中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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モンブラン登頂記(23):登頂証明書授与式

2010年05月05日 04時34分26秒 | フランス・スイス;モンブラン登頂

                    <モンブラン登頂のお祝い>

         モンブラン登頂記(23):登頂証明書授与式
              (アルパインツアー)
           2005年9月8日(土)。その3。

■お前は若くないのに・・・
 シャモニーの中心街をそぞろ歩きした私たちは,一旦,ホテルの部屋に戻った。
  そして,集合時間の10分前,18時50分にロビーへ降りる。もう,ロビーには,ガイド頭のピエールさんと,Sガイドが私たちを待っていた。夕食に先立って,何か儀式を行うらしい。Sさんが私たちをロビーの片隅にあるテーブルに案内する。
「これから,モンブラン登頂証明書の授与式を行います」
とSさんが,少し改まった口調で切り出す。
 事前に,登山証明書が貰えるとは聞いていなかったので,思わず「嬉しい」と心の中で叫ぶ。
 全員が,ピエールさんの周辺に固まるようにテーブル周辺に座る。
 「では,お名前を呼ばれた方から,1人ずつピエールさんから登頂証明書を受け取って下さい」
 「あら、私,山頂まで行けなかったのに,証明書頂けるのかしら・・・」
とノシイカさんが,すかさず反応する。 山頂まで行った人も,行けなかった人も,同じ証明書では,証明書の価値が少し下がるなと,私も,ちょっとばかり損をしたような気分になる。
 やおら,ピエールさんが立ち上がる。 私たちは,呼ばれた順に,ピエールさんの前に立って,証明書を頂く。証明書を手渡すときに、ピエールさんは,優しく一言,一人ひとりにコメントする。その笑顔がとても素敵である。私は,全員が証明書を受け取る瞬間を,デジカメに納める。
  最後に私の番になった。 ピエールさんが,ちょっと改まった顔になる。そして,私の顔をのぞき込むようにして,
「あなたは決して若くない・・・でも,あなたのやる気は,多くの若い人よりも勝っている(You are not so young, but your motivation is far stronger than most of younger generation・・・・)。モンブラン登頂,本当におめでとう・・・」
と言って,私と握手する。私は,すこし緊張して,登頂証明書を授与される。
 私は,このピエールの言葉に,大変な感銘を受けた。 私は,どこの山へ行くときも,心の何処かで,
 「年甲斐もなく,何時まで何をやっているんだ・・・」
と,どこからともなく非難されているような肩身の狭い思いが何時も潜んでいる。でも,ピエールさんからお褒めの言葉を頂戴した瞬間は,こんな卑屈な思いはどこかへ飛んでいた。私は,率直に,モンブラン登頂が嬉しかった。改めてモンブラン登頂に成功した喜びが,心の底から沸々と沸いてきた。






■登頂証明書
 登頂証明書はA4横置きの大きさである。真ん中にモンブラン山系が朝焼けに写真が広がっている。上部にはフランス語で,多分,証明書と書いてあるのだろう。写真の下には,私の名前とガイドの名前が,手書きカナ釘流のローマ字で記してある。山頂まで登った消防署長,フクロウ,それに私の証明書には,「Monblanc 4810m登頂」と明記されている。途中まで登った人たちの証明書には,Monblanc 4810mの部分を横線で消して,それぞれの到達点が手記入されている。

<モンブラン登頂証明書;登頂できてよかった!>

■沸々と湧き上がる感激
 登頂証明書の配付が終わったところで,ピエールさんがお祝いに持ってきてくれたワインで乾杯する。乾杯した途端に,登頂した感激がさらに熱く込み上げてくる。私は心の中で,
 「モンブランの山頂まで登れて,本当に良かった! 良かった!・・・」
と何回も何回も無言で叫んだ。この達成感。この充実感。何と表現したらよいのだろうか。とにかく,本当に嬉しい。
 しばらくの間,なごやかに雑談をする。
  ピエールさんによれば,今朝,2時にグーテ小屋を出発して,モンブラン山頂に向かった人たちは,悪天候のために,途中で引き返したとのことである。私たちは,ピエールさんの好判断で,強行軍ながら,昨日の内に,モンブラン登頂を終えていた。もし,私たちが当初のスケジュール通りに,今朝,山頂に向かっていたら,やはり確実に登頂に失敗していたろう。正に,ラッキーであった。
 そういえば,私たちがモンブラン山頂を目指していたときに,何人かのパーティを追い越した。その後,あの人たちはどうしたのだろうか。あの人たちとは,山頂だけでなく,下山途中でも,二度とお目に掛からなかった。多分,全員,登頂を諦めたに違いない。昨日,山頂までたどり着いたのは,結局,私たち3人だけということになる。そうなると,私たち3人は,凄いことをしたのだなと,改めて自分を褒めてやりたくなる。そう考えると,山頂まで達するのは,すごいことだったのだなと,自分のことながら,改めて感銘する。そして,一層,嬉しさが心の奥底から沸き上がってくる。

