mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

スーパー老人の編笠山

2016-09-29 11:00:19 | 日記
 
 「いや、皆さん強いね」と、先達を務めたkzさんが感想を漏らした。昨日、八ヶ岳の南端に位置する編笠山に登った。このところの天候は、日々移り変わる。当初の予報では「雨、降水確率は80%」だったが、3日前には「曇り、晴れ、降水確率は20%、降水量は0mm」となり、雨雲の次々とやってくる隙間を縫うように編笠山の天候はよくなって行った。そうして昨日、小淵沢駅に降り立った私たちを迎えたのは「曇り」。まあ、まずまずの天気と言わねばなるまいと、登山口へと出発した。
 
 観音平の登山口の駐車場には、すでに10台を越える車が駐車している。皆さん山へ入っているのであろう。用意を整えて歩きはじめたのは9時57分。標高1580m。編笠山は1524mだから、今日の標高差は950mほど。まあちょっときつい日帰りというところか。コースタイムは、5時間半ほど。ネットで見ると、7時間というのもあったし、kwrさんの話では4時間ともあったそうだから、みなさんそれぞれに自分の体力に応じて、この山を歩いているようだ。
 
 ササ原の敷き詰めた樹林のなだらかな道を登る。kzさんが、彼に続く後期高齢者・otさんの調子を見ながら、先導する。コースタイム1時間のところ50分足らずで「雲海」に着く。蒸し暑い。水を補給し、体温調節をして先へすすむ。少しばかり傾斜が急になる。途中で下ってくる50歳代の単独行者に出逢う。聞くと朝6時に駐車場を出発し、下山しているという。ということは、5時間余でここまで。下まで5時間半~6時間の行程になる。まあ、そんなものか。シラカバとカラマツの樹林が取り囲む。カラマツははや、葉が色を変えて緑の多い中で際立ちはじめる。ナナカマドの実が赤く染まり、まだ色の変わらない葉に先駆けて秋模様を醸し出す。トリカブトが花をつけ、ちょうど花ごろのようだ。
 
 やはりコースタイムより10分ほど早く「押出川」に着く。山頂へ向かうルートと青年小屋へ山腹をトラバースする道との分岐だ。標高2100m。1時間半で標高差500mを歩いた。いや、いいペースだ。11時35分。少し早いがお昼にする。
 
 お昼を食べていると、青年小屋の方から一組のペアが来る。彼らはトラバース道を通って青年小屋に泊まり、そちらから登り下って戻って来たそうだ。また一組の、アラフォーくらいの若いペアが下山してくる。ずいぶん早くから登ったのか? と聞くと、「山頂手前まで行ったが、雲の中。雨も落ちてきたので、しょうがないと思って下って来た」とにこやかだ。そうだよね、これくらいの軽い山歩きを、年寄りも見習わなければいけないなと思う。「泊まるんですか?」と聞くから、「いや、日帰り」というと、「すごい!」と女性の方は驚いた声を立てた。ほかにも何人か単独行者が降りてきた。泊まっていた人半分、日帰り半分というところ。
 
 少し早めにお昼を切り上げて、11時57分に出発。ここからの登りは、岩の重なりを右へ左へ躱しながら、身体を引き上げる急登。途中で雨が大粒になった。雨着をつけ、滑りやすくなった岩に気を付けて、標高を稼ぐ。お昼を食べて体が重くなったのか、ペースは遅くなる。ミズナラとコメツガとシャクナゲが生い茂るなかを、ルートは岩を積み重ねて、ぐいぐいと角度を急にする。なんとなく山頂近くなったと思った頃、ど~んごろごろと雷が鳴る。寒冷前線が頭の上を通過しているようだ。まいったなあ、これで山頂だと、雷を避ける場所がない。青年小屋の方へ下るルートは大岩の積み重なりを下るから、雷はこの上なく危ない。とすると、山頂からこのルートを引き換えることにするか、と算段をする。だが、私たちが山頂部に着いた頃には前線は通り過ぎ、雨も小やみになっていた。だが雲は取れず、山頂の標識もすっかり、雲にまかれている。13時36分。押出川から1時間20分のところを20分余計に掛けている。出発時点からいうと、差し引きコースタイム通りということになる。まあ、平均古稀年齢の登山グループとしては、まずまずではないか。
 
