劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

伊賀越道中双六

2021-09-15 10:56:51 | 文楽
9月14日の夜に国立小劇場で文楽の「伊賀越」を見る。17時15分開演で、20分間の休憩を挿み、終演は7時45分。50パーセント収容なのはこうした状況だからやむをえないが、客を入れているのは2列~8列と一番後ろの2列だけで、真ん中がすっぽり空いて空調もよく効かず、暑かった。なぜこんな売り方なのだろうか。

文楽の場合は前の方が見やすいということはない。むしろ、8列目までは近すぎて見難いし、上手側の太夫と三味線の床も見難いので、むしろ避けたい席だ。半分しか売り出さないというならば、1列おきに売った方がよっぽど見やすいし、コロナ対策にも有利だろう。国立劇場はいったい何を考えているのかさっぱりわからない。その割には、休憩中のロビーでちょっと談笑をしていると、「しゃべるな」と注意にきて興ざめだ。芝居や文楽が分かった人がきちんと運営してほしいものだ。

今回は3部制で、どれも短く中途半端なプログラム構成。早く2部制に戻してきちんと見せてほしいと願う。「伊賀越」は、「沼津」「伏見北国屋」「伊賀上野仇討」で、原作の6段目、9段目、10段目という感じだが、メインは「沼津」。太夫もここに重点が置かれていて、藤太夫と千歳大夫が力演。それなりにきちんと語っていて楽しめた。

「伏見」は、最近見ていないのでよくわからないが、ちょっと短いように感じられ、織大夫が一人で30分間語った。織大夫はふしで語るのは上手だが、ちょっと高いキンキン声が過ぎて、長く聞くと疲れる。もう少し、美声をうまく聞かせるように工夫してほしい感じ。

最後の仇討は15分で、話のけりをつけるだけなので、芝居としては全く面白くない。だから、太夫も人形も新人の訓練場みたいな配役だが、それにしても学芸会のようでレベルが低すぎ。太夫の育成を急がないと、本当に文楽がなくなってしまうのではないかと心配になる。

12月の文楽公演は久々の「仮名手本忠臣蔵」で、前半部分のみの公演だが、配役表を見るとベテランは休みで、中堅と若手だけの公演。太夫などは、この人で大丈夫かと今から心配になる段があった。

太夫の訓練は、原則として先輩太夫が行うようだが、昔のように三味線が教えることも併せてやらないと、いつまでたってもうまい太夫が育たないのではないかと心配している。何とか考えてほしいものだ。

いろいろと考えながら帰宅して、軽い食事。レストランが開いていないので困る。キャベツのサラダと、イワシのオーブン焼きなど。飲み物はカヴァ。