沖縄の公認会計士佐藤晃史のブログ

沖縄で医療機関支援、事業承継、相続対策に強い会計事務所を経営している佐藤晃史のブログです

自社株を資産管理会社に譲渡した事例

2012-11-28 09:16:23 | 事業承継
今回は、事業承継対策の一環として、会社オーナーが保有する自社株を後継者である長男が設立した資産管理会社に譲渡する事例をご紹介します。

事業承継対策として、自社株を後継者である子供に渡す手段として最も多く用いられる方法は、親子間での贈与です。
自社株の評価額が低い(時価総額で5,000万円以下程度)であれば、特別の対策なしに、毎年500万円分の自社株を子供に暦年贈与することで問題は解決します。
毎年の贈与税は53万円なので、自社株の移転コストは53万円×10年間=530万円になります。

後継者である子供は時価総額5,000万円の自社株を530万円のコスト(税率10.6%)で取得できるのですから、ベストではなくてもベターではないでしょうか。

さて、今日の本題です。

この事例の会社(A社)の自社株の時価総額は2億円(オーナー社長が100%所有)もあるため、暦年贈与作戦では対応できません。

そこで、後継者である長男の100%出資で資産管理会社を新設してもらい、当該資産管理会社にオーナー所有の自社株を順次購入してもらうことにしました。

買取資金については、オーナーが所有してる収益物件(譲渡価格2.5億円、毎年2,500万円のキャッシュフローを生み出す)を資産管理会社会社に譲渡してもらうこと
で生み出しました。
なお、資産管理会社は2.5億円をA社から借入れ、元本は据え置きとして、利息2%のみを支払うことにします。

以上の仕組みにより、資産管理会社は毎年2,000万円程度のキャッシュフローを得られることになります。
資産管理会社は、このキャッシュフローを利用して、オーナー社長から、自社株を取得します。

上記の例では、時価総額2億円の自社株であっても、資産管理会社が毎年2,000万円分をオーナー社長から購入することができるため、計算上では10年間でオーナー社長保有株式
の全部を資産管理会社が取得できることになります。

つまり、10年後には、A社は長男がオーナーの資産管理会社の100%子会社となるため、長男が実質的にA社のオーナーになるわけです。
なお、資産管理会社とA社の2社を持つ意味がないのであれば、資産管理会社とA社を合併することで、長男はA社の株式を100%取得することもできます。

オーナー社長は、時価2億円の自社株を現金2億円に代えることになりますが、株式譲渡に係る課税が分離課税20%で済むことから、ベターな選択ではないかと思います。

さらにオーナー社長の節税を考えるなら、現在もらっている役員給与を大幅減額して、毎年の株式譲渡代金2,000万円を役員給与に代わる生活費として活用するといいでしょう。

相続対策としても、何もしなければ2億円の価値の相続財産が現金に代わることで、10年間で消費され、財産そのものがなくなりますので、大変有効な対策といえます。

消費税率アップと工事請負契約

2012-11-15 10:01:25 | 消費税
平成26年4月1日以降、消費税率は8%に、そして、平成27年10月以降は10%に上昇することが予定されていますが、住宅、アパート、工場等の新築を予定されている方にとっては、いつまでに工事請負契約を締結して、いつまで引き渡しを受ければ、現行の消費税率となるのかが気になるところです。

結論としては、引渡時期には関係なく、平成25年9月30日までに請負契約を締結した場合は5%、平成25年10月1日から平成27年3月31日までに請負契約を締結した場合は8%の税率が適用されます。

請負契約による設備投資を検討されている方は、平成25年9月30日までに請負契約を締結すれば、消費税増税の影響を受けることなく設備投資ができますので、早めに検討を始めてください。

ただし、マンションや建売住宅の分譲契約については、建物の売買契約であり工事の請負契約には該当しないので、上記の規定は適用されず、引渡が税率改正前に行われた場合に限り、改正前の税率が適用されます。

