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FIELD MUSEUM REVIEW

FM170_04 自然のままに◇Kumamoto City Museum への道 (Ⅳ) 2023年09月18日

熊本博物館の二階は、こんなふうで、いや、これは一階から上をみあげたところで、ニッポンの住宅の建築構造を露骨にみせるための展示、だったかな、このごろ記憶力が、、、いまにはじまったことではないか。

(写真は熊本市にて2023年9月18日撮影)

階段をのぼって目にとびこんでくるのは、スタディルーム。このスタディは研究だろうか、お勉強だろうか。

地元の「阿蘇黄土」からいこう。褐鉄鉱である。

黄土色(おうどいろ)の素(もと)。
黄土高原(こうどこうげん)のレス Loess とは別ものなので、おなじ漢字をよみわける意味があるだろう。色の名のほうがはるかに先輩のようだ。

黄土を加熱すると「ベンガラ」になる。赤の絵の具。古墳の天井石が赤かったのも、この顔料をぬったから。
(古墳の天井石 ⇒ FM170_02「熊本城からあるいて◇Kumamoto City Museum への道 (Ⅱ)」)

褐鉄鉱(阿蘇黄土)「採集地:熊本県阿蘇市 狩尾」-阿蘇山のなりたちを説明したコーナーにて。


「金峰山をつくる石」足もとをみることがたいせつ。ひとの足もとはみないように。
金峰山(きんぽうざん)は熊本市西区にある山、標高665.2mで、山頂に展望台がある。東の阿蘇山、西の金峰山、とならび称する。地元では「きんぼうざん」と濁音「ぼ」によむこともある。

ふりかえれば水辺と山の自然。江津湖(えづこ)と金峰山とをとりあげる。江津湖は市の南東、水前寺公園にある湖。

植物標本の数が多い。マタタビ(左)とネコノチチ。猫の乳、実が猫の乳頭ににているという。

ウマノスズクサ。ジャコウアゲハなどの食草。ドライフラワー状の標本がアクリル板に封入されている。素材はアクリルでないかもしれない。

蝶の標本箱。中段の左端がジャコウアゲハ。

キノコは化学樹脂のブロックだ。モリノカレハタケ(左)とヌメリスギタケ。

アシダカグモ、リアリズム。

だんだん暗いへやにつりこまれた。タイトルは「熊本の生きもの」。もちろん、みな死んでいる。

植物の標本。右方は藻類。

ウミウチワ(左)とアカモク。

ツクシマイマイの殻。その地域性。


ツクシマイマイ。

オオスカシバがいた。昼間とぶ蛾。このごろゴーヤーの花にくる、横浜のはなしです。

タヌキの「溜糞」のなかからでてきた遺物、というか異物。動物はおおむね省く。
例外は、これ。
見出し写真におなじ。

「植物学者の部屋」全体が透明なケースにおおわれている。

フィールドワークは帰ってからのほうが、かえってシンドイことがある。
勉強部屋でおもいだした。地学のスタディルームにもどろう。

フズリナ 石炭紀 八代市泉町採集 有孔虫の化石である。
荒船山(群馬県)山中のフズリナ化石の専門家に高校で指導をうけたのが古生物学への入口だった。むかしばなしをするようになったら、歳をとった証拠。

メガロドン 三畳紀 球磨郡球磨村採集 二枚貝の化石。
つい目が魯鈍とよんでしまう。ひがみっぽくなるのも、老人のあかし。

橄欖岩があるぞ。採集地は下益城郡美里町。行ってみたい。


藍鉄鉱 燐酸塩鉱物 熊本市西区採集 西区には水成堆積層があるのだ。
木の葉石ではないのか?--きりがないな。鉱物の写真だけで都合54枚ある。
(熊本の鉱物 ⇒ FM170_S1「石っこのへや」もしあれば。まだない。)

