沖縄の公認会計士佐藤晃史のブログ

沖縄で医療機関支援、事業承継、相続対策に強い会計事務所を経営している佐藤晃史のブログです

個人事業者が法人なりする場合の棚卸資産の取扱い

2012-10-26 14:20:53 | 所得税
個人事業者が法人成りする際に個人が所有する棚卸資産は、原則としてすべて法人に譲渡することになりますが、譲渡価格には十分な注意が必要です。

仮に仕入価格50、通常販売価格100の商品があったとして、個人から法人への譲渡価格はいくらにすればよいのでしょうか。

法人成りするといっても、自分が所有する商品を自分の会社に売るのだから、仕入価格50でよいだろうと考えるのが常識かもしれませんが、税法では、原則として通常販売価格の100で譲渡することが求められます。

仮に通常販売価格の70%未満の価格、例えば仕入価格の50で個人から法人に譲渡した場合は、低額譲渡となり、70%相当額との差額20(70-50)は個人から法人への贈与とみなされ、法人に課税関係が発生する上に、実際には50で譲渡したとしても、通常価格の70%、つまり70で個人から法人へ譲渡があったものとして、個人の事業所得を計算されます。

以上からわかるように、棚卸資産を不用意に法人に譲渡すると、法人、個人でダブルで課税されますので、譲渡する際は、顧問税理士に事前に相談しましょう。

個人開業医の法人なりのメリットとデメリット

2012-10-24 14:30:19 | ドクターの節税
診療所または歯科診療所のを営む個人開業医の方が、医療法人成りする場合のメリットとデメリットをまとめてみました。

1.メリット
(1)理事長(院長)をはじめ、その家族全体の節税効果が期待できる
院長が理事長に就任し、家族を理事に就けて役員給与を支給することにより、所得分散効果が得られる。
加えて、役員給与はその全額が所得になるのではなく、収入金額に応じた給与所得控除があるため、
課税所得金額が圧縮される。

(2)役員退職金の支給が可能
個人事業の場合は、院長先生に退職金を支払うことはできないが、法人化することで役員退職金を支給でき、
適正額であれば、全額が損金となる。

(3)生命保険料の損金算入
個人事業の場合、院長先生が支払う生命保険料は年額4万円しか所得控除されないが、法人で加入した場合は
掛け捨て保険なら保険料全額を、逓増定期保険や長期平準定期保険であれば、保険料の半分を損金とすること
ができます。

(4)事業承継に際して相続税が課税されない
現在、設立できる医療法人は出資持分なしの医療法人であるため、出資金を後継者に承継する場合に
相続税が課税されない。

(5)老健施設等の運営が可能になる
医療法人化することで、本来業務として老健施設を開設できるほか、附帯業務として以下の業務を行うことができる。
・訪問介護ステーション
・疾病予防運動施設・疾病予防温泉利用施設
・グループホーム
・有料老人ホーム
・サービス付高齢者住宅

(6)事業資金とプライベート資金の分離ができる

(7)社会保険診療報酬支払基金からの入金の際、源泉徴収されない
個人の場合は、源泉徴収されるが、法人化すると源泉徴収されないため、毎月の入金額が増加し、資金繰りがスムーズ
になる。

2.デメリット
(1)所得が分散するため、理事長個人の可処分所得は減少する
 
(2)持分のない医療法人が解散する場合は、残余財産が国等に帰属することになる

(3)小規模企業共済に加入している場合は脱退する必要がある

(4)交際費の一部が損金不算入となる
仮に年間交際費200万円とすると、以下の金額が損金にならない。
200×0.1=20万円 

(5)地方税の均等割負担が生じる
県民税5万円、市町村民税2万円の負担となる

(6)事業報告書等の作成負担が生じ、経営状況がオープンになる
医療法人は毎会計年度終了後2か月以内に事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、その他省令で定める書類(事業報告書等)を
を作成し、3か月以内に監事の監査報告書を添付して県知事に提出しなければばらなくなる。
この事業報告書等は誰でも閲覧が可能であり、経営状況がオープンになってしまう。

