教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

大学を複眼的に見る

2009-06-01 07:43:31 | 
大学ランキング2010 (週刊朝日進学MOOK)

朝日新聞出版

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☆偏差値とか入試難易度とかだけで大学を選ぶ時代は終わったといいたいところだが、それはそういうことではない。相も変わらず、受験生5万人ぐらい、つまり受験生の10%ぐらいには、この指標は絶大であることに変わりはない。

☆じゃあ残りの90%はどうなんだということになるが、それはむしろ幸せな時代がやってきたということではないだろうか。大学全入時代という言葉が叫ばれて久しいが、それは大学がマーケティングを行い、学生側のニーズを受け入れ、対応していこうという時代だということを意味するからだ。

☆10%の学生は、官僚日本を支えるために、量的競争に突入するが、90%は、そのレースを捨て、自分らしさを競い合う質の競争市場で生きていけるということなのだ。

☆かつては、量的競争のみの市場だった。だから、悪玉ストレスによって不登校になったり、中退したり、メンタルを傷つけられたり・・・。しかし、質的競争ではその点も自己選択だったり、ケアの環境を活用できたりする。

☆もちろん質の競争も、競争である以上、楽ではない。ただ、はやめに人から押し付けられた自己というものを捨てることができる。だから、大学を変更するのも、中退するのも、自分というものがある。しかし、その自分というものがすぐにはわからない。

☆だから、自分に合う居場所探しをすることも多い。そしてどこかに幸せの青い鳥ではないが、自分の居場所は自分の中にあるということに気づくところまで来ると、やっと平安が訪れる。

☆しかし、その平安は、人がいくら言っても聞く耳をもたんだろう。人は自分で納得するまで、人の話は聞かないものだ。だから人の話をよく聞く若者がたくさんいるシーンを見ると、不思議な気分になる。

☆最後まで人が押し付けた自分を自分だと思いこんで生きる人生も、それはそれでよい。しかし、日々平安は訪れないだろう・・・。

☆本書は83の指標で大学をランキング化している。しかし、その一方で総合ランキングはだしていない。これは片手落ち。結局総合ランキングを出さない限り、偏差値表が幅を利かすことになるからだ。

☆それにしても、大学受験の領域で、宮台真司さんや苅谷剛彦さん、香山リカさん、内田樹さん、上野千鶴子さんらが語っているのは、なんかおもしろい。宮台さんはいつものトーンではないし、逆に苅谷さんは生き生きしている。香山さんや上野さんはいつも通り。内田さんは余裕で四苦八苦している。

☆大学案内でありながら、読み物としても楽しめる。本書の編集統括をしている教育ジャーナリストの小林哲夫さんは、あの有名大学人にも問われる経営センスを見事に投射する編集をしている。

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