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山田由美子の「第三帝国のR.シュトラウス」

2018-04-17 10:41:56 | 読書
「第三帝国のR.シュトラウス」を読む。シュトラウスには、ヨハン・シュトラウス、オスカー・シュトラウス、チャールズ・シュトラウスなど作曲家が多いから、「R」を付けたのだろうが、最初からリヒヤァルト・シュトラウスとしても良いのではと思う。副題には「音楽家の≪喜劇的≫闘争」とある。世界思想社から出た本で、2004年の出版。本文は250ページほどの本。大学の先生が書いているので、注釈が沢山ついている。

リヒヤァルト・シュトラウスは、名前も同じなので、ワーグナーの後継者のように言われた時期があり、そうした点でナチスにも担がれて、戦後はナチス協力者として批判された時期もあったが、この本では、いろいろと丹念に調べて、自分の生活を守り、ドイツ音楽を守るために、ナチスに協力する「ふり」をしただけで、実際は協力しなかったと書いてある。

僕の興味は、初期には『サロメ』や『エレクトラ』などの前衛的な作品を書いていたのに、なぜ突然に『ばらの騎士』みたいなモーツァルト風に変わったのかという点だが、その点に関しては明確な答えは見つからなかったものの、いろいろとヒントは見つかった。

本の前半は、ナチス台頭以前のシュトラウスの活動の伝記的な記述で、台本のホーフマンスタールとの関係がいろいろと書いてある。普通の本では、この二人で沢山のオペラを書いたので、息があったとなっているが、この本を読むとそうではなかった様子が良く分かる。むしろ、『無口の女』を書いたツヴァイクの方が、シュトラウスのお気に入りだったようだ。

ところが、そのツヴァイクがユダヤ人だったために、『無口の女』を上演するために、シュトラウスの「喜劇的」ともいえる闘争が始まる。後半は、ナチスの戦争のことなどが妙に詳しく書かれていて、判りやすくはあるが、本の本題とは少し外れた印象を受けた。

著者はシェイクスピアやセルバンテスなど、ルネッサンス後期の文学の専門家で、音楽の専門ではなさそうだが、そうした人が書いているので、いわゆる音楽的な観点で書かれた本とは異なり、新しい観点があり、面白く読んだ。

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