(7)登記手続きが必要
医療法人は設立時はもちろん、その後の変更事項をすべて登記しなければならない。

(8)医療法人設立コスト
医療法人を設立する場合は、県知事に対し、設立認可申請をしなければならいないが、そのほかにも、税務署、法務局、保健所、
地方厚生局、県税事務所、市町村、年金事務所、その他への手続きが必要である。これらの手続きを専門家に依頼する場合、相応
のコストがかかる

会計検査院が簡易課税制度の見直しを財務省に要請

2012-10-22 08:55:17 | 消費税
会計検査院は、このほど、財務省に対して、簡易課税制度におけるみなし仕入率の見直しを要請しました。

簡易課税制度とは、消費税の計算において、課税売上高5,000万円以下の小規模事業者に限り、正規の計算手続きによらず、売上に係る預かり消費税のの一定割合(業種により50%~90%)の金額を課税仕入とみなして、納付すべき消費税を計算できる制度です。

小規模事業者の事務負担の軽減を目的に設けられた制度ですが、みなし仕入れ率が実際の課税仕入率よりも高く設定されているため、正規の計算で計算された納税額より、簡易課税制度を適用して納税額を計算したほうが納税額が少なくなること(俗にいう益税)が問題となっていました。

平成26年4月以降は、消費税が段階的に上昇するため、この益税問題を放置すると、価格を通じて消費者が負担している消費税の一部が国庫に納付されず、事業者の手元に残る金額が増加することになります。

小規模事業者の事務負担の軽減という目的と、益税の社会的影響の大きさを天秤にかける必要がありますが、PCや会計ソフトが普及した現在、消費税を考慮した記帳手続も簡単にできるようになっており、事務負担の軽減という理由だけでは益税を容認することは難しいのではないかと思われます。

買収した100%子会社からの受取配当金の税務

2012-10-18 14:54:43 | グループ経営
M&Aにより取得した100%子会社から配当金を受けとる際には、以下の点に注意が必要です。

1.受取配当金の益金不算入について
配当の額の計算期間の開始の日からその計算期間の末日まで継続して、配当を行う会社と配当を受け取る会社に完全支配関係がある場合、つまり、親会社が100%子会社から配当金を受け取る場合は、親会社が受け取った配当金の金額は、その全額が益金不算入になります。

ここで、配当計算期間とは、以下の期間を指します。
A.過去1年以内に配当支払いがあった場合・・・・前回の配当基準日の翌日(3月決算の会社なら4月1日)
B.過去1年以内に配当の支払いがなかった場合・・・今回の配当基準日の1年前の日の翌日(3月決算の会社なら4月1日)
C. 設立後1年未満の会社が配当を行う場合・・・その設立の日
D.発行法人から取得して1年未満の場合・・・その取得の日

M&Aで取得した100%子会社の場合の計算期間は、上記のAもしくはBであることがほとんどなので、3月決算会社であれば、前年の4月1日から3月31日が配当計算期間となります。

しかし、100%子会社からの配当金を受け取った場合でも、全額益金不算入とならない場合があります。

<例>
3月31日決算の会社の株式を7月1日に取得した場合
配当計算期間のすべての期間、継続して完全支配していないので、受取配当金の全額を益金不算入とはならず、配当金の一部が益金算入となる従来の規定の適用になります。

つまり、期中にM&Aを実施した場合は、最初に迎える決算で配当を行うと、受取配当金の全額益金不算入規定は適用されないので、注意が必要です。

2.所得税額控除
配当の支払いを受ける場合には、源泉徴収される所得税のうち、一定額は法人税の額から控除され、控除しきれない金額は還付されます。

税額控除額は以下の式で算出されます。

税額控除額=所得税の額×(その元本を所有していた期間の月数÷配当の計算の基礎となった期間の月数)

つまり、配当計算期間と同じ期間だけ子会社株式を保有している場合に限り、所得税全額を法人税から控除できるということです。

<例>
3月31日決算の会社の株式を7月1日に取得した場合
配当計算期間のすべての期間、継続して子会社株式を保有していないので、所得税の9/12だけが税額控除できることになります。

つまり、期中にM&Aを実施した場合は、最初に迎える決算で配当を行うと、源泉所得税は全額控除できなくなるので、注意が必要です。


上記をまとめると、期中に株式買収で100%子会社化した会社から配当受け取る場合に、受取配当金の益金不算入規定と源泉所得税の税額控除をフルに活用するには、買収後の初めての決算時ではなく、2回目以降の決算時に配当を行う必要があるということになります。

