原作名:僕のヒーローアカデミア
作者:安達武
最終更新日:2019年10月23日
評価:A
サイト:ハーメルン
https://syosetu.org/novel/167873/
[あらすじ]
2004年3月。卒業式も終わり、四月からの高校生活を間近に控え、『白き翼』の面々で花見をしている真只中。脈絡なく唐突に現れた謎の魔法陣に巻き込まれ、どこかへと転移させられてしまった長谷川千雨。
飛ばされた先は見覚えのない廃墟の街。そして警告もなく襲いかかってくる黒ずくめの不審者。
辿った歴史も年代も異なる平行世界に脈絡もなく転移してしまった千雨が、止むに止まれぬ事情に流されて、現実逃避気味にヒーローを目指す戦いは、こうして始まったのだった。
[文章]
三人称。一話平均六千字前後と、長さとしては妥当な感じ。誤字脱字の類の少ない癖のない文章で読みやすい。
[総評]
千雨魔改造物。ただし舞台はネギまの世界ではなく、僕のヒーローアカデミアの世界。元となった作品の設定は作中で少しずつ説明がされているので、どちらかの原作知識しかなくても、安心して読める。
逆ハーレム要素がちらほらしているので、苦手な人は回避推奨。
『僕のヒーローアカデミア』の世界に転移してしまった千雨。当然戸籍や住む場所のあるはずがなく、身元保証人もいなければ、所持金も心もとない。ないない尽くしの千雨に手を差し伸べてくれた相手の要求は、ヒーローになること。
そんな事情から、中学を卒業したばかりなのに、雄英高校受験のためにもう一度中学生に。エヴァンジェリンと違い、三年生の二学期からだったのが救いか。
ヒーローを目指すにしても、ヒロアカ世界の基準だと、千雨って『無個性』じゃないっけ?
そんな疑問が出て来るかもしれないけれど、心配無用。アーティファクトで従えている電子精霊七匹が個性役を果たしている。しかも千雨の強化にも色々とお役立ち。どんな強化がされるかは読んでからのお楽しみ。
期末試験に備えての勉強会に入ってからグダグダになってきているので、そろそろビシッと締めてほしいところ。
千雨魔改造物が好きな人なら、満足のいく出来だろう。
原作名:オーバーロード
作者:エクレア・エクレール・エイクレアー
最終更新日:2019年12月13日
評価:B
サイト:ハーメルン
https://syosetu.org/novel/174591/
[あらすじ]
カルネ村に住む娘エンリは、妹のネムと一緒にトブの大森林へ薬草採集に出かけた先で、これまでなかったはずの豪邸を見つける。
誰かいるのかな? と声をかけてみれば、出てきたのは生者全ての敵、アンデッドのスケルトン――モモンガ――だった。
しばらくはトブの大森林側の屋敷でひっそり暮らしていたものの、原作イベントは容赦なく軍靴を鳴らして迫ってくるもので。
モモンガがナザリックではなく、パンドラズ・アクター入り宝物殿と一緒に転移した世界で、カルネ村を拠点にあれやこれやする話。
[文章]
三人称。会話文多め。誤字脱字は少な目で読みやすい。ただし場面転換で空行が多いのが気になった。一話平均3~4千字。一話辺りの尺はもう少し長くしてほしかった、という印象。
[総評]
モモンガとパンドラズ・アクターとの二人旅のコンセプトが珍しくて目を通してみたら、意外に当たりだった。
エンリのもらうアイテムがゴブリン召喚ではなく、天使召喚なのを除けば、基本的にオリキャラはなし。この点でも不安要素は少ない。
守護者がいないので肩肘張る必要がなく、ナザリックがないので、アインズ・ウール・ゴウンと改名することもない。王都がヤルダバオトに襲撃されることがないので、イビルアイフラグもない。
世界征服に乗り出すこともせず、心と興味の趣くまま未知を求めてぶらり旅。いや、カルネ村を拠点にしているから、そこまでぶらぶらはしていないけれど。
自分らが異邦人であるのを理解し、世界をどうとでもできる力はあっても、たっち・みーのような正義にも、ウルベルトのような悪にもなれない半端者。ならば半端者なり意地を見せてやると、存外にカッコ良いモモンガの軌跡の物語。
原作名:ゼロの使い魔
作者:スィートマト
最終更新日:完結済
評価:B
サイト:サラダデイズの名残り
http://thankgoditsfriday.blog.fc2.com/blog-category-8.html
[あらすじ]
使い魔召喚の儀式。失敗魔法の爆発を幾度も重ねた末、現れたのは一人の男。年は二十歳と言ったところか。問題があるとすれば……全裸なこと。
トリステインは知っていても、新興国ゲルマニアは知らない。ブリミルや使い魔の儀式、人間を召喚するメイジの系統についても知識があるなど、謎も多い。
最初は不信感で見ていたルイズも、持っていると知識と技量は本物と判明してからは、秘密主義なところはあれ信頼に足ると、急速に懐柔され。男として頼りにすると言うのではなく、出来た使い魔と言う評価で。
出だしから原作とかい離していた物語は、アルビオン行きから大きく道を外れ始め、予想外の結末に。
原作では知る事の叶わなくなった四の四の謎を独自設定で語り、完結にまで持っていたゼロ魔二次としては希少な作品。
[文章]
三人称。脱字はほとんどなし。誤字控え目。ちょっと変わった単語を使う度に、カッコ書きで語源を入れてくるのが、個人的には鼻についた。例えば『ミストレス(mistress=英:女主人)』みたいな注釈は不要だと思う。
[総評]
ルイズのオリ主召喚物。見方によっては最低系。
主人公曰く、ガンダールヴの能力あってこそらしいけれど、三百対五万の戦場をひっくり返せる実力は、オリ主最強物と言っても良いと思う。ついでに生まれと育ちの関係から、ウィンダールヴでもないのに他の使い魔達と会話ができ、少しだけど先住(精霊)魔法が使え、ブリミルや虚無にかなり精通しているなど、色々と特技を持つ万能型。
ただしオリ主とルイズの間にあったのは、最初から最後までメイジと使い魔と言う主従関係のみ。ケニングと言う気障ったらしい口調が気にならなければ、こういう主人公はありかもしれない。ハーレム要素なし。
作者による独自の解釈や設定が多め。原作で20巻もある内容を、力尽きずにまとめるためだから、かなりのショートカットをしているのは仕方なし。それに不満を持たせない力量もある。
原作が謎を残したまま終了してしまっただけに、その部分にフォローを入れた作品は珍しい。ブログの閉鎖に伴い、この作品が読めるのは6月一杯まで。読むなら今のうちに。
原作名:魔法先生ネギま!
