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『週刊ダイヤモンド』9月2日号 - 最低賃金引き上げで3万人の雇用が失われる、驚愕の分析結果

2023-08-31 | 『週刊ダイヤモンド』より
今週のダイヤモンドのトヨタ特集はよく取材している。
本当にEVでも世界一になれるかどうか予断を許さないが、
トヨタ社内の事情が如実に分かる点で力作であろう。

生産現場で血の滲むような努力で合理化して積み上げた利益を
湯水の様に新規開発に投入する状況も興味深いが、
保守的な社風だが待遇が良いので務め続ける男性社員と、
地域に娯楽が少ないので辞めた都市部出身の女性社員の話が好対照だ。
(矢張り日本は、仕事に対する意識のジェンダー差が大きい社会である)


今回のエントリーのサブタイトルは「数字は語る」より。
東大院の川口教授らによる驚愕の分析結果で、何と
最低賃金引き上げで若年男性の就業率が悪化するという!!
具体的には、最低賃金が10%上昇すると若年男性の就業率が8%近く悪化するとか。
これは19~24歳に限定された数値だが、今回の最賃引き上げで
試算すると3万人強の若年男性雇用の悪化
に相当するとか。
最低賃金の引き上げが悪影響を与えるのは想定内だったが、
30代、40代の女性の就労抑制により労働時間が減るだろうと思っていたので
若年男性に悪影響とは驚いた。これは学生が扶養内で働こうとしたのだろうか?
この件は非常に重要である。是非とも、今後の研究を待ちたいところだ。

『週刊ダイヤモンド』2023年9/2号 (史上最強 トヨタ)


さて最も評価できないのは矢張り佐藤優氏の連載。
ニジェールでフランスが失敗したのはウクライナ侵攻のせいだとか宣う。
氏は俄仕立ての分析に走ってしまったのであり、だったらアフリカのガボンで
反仏感情が高まっていない
のはどういうことなのか、説明すべきだ。
マリやニジェールは危険なバルジ・ユースの拡大という共通点があり、
イスラム原理主義勢力はロシアの人権蹂躙よりも仏の反イスラム姿勢を嫌う。
ロシアにとって軍事支援で丸め込んで欧州を揺さぶるために好都合なだけだ。
事実、ロシアと長らく関係の深いシリアで深刻な内戦が起きたことから、
ロシアの友好姿勢が決して相手国の為ではないことは明々白々である。

この連載はビジネスマン向けということだから、本来は
ロシアの法制度や運用がいかに恣意的であるか、
外国企業にとっていかにリスクが高いかを教えるべき
であろうに。。

    ◇     ◇     ◇     ◇

東洋経済の「心理的安全性」特集はネタ切れ感が強い。。
日本企業が成長しなくなったから選ばれたテーマなのでは?
「今注目のテーマだが、小粒過ぎるし時流に乗じた打算と思惑が濃厚」
と先週書いたが、間違いではなかった気がする。

『週刊東洋経済』2023年9/2号 (「心理的安全性」超入門)


今週号での注目は86頁、慶大商の風神教授の本格的研究で、
「高所得の仕事の恩恵はほかの部門に波及しにくい」と題した寄稿。
産業別の生産性、乗数効果を分析した大規模な計量分析で、
生産性の高い産業部門では乗数効果が低く、
生産性の低い産業部門では乗数効果が高いが所得増には貢献しないと。
特に高所得層は教育支出が多いので雇用増など波及効果が乏しいとか。

となると、デジタル化を担う部門は生産性が高くとも波及効果は低い筈だし
維新が大阪で行おうとする高校無償化は乗数効果や雇用増に繋がらないだろう

(多くの市民が学外教育支出を増やそうとすることが予想されるから)
色々考えさせられる研究結果だった。。

    ◇     ◇     ◇     ◇

エコノミストの中国特集は予想通り最も本格的だったが、
矢張り元凶は人口動態である。高齢化の速度が日本以上に危険だ。
中国の2022年代半ばから2040年代の経済悪化は間違いないと確信した。
人民は早くも中国脱出を図っているようで、豪州・シンガポール・英国が人気とか。
日本もシンガポールより費用が安いという情けない理由で人気だが、
安全保障上の問題もあり増えすぎないよう日本は警戒が必要だ。
(ベトナムやインドから同数以上の受け入れでバランスを取らないと)


市場関連では矢張り市岡繁男氏が鋭い。
AIで大注目のエヌビディアは昨年の金利上昇で株価が三分の一になった
今年5月以降の上昇も金利ピークが近いと見たファンド勢の思惑買いで、
下落を見込んでいた投資家が大挙してショートカバーに走ったためだから、
再びの金利上昇傾向は株式にとってリスクが高いという鋭い分析である。

『週刊エコノミスト』2023年 9/5号【特集:中国危機】


ところで気になるのは以下の新刊の著者へのインタビュー。
差別や中傷への批判のはずがジェンダーに脱線する奇妙な著者で、
拝金主義の米国での異常な格差問題に沈黙し、
(女性も含めた)中絶反対が強固な米国社会の歪みにも沈黙、
貧乏人を排除した米国医療の病理も一切批判せず
競争激烈な米国社会で勝ち抜いた自画自讃を展開しておきながら
ソーシャルジャスティスを標榜するのはとてつもない自己矛盾と思う。。

▽ 表紙で肩露出も自己顕示欲の強さに見えるのだが

『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(内田舞,文藝春秋)


因にドクターXを監修した筒井医師は、
米国でも日本同様に女性医師がリスクの低い診療科を選好するため
外科のようなハイリスクで負担の重い診療科は移民が担っている
としている。
この内田医師がまさに格好の事例と思われ、両者の対談を期待したいところだ。
(家事育児外注で移民を安く使っていたら、ソーシャルジャスティスなど語れまい)

    ◇     ◇     ◇     ◇

次週はダイヤモンドに注目、後発だから東洋経済を上回らないといけない。

▽ あと重要なのはサブ特集、「米中逆転は幻に」だ(完璧に当ウェブログの予想通り!)

『週刊ダイヤモンド』2023年9/9号 (ChatGPT 100選)


▽ 何故この特集で赤い表紙なのかよく分からない東洋経済

『週刊東洋経済』2023/9/9号 (弁護士・裁判官・検察官)


▽ 「全世界株」で分散投資より、中国を避けてインドにすべきと思うエコノミスト特集

『週刊エコノミスト』2023年 9/12号【特集:新NISAで始める投信道場】

他は「香港の歴史教育の今 強まる愛国主義教育」かな。
香港が自民党保守派みたいになってるからそりゃ脱出したくなるだろうよ。
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