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流出雑記 

小梅の春

2008年03月28日 | Weblog
私は猫のサカリがどんなものかよく知らなかったのだが、突然何かに憑かれたかのような豹変ぶりに驚いていた。
寝てる間以外はほとんど落ち着かず、いつもよりごろんごろん甘えてかわいいが、ダックスフンドみたいな姿勢で1日中唸っている。
植物が一気に新芽をふき、つぼみを膨らませるのと同じことが起こっていた。
小梅のからだに春が入って来たことがよくわかる。
春は力の強い、強引なまでの歓喜だと思った。

本やネットで調べると、交尾の相手がいない場合のサカリの期間というのは猫にとっては結構なストレスになるので、避妊手術をすることを勧めているのだが、そうは言っても気の進むことではないので踏み切れずにいた。

人間の都合で自然の摂理である生殖能力を奪う事などしていいはずがない という意見をもつ人もいるし、飼う ということ事態がそもそも不自然なのだから、その状況下で考えれば去勢・避妊はすべきだ という人もいる。


夜中になるとさらにエスカレートし人間の赤ちゃんの鳴き声で叫び、周辺に住む猫の声も聞こえてくる。
そしてついに明け方近くうちの玄関のすぐ前まで何処かの猫が来て、家から出た事の無い小梅とドア越しに呼び合っていた。
ドア越しの交信を目撃してしまい、せつなかった。
でも開けることはできない。
ごめん  

その日の内に動物病院に問い合わせ、すぐにできますということだったのでかかりつけの獣医さんにお願いした。
赤いキャリーバックに小梅を入れてダーリンと自転車で病院へ。
天気はよいがまだ肌寒い。

獣医さんは狸に似ている。
バックから出され、体重を量られ、鎮静剤を打たれてすぐに緊張した様子から弛緩し小梅はふにゃんとなった。
手足を紐で括られている。
後はしておきます  と言われ、退院は明日になるが、終わったら電話をくれるという事で おねがいしますといってふたりでそろそろと病院を出た。

帰り道、近所の神社のまだ咲かない桜並木を通りながら、これが正しい選択とも言えないし、しないままほうっておくことが正しかったとも思えない、と話しながら歩く。
ずっとひっかかり考え続けるしかない とふたりとも思った。
家に帰り着き、お昼を済ませて程なく手術が終わったと連絡が来た。おどろくほど早い。
血尿が出ていたそう。家ではなかったので恐らく環境が変わったり怖かったりのストレスだろうということだった。

翌日、私は朝から夕方まで滋賀県で仕事だったので病院へはダーリンが迎えに行く。
休憩の度にメールでどうやどうやと送って届いた写真を見て少し安心する。
でも元気が無いらしい。
昨日の今日だしなあ。

帰宅する。
小梅は二階のいつも寝てるベッドの場所にいた。
ピンクのおなかにばんそうこ貼られて。

しゅんとおとなしく、触ったらとても静かで 静まり返っていてまるで留守のようだった。
つい昨日までざわついて仕方のなかった充血が急になくなったのだから、この落差を埋めるのには少し時間がかかるだろう。
春がからだから居なくなった。
季節をひとつ落とした小梅のグレーの色合いがいつもにまして濃く見えた。

手術後3日ほど経つ。
食欲がないけど、少しずつ元気になり始めている。

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