Zooey's Diary

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「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

2017年05月24日 | 映画


本年度アカデミー賞主演男優賞・脚本賞受賞。
ボストン近郊の小さな海辺の町を舞台にしたヒューマンドラマ。

ボストンで便利屋として働いているリー(ケイシー・アフレック)は
兄ジョーが亡くなって、故郷のマンチェスターに久しぶりに駆け付ける。
自分が兄の一人息子パトリック(ルーカス・ヘッジス)の後見人に指定されていることを知るが
リーには、この街でどうしても暮らせない理由があった。



リーの過去に一体何があったのか?
彼は何故ここまで心を閉ざして世捨て人のように生きているのか?
回想シーンでその過去が、次第に明らかにされていくのですが
それはあまりにも辛いものであった。

16歳の甥パトリックは青春真っ只中、ガールフレンドを二股かけ、
スポーツにバンド活動に熱中し、自分はここを離れられない、
何処でも仕事ができる便利屋の叔父さんが引っ越してく来るべきだと主張する。
生意気盛りの若者は、定職を持たない叔父をバカにしている節が多分に見えます。
リーは腹を立てながらも、身寄りを亡くした甥を放り出すこともできない。
そんな二人が、何度もぶつかりながら共に暮らし始めるのですが…



ニューイングランド地方の灰色の海の風景。
凍てつく冬景色に、人間の孤独、悲しみ、罪の意識が重く絡まる。
こんなにも辛い思いをしながらも、生きて行かなくてはならない。
生きるのって悲しいなあとしみじみ思えて来る。
でもそこに、叔父と甥、兄と弟、別れた妻との間の愛情が、小さな雪解けをもたらしてくれる。
兄ジョーは、孤児になる息子パトリックのことをリーに託したのだけど
同時に若いパトリックに、一人ぼっちの弟のことを託したのだと分かって来ます。
そして彼らをそっと見守る、周囲の人々。



地味な作品です。
大きな盛り上がりもないし、華やかなハッピーエンドもない。
でもラストに、かすかな希望の光が見えます。
アルビノーニのアダージョが、なんと美しく流れることか。
私はこういう作品が好きなのだとつくづく思いました。

監督・脚本ケネス・ロナーガン。
公式HP http://manchesterbythesea.jp/

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
一筋の希望 (セレンディピティ)
2017-05-25 09:26:17
おはようございます。
私もこういう作品好きです。
地味ながらしみじみと心に響く佳作でしたね。

リーの背負った重い十字架は決して消し去ることのできないもので
安易なハッピーエンディングにしていないところにリアリティを感じました。
それでも一筋の希望が感じられるラストに救われましたね。
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セレンディピティさま (zooey)
2017-05-25 23:47:36
基本的に悪い人は誰もいないのに
あんなに傷ついてボロボロになって…
切ない物語でしたね。

リーはあれだけの十字架を背負って
生きてるだけでも立派、というところですねえ。
生意気な甥の明るさに、我々も救われました。
返信する
こんにちは (ここなつ)
2017-06-19 13:36:53
こんにちは。こちらにもコメントさせていただきますね。
私もこういう作品、とても好きです。そして、本作は特に胸に響きました。
人には「乗り越えられない」こともあるんだ、という、当たり前のことなのだけれど、これまで映画ではクローズアップされづらかったことにフォーカスした、類稀な作品だと思います。
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ここなつさま (zooey)
2017-06-20 09:32:19
こちらにもありがとうございます。
「人には乗り越えられないこともある」
「どんなに頑張っても、叶わない夢もある」
ある程度生きて来た人間だったら、誰でも知っていること。
でも、特に映画には、それを認めようとしないものも多いですよね。
当たり前のことを突きつけられて、ある意味こちらも非常に残酷でした。
貴ブログ、ブックマークさせて頂いてよろしいでしょうか。
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Unknown (なな)
2017-11-23 23:49:52
悲しみと優しさに満ちた物語でしたね。
リーと兄のジョーは本当に不運な兄弟で
弟は過失で子を亡くすという罪を背負い
兄は妻に去られ息子を遺して余命がわずか。
でも、遺された息子と弟が支え合って生きてほしいと
そう願っていたのでしょうね。
こんなに優しい人たちの物語なのに
現実の厳しさに涙しました。
生きるってほんとうに悲しく切ないことも多いですよね。
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ななさま (zooey)
2017-11-24 11:55:41
悲しみと優しさに満ちた物語、
本当にそうでした。
映画だからとも思いますが
世の中には不運に見舞われる人もいっぱいいますものねえ。
それでも生きて行かなければいけない。
ドライなパトリックに最初はあきれましたが
彼もやはり傷ついていた。
色々な意味で切ない映画でした。
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静かな名作 (ごみつ)
2019-01-20 01:21:22
こんばんは。

昨日は、拙ブログの記事にコメントをいただき有難うございました。

ノルウェーまだ~むさんや、Zooeyさんから、新しくコメントをいただいて、またしみじみとこの映画の事を思い返したりしていました。

記事に書かれている様に、ニュー・イングランドの寒々とした風景が、登場人物たちの心情を現しているかの様でした。

ラスト、それぞれにほんのちょっとの癒しがあって、これからの人生忘れる事は出来ないだろうけれど、まわりの人達との関係の中で皆が幸せになっていくと良いな・・と思わされる映画でしたね。
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ごみつさま (zooey)
2019-01-21 09:08:47
こちらこそ、ありがとうございます。
私が観たのはもう2年前なのですけれど
私もまた、しみじみと思い出しました。

大きな事件も起こらないし
滅茶苦茶有名な俳優も出て来ませんが
本当に良い作品でしたね。

映画が好きでよかったと思わせてくれるような作品でした。
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