
そこまで本気の、裸の付き合いができなかったのではないか。

それは映画の話だからという言い方もできると思うし、
国民性の違いもあると思います。
ただ、やはりアメリカの青春映画である「ブレックファースト・クラブ」をかつて観た時にも
同じようなことを感じて、胸が少々痛んだことを思い出したのでした。

「ウォール・フラワー」 http://wallflower.gaga.ne.jp/
コメント (8)
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「アバウト・タイム 愛おしい時間について」

2014年10月03日 | 映画


大好きな「ラブ・アクチュアリー」のリチャード・カーティス監督の引退作品と聞いて
これはかなり期待していました。
結論から言うと、それほどでもなかったのですが…

赤毛でひょろ長い青年ティム(ドーナル•グリーソン)は、今ひとつ自分に自信が持てない。
21歳になった時、父親(ビル•ナイ)に、彼の家系の男には
タイムトラベルの能力があることを教えられる。
ティムはその能力を使って、彼女をゲットしようと四苦八苦。



「あの時、こうしていたら?」
あるいは「こうしていなかったら?」と誰もが思ったことあるのではないでしょうか。
ティムにはその能力が与えられるのですが
でもそれを使っても、人の思いはどうにもできないということもある。
何回やり直しても、失敗することもある。
ティムは苦心惨憺した挙句に、最愛の女性メアリー(レイチェル・マクアダムス)と結婚するのですが
子どもを設けてからは、その能力が必要でなくなったことに気が付く。
それは、毎日の生活に手いっぱいだから、
そして毎日の生活に満足しているから。

私たちにはティムのようなタイムトラベルの能力はないのだけど
だからこそ、そういうことなんだと気づかされる。
繰り返される毎日の生活に満足すること。
そこに幸せを見つけ出すこと。
簡単なようで、なんと難しいことか。



ティムの妹、落ちこぼれのキットカットに対する、兄の眼差しは限りなく優しい。
そしてティムの父親との愛情。
同居している天然ボケの叔父さん、あんな人が年中家の中にいたら、
世話をするティムの母親はイラつくこともあるだろうとも思いますが…
この作品は恋愛ものというより、家族ものという気がします。
コーンウォールの美しい景色と優しい家族愛。
大きな感動はありませんでしたが、ほっこりさせられる映画です。

「アボウト・タイム」 http://abouttime-movie.jp/
コメント (2)
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「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」

2014年10月02日 | 


「この工場が死んだら、日本の出版は終わる…」
絶望的状況から、奇跡の復興を果たした職人たちの知られざる闘い。
津波で破壊された日本製石巻工場の再生を描いたノンフィクション。

日本の出版用紙の約4割が日本製紙で作られ、石巻工場はその基幹工場として、
1日あたり約2500トンもの紙を生産しているのだそうです。
東京ドーム23個分の広さを持つ石巻工場全域が海に呑まれ、
瓦礫の山に覆い尽くされ、生産機能は完全にストップした。
そこから人々はどのように工場を立ち直らせて来たのか?

2013年4月、春樹の新作「色彩を持たない田崎つくると彼の巡礼の年」の
発売日のシーンから話は始まります。
各地の書店に長い行列ができ、大きな書店にはマスコミもやってきて
そのお祭り騒ぎを取材していた。
”この盛り上がりを興奮気味に見守っている人々が東北にいた。
日本製紙石巻工場の従業員たちだ。
「田崎つくる」の単行本の本文用紙は、東日本大震災で壊滅的な被害に遭いながらも、
奇跡的な復興を遂げた石巻工場の8号抄紙機、通称「8マシン」で作られているのである。”

あの本を発売日に私も買いましたが
その紙が何処で作られているかなんて、考えたこともありませんでした。
本の紙質にそんなにも違いや種類があるということも、知りませんでした。
一冊の本を作るのに、これだけの手がかけられていたのか…。

被害に遭われた人々への丁寧な取材、多数の証言によって
震災のその日から再生するまでの日々を追ったノンフィクションです。
思わず落涙する個所もあり、中々読み応えがありました。

「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/112196.html



この時期、金木犀と並んで甘い香りを放つジンジャー・リリー。
私の好きな香水、グレのカボティーヌの材料にも使われているようです。
コメント (6)
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