 雨は落ちていない。寒いというほどではないが、身体が冷えないうちに下山にかかる。青年小屋の方へ下る。しばらくはハイマツの樹林の切れ目に敷きつけたような小岩の段差を、バランスをとりながら、降りる。「まるで、妙高山の胸突き八丁のようだね」と、後ろからくるmrさんに声をかける。2年前彼女は、その下りで足を痛めたのであった。いまは順調に、otさんの後ろについて来る。強くなった。2年前のような危なっかしさがない。青年小屋までの標高差が80mほどになった辺りから、ハイマツはなくなり、大きな岩ばかりが重なっていて、その間を足場を見極めて伝って降る。otさんにはkhさんがついている。私は、mrさんとそのあとから下ってくるmsさんをみている。といっても、これといって何かするわけではない。通りやすいルートを私が通り、彼女たちはそれを辿るというわけだ。結構ペースも早い。
 
 14時20分、青年小屋に着く。先着組は小屋の中に入って、コーヒーを飲んで、身体を温めている。なるほど、賢い。後着組は小屋前のベンチに腰掛けて、kzさんやkhさんの入れくれたコーヒーを回し飲みしている。温かいものが気力を回復させる。14時37分、青年小屋を出発する。トラバース道ではあるが、なだらかというわけではない。岩と樹林と水の溜まった登山道を、バランスをとりながら、先へすすむ。このトラバース道の途中に、岩も木々も苔生した深山幽谷の気配を湛える場所があった。「屋久島のようだね」とkhさんが嘆息をする。そう、シャクナゲやコメツガの森に囲まれ、言葉を失うような幽玄な空気が漂う。速足で通り過ぎるのが惜しいように思った。皆さんはだいぶへこたれたようであった。押出川まで私は30分と読んでいたが、大間違い。1時間15分かかった。どうしてこんな間違いをしたのであろうか。
 
 押出川までの登路は1時間半。下りは1時間10分と、皆さんに声をかけ、最後の頑張りを期待した。kzさんに先導された人たちは、黙々と彼について行ったのであろう。5時には駐車場に着いたというから、1時間5分で、降っている。otさんは疲労が溜まって、それほど早くは降れない。雲海を過ぎたあたりで用意のストックを出して、身体を支えながら、慎重に、しかし先行者たちに追いつこうと、手早く足を運ぶ。傍らでみていると、しんどそうだ。「いや、年には勝てないね」と若い人たちの健脚ぶりを讃える。彼自身、後期高齢者になるとともに、自分の脚が衰えるのに気付いてきたようである。
 
 たしかに、今日の編笠山は、7時間を超える歩行になる。4~6時間を初級者、6~8時間を中級者、それ以上を上級者と見てきた私も、山によって、人によって、階梯は異なると見直さなければならない。otさんも、4~6時間程度は、いまでも大丈夫のようだ。これからは、長い距離・時間の歩行は、区切りを入れればよい。何よりも、いつまでも歩く気力と体力を保つように日々を送り続けること。そんなことを話しながら、着実に下って行った。駐車場に着いたのは、皆さんより15分ほどの遅れであったらしい。もう少し遅くなれば、ヘッドランプが必要であった。もっと早く、青年小屋辺りで、早着組と後着組を分ければよかったかなと、私は反省していたのである。
 
 小淵沢駅に着いたのは6時15分前。後続の車のnaviが壊れて、途中で道に迷ってしまったために、そちらは6時15分頃になってしまった。「朝4時ころに起きて、この時間まで行動するなんて、すごいですね。」とkzさんは褒める。彼は、ともに下った人たちのほとんどが自分より若いと思っていた。「いやいや、皆さんあなたより年配ですよ」というと、「そりゃあ、もっとすごい!」と絶賛の体であった。いやはや、お疲れ様。

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