作者:スィートマト
最終更新日:完結済
評価:B
サイト:サラダデイズの名残り
http://thankgoditsfriday.blog.fc2.com/blog-category-3.html
[あらすじ]
ネギに告白し、恋仲になった千雨。しかしネギは魔物となり不老不死の身体。自分が老齢で死んだ後、眠りから覚めた明日菜の一人勝ちになるのは明白。
そんなのは認められるかと、エヴァの協力を得て吸血鬼『デライトウォーカー』になったのにも関わらず、ネギは73歳で死亡。
二重の意味でこんな結末を認められるか、と世界樹に祈れば、身長だけ中学生、吸血鬼の身体や記憶その他は未来のまま、2002年に逆行していた。
愛する旦那は後にも先にも死んだネギだけ。この時代のネギ、姿形は似ているけど別人。でも、自分達と同じ轍を踏ませまい。
これは純愛か、はたまた偏愛か狂愛か。
『デライトウォーカー』チサメ・スプリングフィールドが過去改変に挑む物語。
[文章]
三人称。……のはずなのに、全体を俯瞰している第三者のメタ発言があるので、苦手な人は注意。脱字は数える程度。ただし『私』を『わたくし』と読ませるために『私くし』、『デイライトウォーカー(Daylight Walker)』を『デライトウォーカー(Delight Walker)』と書く意図的な誤用あり。他の文章が良いため、この単語を用いている箇所は違和感が強い。
[総評]
エヴァンジェリンの眷属となった長谷川千雨の魔改造逆行物。種族的な理由から、魔法使いアンチ傾向。元の時間軸は原作と異なり、超が逆行してこなかった世界。どのような世界になっていたのかは、作中に挿話で説明されている他、終盤でも明かされている。そして原作通り、本編では超が健在。
一言で言えば、千雨の愛が重い、重すぎる。これだけの愛情を向けられたら、「ごめん、無理」と断って逃げ出すレベル。逃げ切れるかどうかはさて置き。それを受け入れていたネギ(故人)は、間違いなく英雄。
かと言って、作中のネギに対してヤンデレ化している訳ではない。愛するネギは故人で、目の前にいるネギとは別人と本人は割り切っている。その上で好かれたいと思ってアプローチをかけているし、元の時間では壊してしまった3-Aとの関係を取り返したいとの願いも。その願いが報われるかどうかは、読んでのお楽しみ。
7月頭にブログを閉鎖するとのことなので、それまでに一読を勧めておきたい作品。
作者:子藤貝
最終更新日:2014年3月28日
評価:B
サイト:ハーメルン
http://novel.syosetu.org/5283/
[あらすじ]
両親を殺され、仇には死に逃げされ、父の残した刀と伝えられた剣術以外には何も残されず、鬼道に堕ちた少女。誰かに殺されるために生き、生きるために殺し続けてきた果てに出会ったのは、もう一人の鬼、吸血鬼エヴァンジェリン。
時は折しも1980年代に入ったばかり。魔法世界では、メガロメセンブリア連合とヘラス帝国間の緊張が高まっている最中。
自分達を打倒できる英雄を求め、二人の鬼の暗躍が始まる。
[文章]
三人称。誤字脱字の類は少な目。各話も文章量が多く読み応えあり。
[総評]
エヴァンジェリン悪堕ち系。
緩い言い方をすれば「私達を倒せる英雄を捜しに行く」な話なのだけれど、原作の温い展開はない。英雄になり得る候補がいれば見逃し、悪の素養を持つ者がいれば育つのを待つ。英雄だろうと悪だろうと、自分達に比肩できる実力を持った時に刈り取る。正統か邪道かはさて置き、ラスボスの貫録が溢れていてカッコイイ。
原作時期に入ってからやや失速した感があるのだけれど、これは仕方ない。原作開始前の大戦時に、終盤レベルの勇者と魔王の戦いをやってしまっては、レベル一桁(推定)のネギの行動が物足りなくなるのは必定。ネギの成長に期待。
しかしエヴァらの魔法世界の大戦時からの介入により、タカミチやクルトの心境に変化あり? ネギの生い立ちや木乃香の立場も微妙に変化。刹那の過去にも思わぬ落とし穴……。ネギパーティーそのものにも獅子身中の虫が紛れ込み、前途多難なのは確定。
エヴァの悪役ぶりが光る作品。