イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

Milanoでドミニク・アングル(Jean-Auguste-Dominique Ingres)

2019年06月08日 14時32分43秒 | イタリア・美術

今日も展覧会つながり。
Milanoに行った理由は、スカラ座でのオペラ鑑賞とAntonello da Massina(アントネッロ・ダ・メッシーナ)の特別展だった。
しかし、同時にPalazzo Reale(王宮)でJean-Auguste-Dominique Ingres(ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル)も開催されていたので、そちらにも行くことにした。

しかし、びっくり!
アントネッラ・ダ・メッシーナの方には長い行列が出来ていたのに、こちらはすかすか。
「え~アングルだよ。私間違えてる?」というくらい誰もいなかった。
王宮は月曜の午前中はお休みで、午後14時半から開館するのだが、その少し前に到着、入り口で待っていると、警備員と同じく並んでいる人が、「これ(アングル)は失敗だねぇ…」と話しているではないですか。
売り文句に「2度とない」と書かれているが、そりゃあ、これじゃあ2度とないだろう。
警備員曰く、数年に一度くらいはこうした「大外れ」の特別展があるというのだが、聞いていたところそのどれも私的には結構よかった、と記憶しているが…

今回に関して、私が考える敗因は、アングルのイタリアでの知名度の低さ、かと。
ダ・メッシーナの行列に並んでいた時も、「イングレスって誰?」と。
そりゃ「誰?」だよ。
イタリア語はローマ字の通りに発音するので、決して間違いではないが、「アングルだよアングル」と突っ込みたかった。
もしやイタリアでは「イングレス」で通っているのか?と一瞬思ったが、いやいや、授業ではちゃんと「アングル」と教授は発音していた。
要は、イタリア対フランス、更にナポレオンですからねぇ…というのがイタリア人には人気がなかった理由だろう、と勝手に納得。
この時代って、政治的にも芸術的にも、イタリアは主役の座をフランスに奪われてるしな。
まぁ、私的にはゆっくり静かに鑑賞出来て良かったけど。

新古典主義を代表する画家ドミニク・アングルは、巨匠Jacques-Louis David(ジャック=ルイ・ダヴィッド)に師事した後、長期のイタリア滞在でルネサンスの古典様式にどっぷり浸かる。特にラファエロに傾倒、その作品を規範として緻密な構成、線による明確な形体、理想化された形式美などを使った歴史画、神話画、肖像画など数々の傑作を残している。
代表作は

「泉」とか

アングル最後の作品と言われる「トルコ風呂」
こういったヌード作品がだろうか。(これらの作品は展示されてない)
今回は60点以上のデッサンを含む、150点以上の作品が世界各地から集められた。
Jean Auguste Dominique INGRES e la vita artistica al tempo di Napoleone(ジャン アウグスト ドミニク・アングルとナポレオン時代の芸術的活動)という展覧会のタイトルが付けられたように、メインの作品はこれ。


「玉座のナポレオン」
戴冠式の衣装を着けたナポレオン1世を描いた肖像画で、写真からは分からないが259 cm × 162 cm とかなり大きな作品のため、圧迫感、存在感もすごい。
王、ナポレオンとしてはこちらの作品の方が有名。

アングルの師、ダヴィッドの「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」
こちらの方が描かれたのは一年遅い。
実はナポレオンとミラノは非常に関係が深く、ナポレオンは1805年イタリア共和国の王としてミラノの大聖堂で戴冠されている。(イタリア共和国は1814年まで)

展覧会はダヴィッドやその周辺の画家から始まり、肖像画、イタリア滞在時のスケッチなど、かなり見応えがあった。
なんであんなに人気がないんだろ???
例えば

モノクロの「グランド・オダリスク」
ルーブル美術館でカラーは見たことがある。


カラーはカラーで良いけど、モノクロはモノクロで余計なものが排除されていて良かった。
また

ラファエロとフォルナリーナ、背後にはラファエロ最後の未完の作品「キリスト変容」が描き込まれている。
このフォルナリーナは

ラファエロの愛人と言われているこの人。パン屋の娘だったことから「フォルナリーナ」と呼ばれている彼女。
またアングルはラファエロの自画像の複製も描いている。

ラファエロが描いた自画像と見まごうくらいそっくり!!
他にも

「レオナルド・ダ・ヴィンチの死」や

「Pietro Aretinoとカルロ5世の大使」
この絵の奥にはTiziano(ティッアーノ)の作品が描き込まれている。(この写真では非常に分かりずらいが)
ティツィアーノはピエトロ・アレティーノの肖像を描いている。

アングルは中世ールネサンスを髣髴とさせるTroubadour style(トルバドゥール・吟遊詩人)でアレティーノを描いている。
アレティーノはルネサンス期の詩人である。
このように、ルネサンスの巨匠たちに対する多くの作品が会場で見られ、本当に見応えのある展覧会だったのだが、イタリア人はなぜお気に召さなかったのか?

今月23日まで開催なので、まだ間に合う…ミラノだけど。
Jean Auguste Dominique INGRES e la vita artistica al tempo di Napoleone
入場券はオーディオガイド込



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