それが、カメラを持って何かを撮りに行く
という最初のことだったと思う。
１泊の旅行は
M君の分刻みのスケジュールによって
無事に終了し
あっという間に帰り道になって
何だか余韻もへったくれもなかった。
食事はほぼ、駅の立ち食いそばで
夜もカップラーメンを買って
フロントでお湯をもらって食べるという
中学生の節約旅だった。
そのくせ、お土産には
埼玉銘菓の五家宝を買って帰るのが良いと教わって
五家宝というお菓子を初めて知った。
荒川を渡る鉄橋で貨物列車を撮り
廃線になった東武熊谷線の気動車を撮り
スナック菓子を食べながら
カードゲームぐらいしたかと思うが
帰り道の松戸駅のホームで
残っていたフイルムを取り切ってしまおうと
鞄からカメラを出して撮ったら
冬の夕暮れの寒さで
レンズが曇り、紗がかかったような
写真になったのを一番覚えている。
