劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

京都の吉例顔見世

2017-12-27 16:11:33 | 歌舞伎
年末の風物詩である京都の吉例顔見世興行のテレビ中継をやっていたので、録画で観る。演目は「義経千本桜」から、「渡海屋」「大物浦」。年末の吉例顔見世といえば、四条にある京都南座のイメージだが、昨年からの改修工事がまだ続いているらしく、ロームシアター京都の大ホールで行われているようだ。

ロームは昔は小さな電気部品を作っていたような気がしたが、現在は半導体と集積回路の大会社で、芸術活動へのメセナにも熱心なので、ありがたいことだ。この劇場は行ったことがないのでどこにあるのだろうと調べてみたら、四条よりもちょっと北の二条のあたりで、平安神宮に隣接する場所にある京都会館の名前が変わったらしい。

歌舞伎は定員2千人の大ホールでの公演だから、南座よりもちょっと大きいか。ほかにも小ホールなどがいろいろと入っているようなので、「まねき」というのか、名前を書いた札や、演目の絵などが劇場正面に一応出ているが、建物のムードに合わずにちょっと残念な気がする。

南座は現在の耐震基準に照らして問題がある一方、概観はそのまま維持したいということで、なかなか工事が難しいのだろうが、早く再開してほしいものだ。

さて、このロームシアター京都での顔見世は八世芝翫の襲名も兼ねているということで、にぎやかな舞台。テレビで中継されたのは、昼の部からの「渡海屋」と「大物浦」。「義経千本桜」のエピソードだが、壇ノ浦で死んだはずの平家の知盛や八歳の安徳天皇が逃げ延びていて、義経を討とうとするが、返り討ちに会うという話。

歴史的な事実とはちょっと違うようだが、こうした作り話はいかにも歌舞伎らしくて面白い。特に「大物浦」でのエピソードは、「平家物語」にあるようなエピソードもちりばめられていて、それがわかると二重に面白い。

主演の知盛には襲名の芝翫、その女房役には時蔵、脇役に鴈治郎や勘九郎を配して、義経役には秀太郎とベテランが務めている。こういう風に脇までうまい役者がそろっていると、なかなか見応えがある。

僕なぞは時蔵が好きだから、時蔵と安徳天皇役とのやり取りがなかなか良いなあと思う。

ロームシアターは、やはり多目的ホールなので、花道を仮設で作ってはあったが、あまりムードが出ていない。最後の弁慶の引っ込みなども、ちゃんとした花道で観たかった

テレビでもこうして吉例顔見世興行を観ると、年末気分に浸れて、なかなか良かった。