今週の『週刊東洋経済』の学校特集はいま一つだと思う。
一度、大規模にOBOGや保護者の満足度調査を行った方が良いのではないか。
大学通信や塾が勧めても所詮は「他人事」に過ぎない。
例えばマーケティングやポジショニングの上手な渋谷学園の戦略など、
横田増生氏あたりに取材すれば良かっただが。
それより、巻頭コラムの苅谷剛彦・オックスフォード大教授の寄稿が素晴らしい。
タイムリーに加計学園の獣医学部新設の問題を取り上げ、不吉な警告を行っている。
「専門性が高く、養成に時間も費用もかかり、就職市場が限定される職業ほど、
市場の失敗がもたらす損失は大きくなる。6年制の獣医学部はその最たるものだ」
市場の調整メカニズムが働きにくい獣医学部の場合は、
法科大学院と同じく就職市場でのミスマッチの影響がより大きく、
規制緩和の有効性が危うくなるとの趣旨である。
全くその通りで、そもそも公務員獣医の志望者が少ない現状で
地方において無駄なカネを注ぎ込んで獣医学部を新設するのは
ロースクール以上の失敗に繋がる危険性が極めて高い。
その危険性は、政策リテラシーがお粗末で口だけ改革しか能のない
安倍政権が権力の座に居座っている今、否応なく高まっていると言えよう。
耳新しいが興味深い「まぐろ・あじ指数」については、矢張り景気停滞を示しているようだ。
ただマグロには特殊要因があるそうなので今後も検証が必要だが、概ね正しい見方と思う。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊エコノミスト』の「未公開株100」特集は思ったより悪くなかった。
宋文州氏へのインタビューはなかなか面白かったし(余り同意はしないが)、
56頁の「売上高も調達額も「小粒」が多い 経営者のリスク回避目的の上場も」が秀逸だ。
IPOジャパン編集長の西堀敬氏がIPOの薄汚れた内情を暴露しており、
新規上場の動機には経営者の債務保証契約の解除(自己破産リスク低下)や
VCとの株式買い戻し契約(一定期間内に上場できない場合に発動)、
相続税対策(上場すれば相続資金を捻出できる)といったものがあると証言している。
道理で上場の意義すら疑われる奇妙な上場が頻発している訳だ。
この記事は金融関係者や投資家は必読と言えよう。
74頁の高橋洋一氏へのインタビューも良かった。
リフレ派の理論のお粗末さがよく分かり、これから壮大な自滅は間違いないと確信した。
「人口減少は生産性向上でカバー可能」という、
何とかのひとつ覚えのような呪文を相変わらず繰り返しており、
高齢化が進むと生産性が低下する事実すら理解できていない惨状だ。
また、「人口増減と成長率は無関係」とまるで「神州不滅」のようなドグマに固執して、
生産年齢人口と成長率の関係、高齢化率と成長率の関係、倍加年数(高齢化の速度)と成長率の関係、
こうしたまともな分析が何一つなされていない知的怠惰の報いで、
「老齢年金が成長率を下げ、育児支援が成長率を高める」柴田理論に惨敗しているのである。
苦し紛れに「ICT投資でGDP1%上乗せ」という推計を持ち出して自己正当化するしかなくなり、
氏の経済予想はこれまで散々外れてきたから、今回もお手並み拝見ということになろう。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』の「六大企業閥」特集は関係者必見、
今週はかなり話題にされたものと推測する。
ただ一般読者にとっては「柳の下の泥鰌」だったのではないか。
水道インフラが劣化しているというサブ特集の方が重要性が高い。
人口減を軽視する高橋洋一氏の威勢のいい主張とは逆に、
少子高齢化・人口減少が社会インフラ維持に重大な打撃を与えつつあるのがひと目で分かる。
◇ ◇ ◇ ◇
次週はダイヤモンドに注目、と言っても「懐かしい響き」のロジカルシンキングにではなく……
▽ 小黒一正氏のTFP(全要素生産性)分析に大いに期待している!