同族会社株式の譲渡(法人・個人間)時の注意点

2012-11-13 16:38:21 | 法人税
同族会社の同族個人株主から、関係法人へ株式を譲渡する場合及び逆に関係法人から同族個人へ譲渡する場合における注意点は以下の通りです。

1.個人から法人へ譲渡する場合

(1)高額譲渡
 時価100、原価50、譲渡価額200の場合は以下のようになります。
 
 A.個人(役員の場合)
 譲渡所得の計算は譲渡価額と原価の差ではなく、時価100と原価50の差額50となります。
 加えて、譲渡価額と時価の差額100(200‐100)は給与所得となり、所得税等が課税されます。
 
 B.法人
 取得価額は譲受価額の200ではなく、時価の100となります。
 加えて、譲渡価額と時価の差額100(200‐100)は役員給与になります。この役員給与は全額損金不算入となりますので法人税等が課税されます。

(2)低額譲渡
 時価150、原価50、譲渡価額70の場合は以下のようになります。
 
 A.個人(役員の場合)
 譲渡所得の計算は譲渡価額と原価の差ではなく、時価150が譲渡価額とみなされて、時価150と原価50の差額100となります。
 なお、譲渡価額が時価の1/2以上であれば、みなし譲渡の適用はなく、通常通り、譲渡価額-原価が譲渡所得になります。
 
 B.法人
 取得価額は譲受価額の70ではなく、時価の150となります。
 加えて、譲渡価額と時価の差額80(150‐70)は受贈益となり、法人税等が課税されます。

2.法人から個人へ譲渡する場合

(1)高額譲渡
 時価100、原価50、譲渡価額200の場合は以下のようになります。
 
 A.個人(役員の場合)
 所得価額は譲受価額の200ではなく、時価の100となります。
  
 B.法人
 株式譲渡益は譲渡価額と原価の差額ではなく、時価100と原価50の差額である50となります。
 加えて、譲渡価額と時価の差額100(200‐100)は受贈益となり、法人税等が課税されます。

(2)低額譲渡
 時価150、原価50、譲渡価額70の場合は以下のようになります。
 
 A.個人(役員の場合)
 譲渡価額と時価の差額80(150‐70)が給与所得となり、所得税等が課税されます。
  
 B.法人
 株式譲渡益は譲渡価額と原価の差額ではなく、時価150と原価50の差額である100となります。
 加えて、譲渡価額と時価の差額180(150‐70)は役員給与となります。この役員給与は全額損金不算入となりますので法人税等が課税されます。

以上の通り、同族会社における法人・個人間の株式譲渡の税務は難しいため、譲渡を検討されている場合は、事前に顧問税理士にご相談されることをお勧めします。

アパート建設による消費税の還付についての誤解

2012-11-06 15:03:12 | 消費税
平成22年の消費税改正により、いわゆる「自動販売機スキーム」を活用した、アパート建築費に係る消費税の還付は受けられなくなったと言われています。

この「自動販売機スキーム」というのは、アパート事業を新規に始めようとする場合に、まず、建設現場に「飲料の自動販売機」を設置して、課税売上の実績を上げた上で、「消費税課税事業者選択届」を提出します。そして、建物の完成を年末に完成させて、入居を年始にすることで、アパート建築に係る消費税全額の還付を狙うわけです。
ただし、当該アパートは調整対象固定資産に該当し、このままでは、3年後に還付額を払い戻すことになるため、建物が完成した翌年に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、還付の返還を免れるようにしていたわけです。(課税売上が1,000万円超ある場合は「消費税簡易課税選択届出書」を提出することで同様の効果あった)

ところが、平成22年度の消費税の改正により、免税事業者が「消費税課税事業者選択届」を提出した場合は、その後3年間は免税事業者にもどること及び簡易課税を選択することが禁止されました。これにより、アパートは調整対象固定資産に該当し、初年度に還付を受けた消費税は3年後に返還を求められることになりました。

