閉幕まであと2日と迫った新潟万代島美術館で開かれている「ミュシャ展 パリの夢、モラヴィアの祈り」。ギリギリになって足を運ぶ。
アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)は、言うまでもなく19世紀末を代表する画家・イラストレーターであり、誰でも一回は目にしたことがあるアール・ヌーヴォー様式の巨匠。
今回の展覧会は、ミュシャ財団の全面協力のもと、ポスターをはじめ、油彩、パステル、宝飾品、素描、立体物、写真、そしてミュシャに直接関わりのあるプライベートな品々など240もの作品を展示…という力の入ったもの。
ミュシャと言えば、パリ時代の美人画系が有名というか、一般的にはそれしか知られていない訳で、私もお花をバックに美人画…、良く飽きもしないで同じような売れ線の作品ばかり書いたものだよなぁ…というイメージしかなかったのだが、今回の展覧会で印象に残ったのは、晩年、故郷チェコに戻って、スラブ民族の誇りと歴史を描いた大作スラブ叙事詩の習作群。
大国に挟まれ翻弄され続けたチェコ、実際、ミュシャの死後もナチス・ドイツに占領され、またソ連に占領され、プラハの春も体験し、また国が分裂…と大国のエゴに翻弄され続けた訳だが、そのような不安定な小国だったが故に、民族の誇りを描かざるを得なかったミュシャの情念がビシビシ伝わってきた次第。
ただ、来られていた方の大部分(95%は女性。なんでこんなに女性ばっかりなんだ?)はパリ時代の有名作に釘付け、モラヴィアの祈り編は足早にスルー…というか、閑散としていたのは複雑な気持ち。軽やかなディベルメントは大受けしたものの、後期の複雑な作品は不人気だったモーツァルト、又はベートーヴェンの後期弦楽四重奏って普通聞かないよね…と同じようなものか…と、いろいろ考えてしまった。
いずれにしろ力の入った展覧会、新潟開催はあと一日しかないが、興味のある方は是非足を運んで欲しい…と思う次第である。