沖縄の公認会計士佐藤晃史のブログ

沖縄で医療機関支援、事業承継、相続対策に強い会計事務所を経営している佐藤晃史のブログです

自社株評価額の引下げの必要性と引下げ方法(その3)

2013-07-09 14:39:09 | 事業承継
前回までの2回では、利益引下げによる株価対策について説明しましたが、今回は、利益圧縮以外の方法で、オーナー社長保有の自社株の評価額を引き下げる以下の手法について説明したいと思います。
(1)従業員持株会の活用
オーナー社長が保有する株式の一部を従業員持株会に譲渡するか、もしくは会社が第三者割当増資を行い、従業員持株会がその全額を引き受けることにより、オーナー社長の保有する自社株式の評価額を引き下げることができます。

<事例>
・会社の発行済株式数:500株
・オーナー保有株式:500株(100%保有)
・オーナー保有株式の取得価格:5万円
・オーナー保有株式の時価評価額:50万円
・会社の規模:従業員120名(大会社)
・オーナー保有株式500株のうち、100株を従業員持株会に配当還元価格で譲渡する
・配当還元価格:5万円

<計算結果>
①現在のオーナー保有自社株式の評価額
 500株×50万円=2億5,000万円
②従業員持株会に譲渡後の自社株式の評価額
 400株×50万円=2億円
①-②評価額引き下げ効果
 2億5,000万円-2億円=5,000万円

以上により、従業員持株会の活用により、5,000万円の評価引き下げが可能になります。
なお、オーナー社長は保有する自社株100株(取得価格5万円)を配当還元価格5万円/株で
譲渡しているため、所得税等の課税はなく、100株×5万円=500万円の現金を受け取ることになります。

なお、この手法は従業員持株会に自社株を持たせ、会社の業績に連動して配当を行うことにより、従業員の経営参加意識を醸成することができるという副次的な効果も期待できますが、従業員はあくまでも他人であることから、経営権の安定性を確保するため、従業員持株会の持株比率には留意する必要があります。

(2)投資育成会社の活用
投資育成会社とは、中小企業育成株式会社法に基づき設立された会社であり、沖縄県の場合は、大阪中小企業投資育成会社(九州支社=福岡)のテリトリーになります。
投資育成会社は、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な発展を図るために、中小企業に投資することを業務としています。

投資育成会社の引受株価は、中小企業庁と国税庁が定めた表k算式によって算定します。
<評価算式>
評価額=(増資後の1株当たりの税引前予想利益×配当性向)/期待利回り
・予想利益:過去3年間の決算実績を基準として、投資育成会社が決定
・配当性向:10%~20%の範囲内で予想利益を基準として、投資育成会社が決定
・期待利回り:経営の状況、収益力、資金力等を総合的に判断して8%~12%の範囲で決定します。

投資育成会社を利用した場合の株価引き下げ効果についての検証は複雑なので、ここでは省略しますが、当事務所のお客様が投資育成会社を活用したケースでは、30%程度の評価引き下げに成功しています。オーナー社長が保有する株式の評価額が3億円とすると、3億円×0.3=9,000万円の評価引下げ効果が得られることになり、効果は絶大です。

なお、投資育成会社を活用する場合のデメリットは、投資育成会社に対して高めの配当を支払い続ける必要があることです。あまり多額の出資を受け入れると配当負担が重くなりますので、自社株評価引下げによる節税効果との見合いで出資額を決定する必要があります。

利益圧縮以外の方法による株価対策はいかがでしたか。次回は、引き続き利益圧縮以外の方法で、オーナー保有の自社株の評価額を引き下げる以下の手法について説明したいと思います。
(3)高収益事業の分離
(4)資産管理会社の活用


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