■魔法のお醤油
 しばらく雑談後,ピエールさんと,お別れである。 私たちは,ホテル内のレストランに席を移す。丁度,7時20分である。
 入り口近くの壁に接して私たちの予約席があった。 席に着くと,まずは白ワインで乾杯である。酒に弱い私は,平素,ほとんどアルコールを嗜むことはない。だが,今夜は違う。私も,モンブラン登頂の喜びを,みんなと一緒に,心底から味わいたかった。
 ワイングラスに注いだ1杯の白ワインで乾杯をする。グラスの中で,ピカピカと光る白ワインは美しい。一口のワインが,歓喜極まった身体の隅々まで,滲み渡るような気分になる。正に珠玉の味,美酒である。
 いよいよ食事。まずはサラダが出てくる。8角形のオシャレな大皿に,トマト,キューリ,ズッキーニなどが盛りつけてある。もちろん,フレンチドレッシングがかけてある。これまで山小屋であまり旨くない食事ばかりしてきた。今夜は,久々に料理らしい料理を味わえそうである。
 メインディッシュは,白身の魚のオイル焼きに野菜が添えてある。白身の魚は鱈だろうか? 魚の名前は分からないが,柔らかい魚肉がとても美味しい。
 「この魚にちょっと醤油を垂らしたら,もっと美味しいでしょうね・・・」
と私がくだらないことを言う。それを,聞いた大阪のTさんが,すかさず,
 「醤油,ありますよ」
と言いながら,どこからか,キッコウマン醤油の小瓶を取り出す。この手際の良さには,さすがの私もビックリした。オイル焼きの魚に,醤油を数滴垂らすと,ビックリするほど,コクのある味に急変する。この味の激変ぶりは,目を見張るほどである。
 Tさんに対して,私は,
 「この人,いつも重い荷物を持ち歩いているな・・・・あまり,山の経験がないのではないか」
と,これまで,やや懐疑的な目で見ていたが,この醤油には,脱帽。恐れ入った。 大きな切り身の魚だったが,醤油の勢いで,私は全部食べてしまった。
  「また,太るな~ぁ・・・」
とクヨクヨと悩みながらも,美味しいものを食べないでは済まされない。
  最後のデザートは,アイスクリームである。日本で普通に食べるアイスクリームの2倍ほどの量がある。これも全部平らげてしまう。



<やっと,普通のフランス料理にありつけた>

■明日の予定
 食事をしながら,ガイドのSさんから,明日の自由行動についての提案がある。もし,特に行きたいところに拘らないのならば,エギュードミディに登ったらどうかという提案である。
 一旦,モンブラントンネルを抜けて,イタリア側に入り,そこからロープウェーでエギュードミディへ登り,そこから反対側のロープウェーに乗って,フランス側に降りるコースがお薦めだそうである。そして,もし,天候が悪くて,エギュードミディの眺望がきかないようであれば,代わりにイタリアの軽井沢,クールメイヨール(Courmayeur)を観光するという案である。
 全員,もちろん異論はない・・・・と,言うよりも,モンブラン登頂に成功したのだから,後は何でも良いというのが,率直な気持ちであった。
 何時頃か良く分からないが,多分,21時過ぎに,懇親会はお開きになる。
 部屋に戻って,すぐに就寝する。
 満足感一杯の長い一日が漸く終わった。
                               (つづく)
「モンブラン登頂記」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/616b51d1da3fed44f1837b9253a941e4
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