mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

ひねもすのたり

2014-10-30 20:25:01 | 日記

 抜けるような青空。風もなく、暑くもない。空気がすきとおるような感触。見沼田んぼの調整池を歩く。芝川手前のグランドでは、ゲートボールの大会であろうか、放送器具を使ってゲームの案内をしながら、お年寄りが集っている。土日にはいつも、小学生や大人たちがソフトボールをしたりサッカーをしたりしている他のグランドでは、プラスティックのピンポン玉のような球をつかったゴルフ様のゲームをしている。

 

 芝川では釣り人が糸を垂れている。川の水は多く、ゆったりと流れている。東京湾が満潮なのであろうか。水鳥はいない。陽気に誘われて外出したのであろうか、散歩している人、自転車に乗って川縁を走る人も、ゆるゆると進む。

 

 調整池の茅の背が高くなっている。ススキがそれよりも背伸びして穂を揺らしている。周回路へ入ると、「草刈り作業中」と書いた看板をおいてある。反時計回りにすすむと、大型のトラックと買った草を収納するゴミ回収車が止まっている。たったいま刈り取ったばかりの草を収納し終えて次の地点へ移動しようとしている。

 

 池の上をダイサギがふわりふわりと優雅に飛んでいく。池の中にもところどころにぽつんぽつんとシラサギの姿が見える。双眼鏡でのぞくが、ダイサギだかコサギだか、わからない。アオサギがいる。コガモもいる。カルガモが群れている。ずうっと遠方の枯れ木に、ウが何羽も止まっている。ヒヨドリがにぎやかに声を立てる。ビデオカメラをもった人が池の面をみながらやってくる。何かいるのだろうか。そちらに視線をやってみるが、見当たらない。カラスが高圧線に止まって声をあげる。

 

 スコープを覗いている人がいる。「何かいますか」と尋ねる。「いや、少ないですね」と応える。「ハクチョウは、まだ来ていませんか?」と聞くと、「来ないかもしれませんね」「どうして?」「水を多く入れているんですよ。ススキの穂がとぶのがきらわれてね。それを抑えるために水を多くしているんですよ」。たしかに、以前に比べて池の水面の占める割合が広い。ハクチョウは去年2羽だった。その前の年は6羽いた。来てもすぐにどこかへ飛び去ってしまうのだという。

 

 すぐ近くの枯枝に何かが1羽来て止まる。カシラダカだ。脇に来ていた一人が「向こうにアカモズがいた」と、私がこれから行こうとする方を指さす。「ありがとう」と礼を言ってそちらへ歩く。キョッ、キョッ、キョッとモズの鳴き声が聞こえる。だがどの木の先端にも姿が見えない。向こうからスコープをかついだ人が来る。「アカモズがいたって聞いたんですが……」と聞いてみる。「えっ、そうですかあ。どこだろう」と、むしろ尋ねたい顔になる。

 

 さらに向こうにスコープを据えて覗いている人がいる。あまり熱心に覗いているが、池の水面の方だ。黙って後ろを通り過ぎる。4人ほどのお年寄りがシートを敷いて、何かを食べながら、おしゃべりに興じている。愉しそうだ。調整池の外側の建築資材現場から、ガンガンガンとショベルカーで岩でも壊しているのであろうか。まだ百メートル以上離れているのに、うるさく響く。

 

 双眼鏡をもった人が「何かいました?」と聞く。「アカモズがいるって聞いたんですが」というと、「えっ、アカモズ? モズより大きいやつですよね。いるのかなあ。」と驚いて不思議そうな顔をする。と、向こうの枯れ木に何かが止まった。「ジョウビタキのメスですね」とその方はいう。私は双眼鏡を覗いて初めて、ジョウビタキだと確認する。

 

 ふたたび芝川縁に出る。調整池の水面が広く良く見える。カンムリカイツブリが2羽、かわるがわるに潜っている。その向こうにカイツブリが何羽もぷかぷかと浮かんでいる。「ひねもすのたりのたりかな」という蕪村の句は春の海だったなあ、と脈絡なく思う。最初に出遭ったビデオカメラの人とまた出逢った。「なにかいました?」と聞くから、「アカモズがいるって人がいましたが、わかりませんでした」という。「カンムリカイツブリ、みました?」と聞く。「ええ、ありがとう。見ました」と応じたが、やはり鳥の数が少ないとこの人も思っているようだ。いつもなら見かけるベニマシコも姿を見せない。

 

 のたりのたりと芝川沿いの来た道を通って、井沼方公園を抜ける。シャボン玉を母親が吹いて飛ばす。それを小さな子どもたちがきゃあきゃあいいながら追いかけてつかもうとする。シャボン玉は手が届くところで、風圧を受けてふうわりと逃げる。やっと歩き始めたばかりというような子どもまでが、転びそうになりながら走り回る。中には、飛んでくるシャボン玉をじっと見つめている子もいる。とても哲学的な顔つきをしている。見ているだけで、気持ちがゆったりとのびやかになるようだ。家に戻る。12時半。約2時間、11483歩。いい散歩であった。


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