教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

教育再生会議失速か?

2007-12-08 10:07:07 | 文化・芸術
産経新聞(12月5日8時0分配信)によると、教育再生会議は、福田政権後骨抜き状態で、失速の可能性ありだという。

今月中の第3次報告とりまとめを目指す政府の教育再生会議が迷走している。議論が佳境を迎えているが、あまり成果はあがっておらず、「会議は結局何もやらない」と不満を爆発させる委員も出てきた。最大の目玉とされた「徳育」の教科化にも暗雲が垂れ込めており、安倍前政権の金看板だった教育再生への取り組みは福田政権への移行後、失速を余儀なくされているようだ。

★教育再生会議の委員である渡辺美樹ワタミ社長は、「検討」「配慮」「留意」といった“役所用語”ばかりが飛び交う会議にあきれてしまったらしい。官僚というのはそういうものなのだと今更ながらというところだろうか。

★道徳の時間にかわる「徳育」の教科化の議論は、評価困難ということで暗礁に乗り上げているのが、委員をイライラさせている部分もあるということだ。

産経新聞(12月7日23時52分配信)によると、

・・・第17回「教育再生民間タウンミーティング」が7日、都内で開かれた。政府の教育再生会議の前担当室長の義家弘介参院議員や委員の渡辺美樹ワタミ社長らが参加。・・・「教育基本法が改正されたのに施策に反映されていない」などと改正の趣旨を求める意見が出た。・・・

★教育基本法が改正されたのに施策が反映していないとは正確性に欠けるなぁ。テストの内容はともかく、「全国学力テスト」の実施は、施策が反映している部分。このテストはPISA型とも呼ばれ、「知識」と「活用力」の両方と自学自習について調査するためのテスト。

★新教育基本法第1条第1項には「幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。」とある。第2項には「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。」とある。

★「幅広い知識と教養」「創造性を培い、自主及び自立の精神を養う」という部分に手を打つ戦術は講じられている。

★ただし、「道徳心を培う」というところは「徳育」を教科化できないところで、施策に反映していないとはいえる。だが、それは施策の一部。全部が進んでいないわけではない。針小棒大に言う扇動家、アジテーターとしての政治屋の使命は全うしているのかもしれないが、その発言に「幅広い知識と教養」は少ししか感じられない・・・。

★たしかに、新教育基本法の第15条には、「宗教に関する一般的な教養」という文言を挿入し、「徳育」の教科化の根拠を忍び込ませているが、第2項に「 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。」という憲法の精神を再確認する項目があるのだから、施策としてすぐに動くのは困難だ。道徳と宗教の線引きをどこでするのか、その「基準」の議論が熟していないからだ。この点に関し、官僚機構は実は見事に民主主義を保守しているともいえるのだ。

★教育再生会議の「生みの親」である安倍前首相が就任前から提唱していた「教育バウチャー制度」も座礁しそうだという。しかし、これも学校選択の基準が議論されていない。アクレディテーションのないところで、「バウチャー制度」は成り立たないというだけのことなのである。

★6・3・3・4制の見直しについても議論が熟さないらしい。「飛び級」の問題もあり、一足飛びにいかないのだろう。まっしかしこれも戦後教育の時代状況と違い、産業資本主義からデジタル資本主義にシフトしている今日の時代ビジョンを前提にした議論がされないから、実情に適応した議論ができないでいるのだろう。

★いじめ、不登校が増え、それにともない通信制高校に入学生徒が増えてきている。高校1、2年で高卒資格をとり、海外放浪の旅をしながら再び大学を受験するという自前でイギリスのギャップイヤーを作り出している高校生が増えている。一昔前と違い、通信制高校はタレントや安藤忠雄さんのように早めに見聞を広げたいという意欲のある生徒に積極的に活用されはじめている。

★現行のシステムで、十分に自由な学びができるのである。ただ、そのことを知らない高校生が多いだけだ。大人も通信制高校に対し、新しいコンセプトについて知らないから、自分の子供の進路の選択肢にないことが多い。情報が隠されているのか、タブーのマスクがかかっているのかわからないが、気づいた高校生が得な世の中であることは確か。

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