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Falafel Road: Showing difficulty of collaboration with Israeli Artists?

2011-03-14 20:02:19 | パレスチナかイスラエルか
ファラフェル(falafel:פלאפל)という食べ物がある。
簡単に書くと、アラブ諸国で食べられてた豆のコロッケみたいな揚げ物、らしい。
最近、日本でもこれを出す店も増えているが、その触れ込みは「イスラエル料理」ってことになっている・・・(おまけ参照)。

このファラフェルに関して、どのようにしてイスラエルが「イスラエルフード」としての地位を与えたのか、を伝える映像作品を制作した人がいるとか。
・Israel's falafel food fight(2011年3月12日 english.aljazeera.net)

この取り組みを行ってるのは、パレスチナにルーツを持つ(Palestinian となってるが出身地は不明)芸術家だか映画監督の Larissa SANSOUR 氏。
過去には、短編映画『Soup over Bethlehem - Mloukhieh』で、政治と食事の結びつきを表現している。
・Soup Over Bethlehem - Mloukhieh (2006)(LARISSA SANSOUR)

で、2010年には『Falafel Road』という映像集を、イスラエル出身の芸術家こと Oreet ASHERY 氏とともに制作していた。
その中では、ファラフェルが、いかにイスラエルの社会で受け入れられたか、ということに触れていた。
というのも、イスラエルは、長年に渡ってファラフェルの起源であることを強調していたとか。
その取り組みの中には、ファラフェルの唄(作詞:Dan ALMAGOR 氏、作曲:Moshe WILENSKY 氏)なんてのも・・・。
↓は、ヘブライ語の歌詞と英語対訳文。
・SONG OF THE FELAFEL (hebrewsongs.com)

しかし、ファラフェルを「イスラエルのもの」とするキャンペーンは別の目的があったとか。
以下、2011年3月12日分 english.aljazeera.net『Israel's falafel food fight』から、『Falafel Road』で SANSOUR 氏がやりたかったことを語ってる部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
"We wanted to try to show the falafel taste in London. There are Israeli restaurants in London that claim they are the originator of falafel. The whole idea of the project led to complications because we had to explain why Israel wants to claim such a belonging to the land," Sansour said.

Sansour and Ashery's project attracted an international audience, and the discussions were set up so that anyone could join them.
They also issued an open call for people to send footage of their falafel experience.

"A lot of the people didn't understand what all the problems were about, but the more we talked about it the more questions they asked, and the more clear it [be]came to us how to clarify it in a better way," Sansour said.
(以下略)
---- 引用以上 ----

イスラエルによるパレスチナの占領と関係がある、か。
確かに、ファラフェルも「中東料理」の一部に含めて紹介されることが多いんだよな。
でも、そこに「ユダヤ・イスラエル料理」というカテゴリがくっつくと、急に「ある国の料理」というイメージが出てくるのよね。
その結果、国の存在自体を自明の前提条件とみなす・・・。
食事のメニュー1つでも、そこには政治性が含まれるということか。


ただ、SANSOUR 氏と ASHERY 氏の共同作業には、厳しい反対意見が出ていた。
イスラエル出身の人とパレスチナにルーツを持つ人が何かの仕事をすること自体、イスラエルによるパレスチナの占領という事実を「見えなくする(normalisation)」と考えてる人達からは特に・・・。
この件に関しては、ASHERY 氏もその危険性を認識していた。
・4 February 2010, Abu Ali(2010年1月18日 Falafel Road)

以下、2010年1月18日 Falafel Road 『4 February 2010, Abu Ali』から、ASHERY 氏がプロジェクトのメンバーと会話をする際に気をつけてることを述べてる部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
As it was just the two of us talking, it became apparent that we can easily fall into the trap of ‘a dialogue’, of what is it like for both sides, something we were always keen to avoid, as it is not an equal situation in reality.
Finding a mode of a conversation that usefully represents our position, that of a resistance to the occupation, rather than a 'dialogue based on two perspectives' is the task at hand.
---- 引用以上 ----

自分達の立場をどう表現するか、ね。
確かに、占領者と占領されてる側の「対等な対話」なんてありえないしな(苦笑)。
とりわけ、イスラエルのやってることに対して懐疑的な立場を示す作品を作る場合はなおさら・・・。

また、english.aljazeera.net の記事では、イスラエルの映像作家達が(おそらくパレスチナにルーツを持つ人達との)共同制作から締め出されてる事例も紹介している。
これに関連して、SANSOUR 氏は密かにイスラエルへのボイコット運動(BDS:Boycott, Divestment and Sanctions)の課題を述べていた。

---- 以下引用 ----
(中略)
Sansour admitted that she felt Falafel Road would be easier for a Western audience to accept, without being dismissed as propaganda, if she had an Israeli working on the project.

"People tend to think that such a project tends to re-enforce normalisation, when, in fact, it is anything but. There is a misunderstanding of the boycott , and it is a problem for Palestinians because it becomes like a witch-hunt almost. We made a great effort in our book published in 2009 to show the opposite and even mock the concept, and we make it clear that we abide [by] the cultural boycott," Sansour said.
(以下略)
---- 引用以上 ----

う~ん。
BDS 運動に関しては、反対する人達ばかりか支持してる人達にもその意味が伝わってないのかもな。
イスラエル出身の人達と共同作業を行うってのも(とりわけイスラエル国内の問題を伝える意味では)必要なのだが・・・。


もっとも、イスラエル出身の人達がイスラエル政府の政策に対し批判的な作品を作るのは違う理由で厳しくなってるようだ。
というのも、先月 Knesset の法律・司法委員会で、イスラエル国内で BDS 運動呼びかけを禁止する法案が、1回目の可決(正式に成立するには 3回可決が必要)が行われたからで・・・。
・A bill to prohibit BDS Movement in Israel(Feb 15, 2011) (2011年2月15日 flagburner's blog(仮))

仮にこれが正式に法案になったら、SANSOUR 氏と ASHERY 氏の共同作業みたいなことをする人が減りそうな悪寒。
少なくても、イスラエル出身の人達にとっては大きなプレッシャーになるし・・・。


おまけ:その1例としては、Walkerplus に掲載された以下の記事か。
・東京で人気のイスラエルフード「ファラフェル」って?
2010年10月12日 東京ウォーカー
(2010年10月12日 Walkerplus)

以下、2011年10月12日分 Walkerplus『東京で人気のイスラエルフード「ファラフェル」って?』から、『DAVID'S DELI』の紹介文を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
ユダヤ&イスラエル料理店「DAVID'S DELI」(東京・白金高輪)

同店は、東京でも数少ないユダヤ&イスラエル料理店。
約50種の伝統的な中東家庭料理が楽しめる店だ。
ここの「ファラフェル」(820円)は、ボリューム感があるものの、ほどよく香辛料が効いているので最後まで飽きさせない味わい。
コロッケよりも軽~い食感で食べやすいのもポイントだ。
また、ふんわりとしたピタと呼ばれるパンに、数種の野菜を一緒に挟み込んで食べる「ファラフェルピタ」(650円)は、テニヒという白ゴマドレッシングを使用し、本場の味をそのまま再現!
腹もちGOOD&ヘルシーで、新しいもの好きの日本人女性からも人気を集めているのだ。
(以下略)
---- 引用以上 ----

上の文章からは、ファラフェルの歴史的文脈はきれいに消去されている。
まぁ、この手のガイドブックでそれを求めるのは無理だけど・・・。


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