富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

湖は慕っている

2010-02-15 19:58:12 | コバルト
集英社文庫 コバルトシリーズ 初版:昭和52年1月
カバー・カット:直江真砂

発表順に読んでいってるつもりだったが、
ウィキペディアを確認したらわけがわからなくなってきた。

あんまり凝りだすと歯止めがきかなくなる(生活に支障が…)ので軽くいきます。
誤りがあったらごめんなさいね。


<湖は慕っている>
信夫湖を隔てた遠い親戚、一樹とこさとは
お互い幼い恋心を持ちながら成長し、中学・高校とその愛を深め合う。



「ちぎれ雲の歌」同様、幼なじみの二人が永遠の愛を誓い合うまでのお話。
さすがに飽きるかと思いきや、結局読ませる力量がすばらしい。
ちなみに不安なのは作品に飽きることより、自分のボキャブラリーが枯渇することなのだが。
(↑のあらすじ、はしょりすぎか)

案の定、不良とか金持ち娘とか、ライバルらしき人物はでてくるのだが、大したことはなく、
二人の愛が発展していく過程が静かに描かれている。
「結婚」というキーワードもよりはっきりとしたものになっている。

ある意味この話は、二人の(閉鎖的な)世界を描いているのだとも思えた。
豊かな湖をたたえる静かな村が開発されていく様子が、対称的に現実を表しているのだろうか。


あたしたちは、もっと沈んだ色彩の中にいる。それは生活の上部をすべったりはねたりしているものではなく、生活とともにある。

一樹の胸にあふれるのは、愛する少女を見るよろこびだけではない。もっと陰影と奥行きのあるなつかしさがあった。



妻になる、夫になる、この自覚は
好きあうだけでは得られない深い感覚をもたらすのだ。


ラストがやや駆け足。
一樹の文学にかける思いが未来にどうつながるのかも予感させるとよかった。



<純白の季節>
噂の優等生、1学年上の西村英雄にあこがれて、錦が丘高校に入学した文子。
ひょんなことから文子は西村と言葉をかわす。



文子のモノローグの部分がおもしろい。恋する女の子の期待と打ち消し、そして妄想。
でもこの短い物語こそ、女の子ならだれでも夢見るシンデレラ・ストーリーなのだ!
ぞくっとする幸福感のあるラスト、わかるはず。


2010年2月14日読了

>次は…「初恋宣言」


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