熊本博物館にはプラネタリウムが併設されています。

「お手洗い」(左の廊下にとびらが)に寄って帰るまえに「ごあいさつ」。

展示解説の文字フォントのえらびかたにも気配りが感じられます。

4号自動式卓上電話機 昭和二十五年(1950年)
「はじめて送・受話器を連結した3号自動式卓上電話機(昭和8年誕生)を受け継ぐかたちで研究がすすめられ、昭和25年から実用化しました。当時最先端の通話品質を誇り、その音の再現性の高さから「ハイ・ファイ電話機」と呼ばれました。」(解説パネルより)
・・・ハイ・ファイ hi-fi はもはや死語にちかい、high fidelity とは音響機器で再生するさい原音にたいする高い忠実度のこと。これをハイ・ファイ・セットのステレオとかいうあんばいにつかう・・・
「今回展示している4号・600形・601形の電話機と同様の NTT 技術史料館所蔵のものが国立科学博物館の「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されています。」(以下略)

600形自動卓上電話機 昭和三十八年(1963年)
・・・名称から自動式の「式」がとれましたね。弥生式土器が弥生土器になったようなものか・・・
「日本電信電話公社(現NTT)など複数の会社によって量産されました。番号の書かれた穴に指を入れ、右端まで動かして入力します。この動作を「ダイヤルを回す」と言います。」
・・・ダイヤルまわして手をとめた、昭和の歌は注釈つき。湯川れい子が「恋におちて -Fall in love-」を作詞した時点で、すでにプッシュボタン式に移行しつつあった。1985年(昭和六十年)発表。小坂明子のデビュー曲であった。そのCDには英語版が収録されたものがある。・・・
「動かすときには微妙な抵抗があり、動かしきったあとにはダイヤルの戻っていく独特の音がします。プッシュ式・タッチパネル式とは異なるおもしろさがあります。ぜひ実際に回してみてください。」
・・・さわっていいんですよ。・・・
「昭和46年(1971)からは黒以外のカラー(ホワイト・グレーグリーン)も販売されました。」(
解説パネルより)

601形自動卓上電話機 昭和四十八年(1973年)
「高度経済成長後、昭和43年(1968)の石油ショックにともなう物価の急上昇などに対応するため、600形の改良も計画されました。結果、大幅なコストダウン、高いメンテナンス性能を実現した601形が誕生しました。
「この改良は外装のプラスチック化からベルなどの内部構造にまで及びました。外見的にはほとんど変わってないように見えますが、カバーを開くとその変化は一目瞭然です。」
・・・ひと目みたいものです。下に展示パネルの写真をかかげます。・・・
「また、4号は約2400グラム、600形は約1800グラム、601形は約1100グラムと重さもだいぶ変わっています。」(
解説パネルより)

電話機の内部。600形(左)と601形。(解説パネルの写真より)
なるほどナカミはぜんぜんちがう。

・・・「地上の星」と「プロジェクトX」の探索は、自力でおねがいします。
・・・もう文をつづるのに飽きたのだろうと?--ご賢察の通りです・・・
(*1)

はい、「お手洗い」にいってよろしい。

帰りしな塀の外からのぞいた中庭に蒸気機関車。そういえば野外展示をみそびれた。
県立美術館のランチに気をとられたせいです。
(大井 剛)

(*1) 「日本の家庭を隅々までつないだ黒電話-601A型のダイヤルの開発に携わって-」鈴木利雄、川治健一、関口理希、石川智士、伊藤智博、立花 和宏、『科学・技術研究』5巻1号(2016年)、技術報告、pp.123-128. 大阪:科学・技術研究会。
著者は米沢工業会および山形大学に籍をおいたひとびと。

【追記】 日本放送協会 NHK は、ドキュメンタリー番組(?)「プロジェクトX ~挑戦者たち~」新シリーズを2024年4月から放送すると発表した。(2023年10月18日の報道による)
旧シリーズは2000年3月から2005年まで戦後復興期を題材として放映された。つくりこみ、又の名を脚色、はっきり言えば創作が多いと、とかく批判される。当事者が出演して涙したりしているのだから「やらせ」とも言える。要するにドキュメンタリーではなくドラマだという指摘で、それはその通りであろうが、一般にドキュメンタリー作品といえども(意図するか否かにかかわらず)作為をふくむものである。「ドキュメンタリーは噓をつく」のである。
(『ドキュメンタリーは嘘をつく』森達也著、草思社、2005年)

(更新記録: 2023年9月18日起稿、10月11日公開、10月13日改訂、10月19日追記、11月28日追記に補記)

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