復興特別所得税の源泉徴収に注意

2012-10-16 10:44:43 | 法人税
復興特別所得税とは、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生じる所得について課税される所得税です。この復興特別所得税は、一見法人には関係のないように思えますが、法人が銀行から預金利息を受け取った場合等の源泉所得税に影響が出てきます。

仮に受け取った利息金額が79,685円だとすると、以下のような計算が必要になります。

1.受取利息金額の逆算
79,685円は、所得税15%、復興特別所得税15%×2.1%=0.315%、地方税=5%の合計20.315%が控除された金額です。
よって、求める受取利息金額をXとおくと、79,685円=X×(1-0.20315)となります。
よって、X=79,685円÷(1-0.20315)=100,00円となります。

つまり、源泉徴収後の手取金額から受取利息金額を逆算する計算式は以下のようになります。

受取利息金額=手取金額÷0.79685

2.受取利息の仕訳
以下のようになります。

(借方)                   
預金 79,685
法人税等(源泉所得税) 15,000
法人税等(復興特別所得税) 315
法人税等(利子割) 5,000

(貸方)
受取利息 100,000


会社法制の見直しに関する要綱案について

2012-10-11 16:10:45 | 会社法
法制審議会は、8月1日に「会社法制の見直しに関する要綱案」を発表していますが、その中で、会社分割に関する改正が盛り込まれています。

主な内容は以下の2点です。

1.会社分割の差止請求
略式会社分割以外の会社分割(簡易会社分割の要件を満たすものを除く)が法令又は定款に違反する場合において、株主は、株式会社に対して、当該会社分割をやめることを請求できることになります。

なお、現行法では、株主の差止請求権の代わりに株式の買い取り請求が認められていますが、これだけでは不充分ということで、株主の権利強化が図られています。

ただし、この差止請求権が認められるのは、法令定款違反に限定されているため、株主総会の招集手続きの瑕疵や開示義務違反などのケースではOKですが、単なる反対というだけでは認められません。

2.会社分割等における債権者の保護
近年、分割会社に債務を残して、優良な事業を承継会社に移してしまうことを目的とする、いわゆる再生型会社分割がかなり広く実施されています。
このような分割では、残存債権者はキャッシュフローを生み出す優良資産が他社に移転してしまうため、債権の回収がおぼつかなくなります。

このような会社分割が債権者に及ぼす不利益を解消するため、残存債権者に不利益になることを知ったうえで、会社分割を行った場合には、残存債務者は承継会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求できることになります。

また、会社分割に異議を述べることができる債権者であって、個別の催告を受けなかったものは、分割会社及び承継会社の双方に対して債務の履行を請求できることになります。

なお、現行法では、詐害的な会社分割や分割会社に知られていない債権者の利益を守ることができなかったので、上記改正が実現すれば、より債権者保護が図られることになります。

個人的な感想としては、企業再生コンサルタントと称する連中が詐害的な会社分割を行うのを多数みてきたので、この改正はぜひ実現してほしいと思っています。

役員退職金の分割支給に注意

2012-10-09 15:51:31 | 法人税
このほど、国税不服審判所が発表した裁決事例の中に、役員退職金の分割支給に係る事例があったので、紹介したいと思います。

<事例>
A社は役員Bの分掌変更(代表取締役→非常勤取締役)に伴い、取締役会で退職慰労金2億5,000万円の支給を決定し、分掌変更年度に7,500万円、翌事業年度に1億5,000万円を支給した。これら分割支給した金員について、各事業年度の退職給与としてそれぞれ損金算入した。

これに対して、課税庁は、2年目に支給した金員には退職給与ではなく、損金不算入となる役員給与にあたるとして、法人税の更生処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を行った。


<審判所の判断>
まず、当該分掌変更は役員Bの報酬が半減していることや株式保有割合の減少状況などからして、その支給した給与は退職給与として取扱うことができる。また、退職給与は法人が実際に支払ったものに限られるが、資金繰りの都合など分掌の変更時に全額が支給されなかったことについて合理的な理由がある場合は、その限りではない。

