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『ルイーサ』 ~こんな映画が見たい!

2010-11-05 23:18:00 | 映画&ドラマ



 このところ、映画館にもなかなか通えなかったのですが、今日は前から気になっていた『ルイーサ』(08)を観て来ました。「どん底から立ち上がる」というキャッチコピーからも、この作品が心の励みになるだろうし、これから訪れるであろう数々の困難に正面から向き合うためのヒントを内包しているに違いないと期待して、渋谷ユーロスペースまで足を運んだのですが、狼男じゃないけれど、心臓に鉛の弾を打ち込まれたかような苦しさを覚え、夏目漱石の『夢十夜』じゃないけれど、今まで何も意識しないでいられたところに、かなり重いものを背負っていてこれからいよいよ重くなっていくことを知ることとなり、心の励みどころか、逆に落ち込んでしまいました。でも、素晴らしい作品です!

 心に深い傷を負い(それが何なのかはおいおい知ることになる)、それ以来人と関わらず、自宅と二つの職場(「安らぎ霊園」の電話番と往年のスター女優宅のお手伝い)を規則正しく行き来するルイーサ。ネコのティノが唯一の友だ。
 ある日の朝、ティノが死んだ。どしゃぶりの雨の中、ティノの亡骸を入れた箱をかかえて職場に向かうと、雇い主から突然解雇されてしまう。悄然としてバイト先に向かうと、『キングコング』のヒロインを演じたこともある元女優から、自分は引退してこの家も売ることになったのでもう来なくていいと告げられた。あなたならどうする?

 自分はあとどれくらい働けるのだろう? 今まで考えたこともなかった。生涯現役のつもりだったから。でも何の現役? 体が達者だろうと定年はやってくるし、ルイーサのようにリストラされるかもしれない。そのとき自分はどうやって生きてゆくつもりなのか? 
 10年経てば彼女と同じ年齢を迎えることになる。当然ながら、ネコのクルミさんも確実に年をとっている。自分が今の職場にずっといた場合、最長でも16年後には定年に達する。その日までネコが生きている保証はないし、生きていたとしてもいつお迎えが来てもおかしくない状況だろう。今日のルイーサは明日の自分なのだ。そのことが自分の心を鉛に変えた。

 いつも自分は、映画館を出ると、観たばかりの映画を反芻しながらかなりの距離を歩く。映画を観ている時間だけでなく前後の時間が大切なのだと思うようになってから、ホームシアターは開店休業中だ。でも、さすがに今日は、足取りが重い。
 映画のテーマは孤独と老い。否応なしに「現実」を突きつけられたルイーサは、映画の中でどうやってそれと向き合い、それを乗り越えていこうとしたか?

 映画を観終わった直後は、エンディングに不満を覚えた。復職したわけじゃないし新しい職を得たわけじゃないから、何も変わっていないじゃないか、と思った。でも、本当にそうだろうか?
 今ならば、彼女の人生は変わった、とはっきり言える。ホームレスのオラシオと、何かと気を遣ってくれた管理人ホセの力を借りて、ネコのティナを荼毘に付すことができたとき、初めて彼女は声を上げて泣いた。この映画の中で二番目に好きなシーンだ。
 そう、人は一人では生きてゆけない。いや、生きていってはならないのだ。

 この言葉、実は宮崎駿監督の原点であり集大成でもある『未来少年コナン』の第2話で、コナンのおじいがコナンに言った台詞だ。おじいは続ける。「コナン、お前には仲間が必要だ。島を出ろ」
 ともすれば、他人の手を借りず自分一人で解決してしまいがちなニワトリさんも、肝に銘じておかねばならないだろう。助けを求めてもいいし、泣いてもいいのだから。

 ルイーサを演じたレオノール・マンソは、アルゼンチンで最も尊敬されている舞台女優&演出家だという。『ルイーサ』を見れば、誰もが今年のアカデミー主演女優賞は彼女しかいないと考えるだろう(ノミネートされないけれど)。オラシオを演じたジャン=ピエール・レゲラスは、撮影終了後に持病が悪化し他界した。
 そう、この作品は、ブエノスアイレスを舞台としたアルゼンチン映画だ。こうした傑作を見せられると、自分が物理的に見ることのできない傑作映画が世界に何百本と埋もれていることと、映画を見ることの不可能性を否応なしに思い知らされる。

 まだ暗い夜明け前に起き出し、ネコに餌をやり、身支度を整え、始発のバスで職場へ向かう。日が昇りバスの中が次第に明るくなっていく。安らぎ庭園の門を開け、ある場所で二輪のバラを捧げるルイーサ。ファーストシーンは一番好きな場面だ。三番目は? ・・・是非映画をご覧ください。


『ルイーサ』公式HPは、 →ここをクリック

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