沖縄の公認会計士佐藤晃史のブログ

沖縄で医療機関支援、事業承継、相続対策に強い会計事務所を経営している佐藤晃史のブログです

役員退職金の分割支給に注意

2012-10-09 15:51:31 | 法人税
このほど、国税不服審判所が発表した裁決事例の中に、役員退職金の分割支給に係る事例があったので、紹介したいと思います。

<事例>
A社は役員Bの分掌変更(代表取締役→非常勤取締役)に伴い、取締役会で退職慰労金2億5,000万円の支給を決定し、分掌変更年度に7,500万円、翌事業年度に1億5,000万円を支給した。これら分割支給した金員について、各事業年度の退職給与としてそれぞれ損金算入した。

これに対して、課税庁は、2年目に支給した金員には退職給与ではなく、損金不算入となる役員給与にあたるとして、法人税の更生処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を行った。


<審判所の判断>
まず、当該分掌変更は役員Bの報酬が半減していることや株式保有割合の減少状況などからして、その支給した給与は退職給与として取扱うことができる。また、退職給与は法人が実際に支払ったものに限られるが、資金繰りの都合など分掌の変更時に全額が支給されなかったことについて合理的な理由がある場合は、その限りではない。

本件について、その合理性について検討すると以下の理由により、認めることができないと判断した。
1.株主総会や取締役会で、どのような理由で分割支給するのか、その時期はいつで金額はいくらといった明確な議事が行われておらず、議事録も存在していない。
2.退職金計算書は存在するが、その内容は「分掌変更時7,500万円支給、翌事業年度以降3年以内に残額支給」とされ、残額について支給時期や支給金額を具体的に定めていない。
3.A社は対金融機関上、赤字決算を回避するため、分割支給している。このことから、本件分割支給の目的は、利益調整にあったことがうかがわれる。

<対策>
資金繰りの都合上、役員退職金を一括支給しない場合には、以下の点に注意することが必要です。
1.取締役会及び株主総会で、分割支給の合理的な理由を説明し、支給時期と金額を明確したうえで、議事録に作成する。
2.退職金計算書には、支給時期及び支給金額を明確に記載する。
3.赤字決算を避けるための分割支給は、合理的な理由にあたらない。資金繰りの都合であれば合理的な理由になる。


最新の画像もっと見る