-写真の部屋-

奥野和彦

谷戸

2023-05-18 00:09:14 | 写真


昨日、最後にうっかり
あの子という書き方をしたが
同い年の男の子で後に悪友となる。

大人になって谷戸という言葉を覚えたら
まさにその一帯は谷戸であった。

丘陵地の高い位置に家があって
低くなったところに田んぼがある。
水は高い所から低い所へ流れ
そこが潤されるから。

幼稚園に上がる前の
子供の長ぐつを履いた僕たちが
親たちに叱られるのを分かっていながら
薮の崖を降りて田んぼへ行く。
湿地であり、小さい子供だけで行くには
確かに危険だ。
場所を誤ると底無しのようになっていると
おどされたが、実際にぬかるみにはまって
長靴が脱げてしまうとそれを
泥から引っ張り出す力もないし
裸足で崖は戻れないしで
どちらかがベソをかきながら
大人を呼びに行く。

僕らがそれでも
田んぼに下りたかったのは
カエルの卵を見たり、用水路に小さい魚が泳いでいるのを見たり
蛇口でもない、水道でもないのに
岩だか石だかの切れ目から綺麗な水がシュッシュッと
吹き出しているのを見に行きたかったからだ。