沖縄の公認会計士佐藤晃史のブログ

沖縄で医療機関支援、事業承継、相続対策に強い会計事務所を経営している佐藤晃史のブログです

高齢者用グループホーム用建物の賃貸に係る消費税の取扱い

2013-04-09 16:47:09 | 消費税
東京国税局は、このほど、事前照会のあった「認知症高齢者グループホーム用建物の賃貸に係る賃貸収入及び取得費用に係る消費税の取扱い」の文書回答を発表した。

認知症高齢者用グループホーム用建物の消費税は、同建物の全体が住宅の貸付に該当し、賃料収入の全額が非課税となり、同建物の取得は課税仕入れに該当するとした。
照会者は、認知症高齢者用グループホーム用建物を取得し、同建物を介護事業者に賃貸。介護事業者は、入居者に同建物を住居として提供し、食事や入浴など日常生活の世話を行っている。同建物内には介護事業者の事務室があり、敷地内には同建物の利用に伴って使用する駐車場と駐輪場がある。

照会では、住宅の貸付は非課税であり、住宅用の建物を賃貸し、賃借人が自ら使用しなくても、賃借人が住宅として転貸することが明らかな場合は、住宅の貸付に該当する。また、事務室や駐車場等も含めた全体が住宅の貸付に該当し、賃貸収入の全額を非課税として差し付けないか問い合わせていた。

東京国税局は、認知症高齢者グループは、日常生活を送るために必要な場所と認められるために住宅に該当し、介護事業者が住宅として転貸することは契約書で明らかである。事務所は入居者が日常生活する上で、必要な場所であり、駐車場等は賃料収入とは別に使用料を収受していないため、同建物の利用に伴って使用すると認められる。したがって、照会の通り、同建物の貸付は、その全体が住宅の貸付に該当し、賃料収入の全額を非課税としてして差支えないとした。

以上がこの文書回答の内容であるが、今後ますます不足することが見込まれる「介護が必要な高齢者用のグループホーム」は、異業種の企業が新規算入するケースが増えてくることが想定されます。当事務所のお客様も、先日新規参入されました。
介護事業に経験のない企業の場合、自身で介護事業に参入するのではなく、建物だけを建てて、介護事業者に賃貸することを選択する場合も多くなると思います。

今回の回答は、このような場合の消費税の取扱いを明確化したものです。消費税の取扱いはとかく複雑で、特に大きな設備投資を伴う場合には、事前に十分な検討が必要になります。十分に検討せず、事業を開始してからこ「こんなはずではなかった」とならないように、事前に専門家に相談してください。

消費税率アップと工事請負契約

2012-11-15 10:01:25 | 消費税
平成26年4月1日以降、消費税率は8%に、そして、平成27年10月以降は10%に上昇することが予定されていますが、住宅、アパート、工場等の新築を予定されている方にとっては、いつまでに工事請負契約を締結して、いつまで引き渡しを受ければ、現行の消費税率となるのかが気になるところです。

結論としては、引渡時期には関係なく、平成25年9月30日までに請負契約を締結した場合は5%、平成25年10月1日から平成27年3月31日までに請負契約を締結した場合は8%の税率が適用されます。

請負契約による設備投資を検討されている方は、平成25年9月30日までに請負契約を締結すれば、消費税増税の影響を受けることなく設備投資ができますので、早めに検討を始めてください。

ただし、マンションや建売住宅の分譲契約については、建物の売買契約であり工事の請負契約には該当しないので、上記の規定は適用されず、引渡が税率改正前に行われた場合に限り、改正前の税率が適用されます。

アパート建設による消費税の還付についての誤解

2012-11-06 15:03:12 | 消費税
平成22年の消費税改正により、いわゆる「自動販売機スキーム」を活用した、アパート建築費に係る消費税の還付は受けられなくなったと言われています。

この「自動販売機スキーム」というのは、アパート事業を新規に始めようとする場合に、まず、建設現場に「飲料の自動販売機」を設置して、課税売上の実績を上げた上で、「消費税課税事業者選択届」を提出します。そして、建物の完成を年末に完成させて、入居を年始にすることで、アパート建築に係る消費税全額の還付を狙うわけです。
ただし、当該アパートは調整対象固定資産に該当し、このままでは、3年後に還付額を払い戻すことになるため、建物が完成した翌年に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、還付の返還を免れるようにしていたわけです。(課税売上が1,000万円超ある場合は「消費税簡易課税選択届出書」を提出することで同様の効果あった)

ところが、平成22年度の消費税の改正により、免税事業者が「消費税課税事業者選択届」を提出した場合は、その後3年間は免税事業者にもどること及び簡易課税を選択することが禁止されました。これにより、アパートは調整対象固定資産に該当し、初年度に還付を受けた消費税は3年後に返還を求められることになりました。

ここで、注意が必要なのは、免税事業者が「消費税課税事業者選択届」を提出した場合という文言です。つまり、もともと課税売上高が1,000万円超5,000万円以下で、非課税売上がない事業者の場合は、事業年度末にアパートが完成するようにすれば、アパートの建築費にかかる消費税の全額還付を受けることができます。そして、アパート取得年度末までに簡易課税の選択届出を提出し、簡易課税に移行します。

簡易課税適用の場合は、調整対象固定資産制度の適用はありませんので、還付金の3年後返還の必要もありません。

以上からわかるように、アパート建築に係る消費税の還付は受けられなくなったのは、限定的なケースであり、原則的には還付可能なのです。

会計検査院が簡易課税制度の見直しを財務省に要請

2012-10-22 08:55:17 | 消費税
会計検査院は、このほど、財務省に対して、簡易課税制度におけるみなし仕入率の見直しを要請しました。

簡易課税制度とは、消費税の計算において、課税売上高5,000万円以下の小規模事業者に限り、正規の計算手続きによらず、売上に係る預かり消費税のの一定割合(業種により50%~90%)の金額を課税仕入とみなして、納付すべき消費税を計算できる制度です。

小規模事業者の事務負担の軽減を目的に設けられた制度ですが、みなし仕入れ率が実際の課税仕入率よりも高く設定されているため、正規の計算で計算された納税額より、簡易課税制度を適用して納税額を計算したほうが納税額が少なくなること(俗にいう益税)が問題となっていました。

平成26年4月以降は、消費税が段階的に上昇するため、この益税問題を放置すると、価格を通じて消費者が負担している消費税の一部が国庫に納付されず、事業者の手元に残る金額が増加することになります。

小規模事業者の事務負担の軽減という目的と、益税の社会的影響の大きさを天秤にかける必要がありますが、PCや会計ソフトが普及した現在、消費税を考慮した記帳手続も簡単にできるようになっており、事務負担の軽減という理由だけでは益税を容認することは難しいのではないかと思われます。