本件について、その合理性について検討すると以下の理由により、認めることができないと判断した。
1.株主総会や取締役会で、どのような理由で分割支給するのか、その時期はいつで金額はいくらといった明確な議事が行われておらず、議事録も存在していない。
2.退職金計算書は存在するが、その内容は「分掌変更時7,500万円支給、翌事業年度以降3年以内に残額支給」とされ、残額について支給時期や支給金額を具体的に定めていない。
3.A社は対金融機関上、赤字決算を回避するため、分割支給している。このことから、本件分割支給の目的は、利益調整にあったことがうかがわれる。

<対策>
資金繰りの都合上、役員退職金を一括支給しない場合には、以下の点に注意することが必要です。
1.取締役会及び株主総会で、分割支給の合理的な理由を説明し、支給時期と金額を明確したうえで、議事録に作成する。
2.退職金計算書には、支給時期及び支給金額を明確に記載する。
3.赤字決算を避けるための分割支給は、合理的な理由にあたらない。資金繰りの都合であれば合理的な理由になる。

沖縄本島で天体観測適地を探す

2012-10-05 10:25:34 | 天文
私が住んでいる宜野湾市宇地泊のマンションは、目の前に商業施設が3つ(うち1つは24時間営業)もあることから、夜空は明るく、自宅のバルコニーからは2等星がやっと見えるという状況で、全く、天体観測には適していません。

そこで、日頃より、沖縄本島内で天体観測に適した場所(天の川が肉眼ではっきり見える、視界が開けている、近くに人家がない等)を日頃からリサーチしています。

昨日の沖縄は乾燥注意報で発令されるほど乾燥した晴天であったため、平日にも関わらず、やんばるに遠征してきました。

行った場所は、大宜味村の大保ダムです。宜野湾の自宅から85キロ、車で1時間30分の距離と、遠いのが難点ですが、空は比較的暗く、天の川もくっきりと見えました。

昨日は、時間がなかったので、双眼鏡(キャノン42ミリ10倍の防振タイプ)だけを持参したのですが、夏から秋にかけて見えるメジャーな星雲・星団(M8、M20、M16、M31、・・・・)を楽しんできました。この双眼鏡は三脚がなくても手振れを防止してくれる上に、光学性能がとてもよいため、現在、最も気に入って使っている機材ですが、この双眼鏡で天の川を見ると、まさに宝石箱をひっくり返したような状況が目の前に展開します。

これまでは、自宅からの現地までの時間を1時間以内を目途として恩納村付近を中心にロケハンしていたのですが、名護より北に行くと、星の見え方が格段によくなることを今回、身をもって体験しました。

決算期ごとに自社株の評価額を算出しましょう

2012-10-04 15:52:35 | 事業承継
事業承継を意識し始めた企業オーナーがまず最初に知るべきは、自身が所有している自社の株式の評価額です。

未公開株式の評価額の算出方法は、国税庁の通達において、細かく決められていますので、事業承継や相続・贈与に関してある程度の経験のある税理士であれば、専用のソフトを使って、自社株の評価額を算出してくれるはずです。

自社株が高いと、後継者に生前贈与を行うなどの事業承継対策を進める場合の税金コストが高くなります。贈与税は、株式をもらった側が納税することになるため、資金力のない後継者にはつらいものがあり、株式の移転が遅々として進まない大きな原因となります。

ちなみに、1株額面5万円の株式を400株保有するオーナーの自社株評価額が25万円/株(総額1億円)である場合の贈与税のシミュレーションは以下の通りです。

・1年あたりの贈与株数・・・20株
・1年あたりの贈与金額・・・25万円×20株=500万円
・1年あたりの贈与税額・・・(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円
・400株全株を贈与するのに要する年数・・・400株/20株=20年
・400株全株を取得するのに要する贈与税額・・・53万円×20年=1,060万円

上記の事例では、株価は20年間一定との仮定を置きましたが、毎年の利益が蓄積して純資産が増加すると、株価は上昇するため、実際にはこの金額では収まりません。

そこで、今後、株価、株価が確実に上昇するであろう企業(純資産が5億円を超える場合や、毎期経常利益が5,000万円を超える場合等)は、早めに顧問税理士に依頼して、自社株の評価をしてもらい、株価の上昇を抑える対策を提案してらいましょう。