耽美者ドメスティック!

「生きること? んなこた下僕に任せておけ」と言ってみたい、貧乏耽美主義者の日々茫々録。

サウンドトラック/2008.6/文藝月光 1号 (2009.11)

2010-04-04 17:26:46 | 短歌 journal 格納庫
(タイトル/制作期/掲出媒体)
自分自身のためのログとして置く。
これらの朦朧体の歌たちが他者に触れることがあれば、更に歓びである。
これ以前のものは塩漬けサイトに格納してある。




サウンドトラック

ジャン・ジュネに何一つ似てないきみのてのひらに花文字の傷ある

まず壊す 何もかも欲しいきみの柔らかい産毛が慄えるそこを

銀色に光ってる魂の皮膚ちょっと剖いて捲ってみせて

祈りのよに覚えている愛したこと皮膚の縫いしろすべてほどいて

痕の残らない痛みが欲しいのだからゆっくり優しく絞めてね

楔形の傷をいれたの内腿にきっとあなたは気に入ってくれる

ねえまだ死なない? せめてゆっくり仰向けに倒れて瀕死のシンガー

蹲って祈るそこは寝台それとも便所跪いて吐く六月の薔薇

眼を潰し耳を塞いできみを待つ毛孔ひらいて産毛をたてて

大切を猥褻に掏りかえて売る きみはどの天国に墜ちたい?

父恋いの眸に虹色の膜きみは鬱陶しいほどに少年

壁に手をつき呻いてるきみは自涜のきみは自滅のふるえる羽根

この庭で死ねとう囁き溢る二重螺旋の内耳の迷路に

かげもかたちもなくなるまで完き死を賜れと轢死を希む

うららかに墜ちてゆく音シシリアの聖母に抱かれて揺られるように

痂を剥ぐような音がするんだきみに抱かれて擦られるチェロ

灼かれて歩こう夜中の庭をその傷を曝してWalki'n in Sunshine

みどりの指などもたないわたくしの真夜中の庭に渇水の薔薇

天刑を病むとうその名いたづらにうつくしきかなレプラ瘰癧

<ディープ・スロート>その通称の蛇に近きを思い笑む 裂ける舌

縛られて一塊になるもの薔薇いろの膚に純白の肉割れ

ベルメールのあぶな絵きみがばらばらの手足を卍に束ねて

太陽に眼を剥きラインを曳いてきれいはきたないきたないはきれい

目覚めてあるかに半身起ており水底に千年眠るパウル・ツェラン

テンペラの瘡蓋の天使の目玉罅割れつぎの千年ゆこう一緒に

キドニーパイいかが愛してるわパパ シルヴィア・プラスはオーヴンで焼け

オーヴンに灼かれし頭蓋かろきかなシルヴィア・プラス永久に渇けり

稚く差しだす完膚なきまで化粧(けはい)せし顔曝(さ)れ首(こうべ)として

皮膚は皮膚もて溶けだしはせぬか落日のあか地に滲みゆくとき

のちの世の青の窮み 洪水の詞書(ことばがき)齧り渇ける鼠

中原中也 シャルルヴィル=メジエールからの出発 (月光)
福島泰樹,立松和平
勉誠出版

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