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邦正美の「舞踊の文化史」

2018-06-18 13:57:32 | 読書
岩波新書から出ている、邦正美著「舞踊の文化史」を読む。1968年の出版だから、もう50年前の本だ。200ページ弱で、原始時代の踊りの始まりから始まって、中世の庶民の踊り、宮廷舞踊、バレエ、近代舞踊革命、芸術と現代舞踊、というような流れで、踊りの流れを解説した本。岩波文庫から出ているので、それなりにきちんとした内容だろうと思ったのだが、邦正美はドイツで学んだ現代舞踊畑の人なので、かなりバイアスのかかった内容だった。

バレエについて、トウシューズを履き、コルセットで締め付けた不自然なもので、これを否定した近代舞踊革命から現代の芸術舞踊が成立した、というような主張が根本にあるが、50年を経た現在の立場から見ると、必ずしもそうではないのではないかという気がする。また、「バレエ」という言葉を、ある時にはいわゆるクラシック・バレエの意味で使い、別の時には、一般的な舞踊の意味でも使用しているのは、なんとも判りにくい。

宮廷の舞踊で、リズムによって曲が決まる説明の例示として、シュトラウスのワルツを挙げているのも、時代が全く違っているので、適切でないというか、学問的には問題だろう。

著者によると、いわゆるクラシック・バレエはテクニックだけで物語を語る低級芸術であり、体の動きで個人の感情を表すような現代舞踊などが真の芸術といわんばかりの書きっぷりだが、その結果モダンダンスは一人一派のような状態で、メゾッドも確立せず、新規性ばかりを追い求めて、結局広く支持されなかったのではないだろうか。

現在の踊りの公演数や観客数から見ると、モダン・ダンス系よりもクラシック・バレエ系の方がかなり多いのではないかと思う。まあ、そうは言っても、教えられることもいくつかあった。日本舞踊は詞が先にあって、それを表現する踊りをするが、西洋のダンスはキリスト教が踊りを敵視したために、詞のない音楽やリズムだけで踊る形となったという指摘だ。かなり本質的な問題なので、パントマイムなどをどのように考えて、パントマイムとバレエの関係も研究する必要を感じた。

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