折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

ブラームスは哲学~「オーディオ談笑会」主宰者Kさんのブラームス観

2009-06-25 | オーディオ談笑会
先日、今年2回目のオーディオ談笑会が開かれた。

この会の目的は、主宰者Kさん邸のオーディオ・ホールに鎮座するスピーカーの名器「タンノイオートグラフ」でそれぞれが持ち寄った音楽ソースを聴くことなのだが、その合間にお酒を酌み交わしながら、みんなで音楽やオーディオの話や日常生活の話やら、四方山話を「わいわい、がやがや」ざっくばらんにしゃべりまくるのもまた楽しみの一つであり、その雰囲気が何とも魅力的で好ましのである。

普段、余り「会話」のある生活をしていない?せいもあってか、何時もこの席は盛り上がって話が終わらずに、リスニング時間に食い込んでしまうことがしばしばである。

                            
              メンバーの一人Iさんが持参した「自作」のパワーアンプが、ブラームス論議と
              並んで話題になった。


今回はそんなおしゃべりの中から、主宰者Kさんの「ブラームス観」についての話を紹介したい。

この話の仕掛け人は、小生。

テーマは、ブラームスの交響曲の難解さについてである。

「コンチェルトや小品では、とても親しみやすい旋律がいっぱいあるのに、交響曲になるとどうしてブラームスは、ああまで『無愛想』で『取っ付き難く』、『面白み』がないんだろう」と小生が切り出す。

何回聴いても理解不能なブラームスの交響曲に辟易としている小生が、ちょっと無謀な議論を仕掛けた次第である。


すると、こよなくブラームスを敬愛するブラームス信奉者のKさんが、熱く、しかし、理路整然とブラームスへの思いを語り始めた。

先ず、ブラームスは決して、「無愛想」で、「取っ付きにくく」、「面白みがない」とは思わない。そう思うんであれば、それは、まだブラームスの音楽の聴き方が足りないんじゃないか。

ブラームスの音楽、特に交響曲は言わせてもらえれば、「哲学」なのよ。

自分の生き方、生きざまといった根源的な問いかけに対する啓示とか示唆とかなどを与えてくれる、それが哲学だと思うんだ。

ブラームスの交響曲を聴き込んでいけばいくほど、聴き手の魂を揺さぶる何かをそこに感じることができるんだ。

その「何か」なんだけど、日常生活では滅多にない心底感動する自分という存在を実感させてくれることではないかと思っている。

そして、聴く時の心境によって、その実感に強弱が生じるので、何度聴いても常にフレッシュなんだ。

哲学することの原点は、どうもここらにあるのでは、といつも思うんだ。

だから、ブラームスの交響曲を聴く時は、新たな自分を発見するような感覚で哲学書を読む気持ちになって向き合う覚悟がいると思っているし、何時もそういう気持ちで聴いているんだ。

言葉を選びながら、訥々と話すKさん。

その言葉は、ブラームスを畏敬し、その音楽を心から愛してやまないKさんの心情が籠っていて、これは「筋金入り」で小生などとても太刀打ちできないと早々と「白旗」を上げた次第である。

そういう経緯もあってか、今回のプログラムの最後に聴いたブラームスの交響曲第1番は、ピエール・モントゥー、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の名演とタンノイオートグラフの力強い音と相まって、小生の耳にいつもと違って聴こえたのであった。


             
             談笑会の「トリ」を飾ったブラームスの交響曲第1番ハ短調Op・81
             ピエール・モントゥー指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
             ブラームスを生涯敬愛し続けたモントゥーが、その晩年に到達した至高の名演
             と言われている。           
           


【当日試聴した曲目と演奏者】

・ 高橋竹山その2から 津軽三味線即興曲<岩木>
 (演奏:三味線 高橋竹山)
・バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲から第1楽章
 (演奏:イッツアーク・パールマン、ピンカーズ・ズッカーマン(ヴァイオリン)、ダニエル・バレンボイム指揮、イギリス室内管弦楽団)
・マル・ウォルドロン マルー1から「イエスタディズ」
 (演奏:マル・ウォルドロン(ピアノ)他)
・ビル・エバンス ホワッツ・ニューから「ストレート・ノー・チェイサー」
 (演奏:ビル・エバンス(ピアノ)他)
・ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界から」から第2楽章
 (演奏:ラファエル・クーベリック指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽
  団)
・バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番から第1、第2楽章
 (演奏:アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン))
・バッハ プレリュードとフーガからフーガ第2番
 (演奏:ジョン・ルイス(ピアノ))
・ムソルグスキー 展覧会の絵~超絶のチェロ軍団
 (演奏:ラハティ交響楽団低弦アンサンブル)
・ブラームス 交響曲第1番全曲
 (演奏:ピエール・モントゥー指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団)