劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

ウェルズ恵子の「魂をゆさぶる歌に出会う」

2019-07-07 05:58:54 | 読書
ウェルズ恵子の「魂をゆさぶる歌に出会う」を読む。岩波ジュニア新書766で、約200ページ。2014年刊。副題に「アメリカ黒人文化のルーツへ」とある。ジュニア新書なので、中学生程度でも読めるように書かれた本だろうが、読んでみるとアメリカで形成された黒人文化について、奴隷制度時代の背景からよくまとめられていて分かりやすかった。

内容的には、奴隷制度時代から始まり、解放後も差別が残り、公民権運動が盛んになる1960年代まで虐げられていたことが背景として語られ、動物のたとえ話や、ワークソング、黒人霊歌、ゴスペル、ブルースなどについて、その発祥や特徴などがまとめられている。

解説する内容は文学的というか、歌われる歌詞の内容分析が中心で、音楽的な特徴についての解説はまったくと言ってよいほどない。その代わりかもしれないが、主要なキーワードについては英語での表記がなされており、興味のある人はインターネットで検索しろとある。確かに、音楽や踊りなどはいくら文字で説明しても判りにくいので、こうした方法もあるかも知れないと思った。

従来から、黒人の初期のワークソングやブルースはあまり記録が残されていなかったようだが、この本を読むと、奴隷解放後にも南部の黒人は刑務所の中で実質的に奴隷のように働かされていたので、そうした南部の刑務所でワークソングなどが残り、それを採録した記録があるようだ。そうした点では勉強になった。

また、歌詞の説明では、黒人英語特有の表現がどうした背景で生まれたのかなどが、やさしく解説してあり、子供向けの本となっているが、大人にもためになると感じた。