▽ 表紙デザインは凝っているが、東洋経済は要するに森金融庁長官+フィンテック特集
▽ 儲かると言うより、「経済低迷の象徴」と感じるシェアリング特集
丸の内の「不動産異変」がより重要かも。
一度、大規模にOBOGや保護者の満足度調査を行った方が良いのではないか。
大学通信や塾が勧めても所詮は「他人事」に過ぎない。
例えばマーケティングやポジショニングの上手な渋谷学園の戦略など、
横田増生氏あたりに取材すれば良かっただが。
それより、巻頭コラムの苅谷剛彦・オックスフォード大教授の寄稿が素晴らしい。
タイムリーに加計学園の獣医学部新設の問題を取り上げ、不吉な警告を行っている。
「専門性が高く、養成に時間も費用もかかり、就職市場が限定される職業ほど、
市場の失敗がもたらす損失は大きくなる。6年制の獣医学部はその最たるものだ」
市場の調整メカニズムが働きにくい獣医学部の場合は、
法科大学院と同じく就職市場でのミスマッチの影響がより大きく、
規制緩和の有効性が危うくなるとの趣旨である。
全くその通りで、そもそも公務員獣医の志望者が少ない現状で
地方において無駄なカネを注ぎ込んで獣医学部を新設するのは
ロースクール以上の失敗に繋がる危険性が極めて高い。
その危険性は、政策リテラシーがお粗末で口だけ改革しか能のない
安倍政権が権力の座に居座っている今、否応なく高まっていると言えよう。
『週刊東洋経済』2017年7/29号 (大学入試改革で激変 これから伸びる中学・高校) | |
耳新しいが興味深い「まぐろ・あじ指数」については、矢張り景気停滞を示しているようだ。
ただマグロには特殊要因があるそうなので今後も検証が必要だが、概ね正しい見方と思う。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊エコノミスト』の「未公開株100」特集は思ったより悪くなかった。
宋文州氏へのインタビューはなかなか面白かったし(余り同意はしないが)、
56頁の「売上高も調達額も「小粒」が多い 経営者のリスク回避目的の上場も」が秀逸だ。
IPOジャパン編集長の西堀敬氏がIPOの薄汚れた内情を暴露しており、
新規上場の動機には経営者の債務保証契約の解除(自己破産リスク低下)や
VCとの株式買い戻し契約(一定期間内に上場できない場合に発動)、
相続税対策(上場すれば相続資金を捻出できる)といったものがあると証言している。
道理で上場の意義すら疑われる奇妙な上場が頻発している訳だ。
この記事は金融関係者や投資家は必読と言えよう。
『週刊エコノミスト』2017年08月01日号 | |
74頁の高橋洋一氏へのインタビューも良かった。
リフレ派の理論のお粗末さがよく分かり、これから壮大な自滅は間違いないと確信した。
「人口減少は生産性向上でカバー可能」という、
何とかのひとつ覚えのような呪文を相変わらず繰り返しており、
高齢化が進むと生産性が低下する事実すら理解できていない惨状だ。
また、「人口増減と成長率は無関係」とまるで「神州不滅」のようなドグマに固執して、
生産年齢人口と成長率の関係、高齢化率と成長率の関係、倍加年数(高齢化の速度)と成長率の関係、
こうしたまともな分析が何一つなされていない知的怠惰の報いで、
「老齢年金が成長率を下げ、育児支援が成長率を高める」柴田理論に惨敗しているのである。
苦し紛れに「ICT投資でGDP1%上乗せ」という推計を持ち出して自己正当化するしかなくなり、
氏の経済予想はこれまで散々外れてきたから、今回もお手並み拝見ということになろう。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』の「六大企業閥」特集は関係者必見、
今週はかなり話題にされたものと推測する。
ただ一般読者にとっては「柳の下の泥鰌」だったのではないか。
『週刊ダイヤモンド』2017年 7/29号 (六大企業閥の因縁 ~三井・住友・三菱・芙蓉・三和・一勧~) | |
水道インフラが劣化しているというサブ特集の方が重要性が高い。
人口減を軽視する高橋洋一氏の威勢のいい主張とは逆に、
少子高齢化・人口減少が社会インフラ維持に重大な打撃を与えつつあるのがひと目で分かる。
◇ ◇ ◇ ◇
次週はダイヤモンドに注目、と言っても「懐かしい響き」のロジカルシンキングにではなく……
▽ 小黒一正氏のTFP(全要素生産性)分析に大いに期待している!
『週刊ダイヤモンド 2017年 8/5号 (ロジカルシンキング&問題解決法) | |
▽ 表紙デザインは凝っているが、東洋経済は要するに森金融庁長官+フィンテック特集
『週刊東洋経済』2017年8/5号 (金融大淘汰 10年後、その銀行はあるか) | |
▽ 儲かると言うより、「経済低迷の象徴」と感じるシェアリング特集
『週刊エコノミスト』2017年08月08日号 | |
丸の内の「不動産異変」がより重要かも。