ここで、注意が必要なのは、免税事業者が「消費税課税事業者選択届」を提出した場合という文言です。つまり、もともと課税売上高が1,000万円超5,000万円以下で、非課税売上がない事業者の場合は、事業年度末にアパートが完成するようにすれば、アパートの建築費にかかる消費税の全額還付を受けることができます。そして、アパート取得年度末までに簡易課税の選択届出を提出し、簡易課税に移行します。

簡易課税適用の場合は、調整対象固定資産制度の適用はありませんので、還付金の3年後返還の必要もありません。

以上からわかるように、アパート建築に係る消費税の還付は受けられなくなったのは、限定的なケースであり、原則的には還付可能なのです。

役員社宅を活用していますか

2012-11-05 08:34:49 | 法人税
会社オーナーの自宅を新築する場合に、個人で建設して所得税の住宅ローン控除を受けた方が良いか、もしくは法人で建設して役員社宅として、社宅に係る経費を法人税上の損金にする方が良いかという相談を受けることがよくありますが、私は、法人で建設し、役員社宅とする方法をお勧めしています。

個人で資産を所有していないと不安だという会社オーナーの方も多いのですが、法人で社宅を所有して活用した方が明らかに税務メリットが大きいと考えられます。

個人で新築した場合、住宅借入金等特別控除は、各年の控除額が最大30万円で10年間の最大控除額は300万円になります。(住宅借入金等特別控除を利用した場合)

一方、法人で役員社宅用の住宅を新築した場合には、新築時に係る登記費用や不動産取得税が全額損金となるほか、毎年のコスト(固定資産税、保険料、減価償却費、修繕費等)が全額損金になります。

仮に5,000万円(土地2,000万円、建物3,000万円)の住宅を法人が新築し、社宅とした場合は、まず、建物の建築費3,000万円のほとんどを減価償却を通じて損金にできるだけでなく、その取得費と維持コストのすべてを損金にできることになります。社宅に係る損金総額を仮に4,000万円として、法人税等の実効税率を35%とした場合、法人税等の節税額は4,000万円×35%=1,400万円となります。

つまり、個人で新築した場合の節税額は最大300万円なのに比べ、法人で新築した場合の節税額は1,400万円になるのです。

以上の設例により、役員社宅の有利さはご理解いただけたと思いますが、役員社宅の場合は、その家賃設定に注意が必要です。

所得税基本通達36-40により、会社が役員から徴収すべき社宅の家賃が以下の金額を下回ると、当該金額が役員に対する現物給与とみなされてしまいます。

1.豪華な社宅
 賃貸料=その住宅が一般の賃貸住宅であるとした場合に授受される賃貸料の額

2.小規模社宅以外の社宅
 賃貸料=(その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×12/100+その年度の敷地の固定資産税の標準課税学×6/100)/12
 ※ただし、木造以外の家屋(法定耐用年数が30年を超える住宅用建物)については、上記式の12/100部分を10/100とします

3.小規模な社宅(木造家屋は132㎡以下、木造家屋以外は99㎡以下のもの)
 賃貸料=その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×2/1,000+12円×当該家屋の床面積/3.3+その年度の敷地の固定資産税の標準課税学×2.2/1,000

大彗星がやってくる

2012-11-02 09:18:41 | 天文
来年は、肉眼観測が可能な大彗星が2つもやってきます。

3月11日に近日点を通過するパンスターズ彗星と11月28日に近日点を通過するアイソン彗星です。

パンスターズ彗星は最も明るい恒星であるシリウスと同等の明るさが期待されていますが、現れる高度が低いため、肉眼で確認するのは難しいかもしれません。

一方、アイソン彗星は、太陽のすぐそばをかすめる「サングレイザー彗星」で、太陽中心から約190万kmまで大接近するため、彗星が蒸発せずに近日点を通過することができれば、12月には、金星よりも明るい見事な大彗星となって日本の夜明け前の空で観測できるはずです。

1997年のヘールボップ彗星以降、日本には肉眼ではっきりと確認できる大彗星は現れていません。

アイソンには、ぜひ太陽の熱をくぐりぬけて、私たちの目の前にその雄姿を現してほしいものです。