ライトヒッティングな生活

野球と平穏な生活を愛するblog

小川洋子「博士の愛した数式」と阪神タイガース

2006年01月14日 15時13分55秒 | 野球-野球全般
一昨日、初めてこの小説を読んだ。
かなり野球と絡んでいて、また、小説としても非常に面白かったので、
新刊でもなんでもなく時事性ゼロで今更なのだが、感想をエントリにしてしまおう。
朝日新聞にロザンの菅くんによる書評が載っていたくらいなので、本当に今更だが。

※ネタバレは・・・たぶんさほどしていないと思いますが、いちおうご注意ください。



この小説には、「数字・数学」と「1992年の阪神タイガース」が、
重要なファクターとして登場する。

数字・数学に関しては、小説ベースにしても私には難しすぎた
フェルマーの定理やオイラーの法則、完全数、なんていう固有名詞は
クイズでの知識でなんとか名前だけは知ってるけれど、
虚数や対数の概念を正確に掴んでいるかというとお手上げ。
この小説の中で小学生が解いていた算数でさえ、ちょっと怪しかった
(あれ方程式じゃないのか!?←逆ギレ)。
高校に入った時点で数学を放棄し、以降2年間の数学の時間を涙目で過ごした、
私立文系人間の限界。
・・・とはいえ、数学のできなさの度合いは主人公も同じなのだから、やはり愛情の差か・・・
ただ、この小説からは、数字に対する愛情をたっぷりと感じることができたし、
数学者ならではの数字を捉える目線の豊かさも素晴らしいと思えた。
博士は記憶以外もちょっと変だけど
(イデオ・サヴァンってこんな感じじゃなかったっけ?レインマンのやつ)、
それが愛おしくもあった。


うってかわって、タイガースである。
数字とは逆で、小説と我々の日常生活をつなげるツールとなっている。
タイガースの公式戦の様子や結果が、主人公たちの生活と一緒に存在している、
ということがよく分かる。
名前が登場する選手を挙げるだけでも、
亀山、中込、パチョレック、仲田、葛西、新庄、中田良弘、真弓、和田、久慈、八木、湯舟・・・
そして、1992年の現役選手ではないが、江夏豊が何より密接に絡んでくる。
博士の、江夏を愛する様子には胸が痛くなるほどだ。

倉敷での公式戦の様子や、湯舟のノーヒットノーランも登場する。
八木の幻のサヨナラホームランの試合も登場し、
この日をきっかけに主人公たちの暮らしが変わってゆく。



非常に面白い小説で、阪神が登場しなくても、
もしくは別のチーム・別のスポーツでも、心が熱くなっただろうとは思う。
(切ないハッピーエンドでした)
けれど、ここに「1992年の」タイガースを添えることによって、
よりビビッドな印象を受ける。
ここに登場する人たちが、確かに倉敷に居たのではないかという錯覚を持つ。
自分の記憶とも絡み合う。
でもこれが、「2003年の」タイガースだったら、
この小説にはたぶん登場しなかったのではないか。
私の、1992年と2003年でのタイガースへの気持ちの違いを加味しても、そう思う。
(しかも、小説はちょうど、2002年で終わっている)
たった10年のあいだに、タイガースや、タイガースを取り巻く環境は
変わってしまったなぁと、どこが変わったかうまく説明できないけれど、
この小説を読んでしみじみと思った。



しかし上記で、別のチームでも小説は面白い、と書いたが、
これがバファローズやマリーンズ(1992年だとぎりぎりマリーンズか)だったらと
想像すると、ちょっと厳しいかもしれない・・・(苦笑)。
たとえ1988年のバファローズだったとしても、
1974年のオリオンズ、2005年のマリーンズだったとしても、
単なる「そのチームのファンの人が書いた小説」としか捉えられない気がする、
悔しいけれども。
そういう意味では、セリーグや、タイガースの持つ大衆性を羨ましくも思う。



そんなわけで、超今さらだがオススメである。
タイガースファンじゃなくとも、野球ファンでまだ読んでいない人は是非。
この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スコア付け観戦のススメ | トップ | CS放送 »
最新の画像もっと見る

野球-野球全般」カテゴリの最新記事