日々・戯言の叫び

感じた事とか色々、表に出せない事を吐き出す独り善がりで嘘つきな日記

雨音で目を覚ます

2010-07-03 22:01:26 | DOD系
新しい住処の私の部屋は、ベランダに出るためのでかい窓があるため外の音がダイレクトに聞こえます。
なので、静かな時間帯は音が響いて響いて。
…家の裏手の人ー、朝早い時間から洗濯機回さないでー。目が覚めるんだってー(笑)。
しかも二階のベランダに洗濯機があるんだぜ?
DOD、前回の続き。


…DOD系が百超えました。
うわーすげー。でも内容はアレだぜー? きゃー。

続いちゃったよ。ごめんよぉ。
DOD2後。
ノウェマナ夫婦。
金髪女子と黒髪男子の双子。
マナは母親と同じ道を辿ります。
歴史が繰り返されてしまったようです。

……多分な捏造とご都合万歳の残念なSS。
きっともう続かない。


絶望のためのイコン


彼女は、己の産んだ子が疎ましかった。
その黒い髪が憎らしい。
その青い目が厭わしい。
息子の姿が汚らわしい。
その存在が、恐ろしい。
どうしてこの子はこんなにも自分に似ていないのだろうか?
彼女は思う。
確かに自分が産んだはずなのに。
事実、彼女が産んだもう一人の娘は、周囲が驚くほどに彼女とそっくりなのに。
その輝く金髪も。その綺麗な赤い目も。
顔立ちも、仕草も、立ち振る舞いも、言葉遣いも。
何もかも彼女にそっくりで。
可愛く甘える娘を見るたび、報われなかった彼女自身の少女時代が昇華されていくように感じて。
彼女はとても幸せなのに。
幸せな気持ちになれるのに。
その思いに、心に冷水を浴びせるのは息子の存在だ。
ああ、その黒髪! 暗い時代を思い起こさせる!!
ああ、その青い目! 『あの男』のように自分を見張る!!
顔立ちも、仕草も、立ち振る舞いも、言葉遣いも。
何もかもが、彼女にも夫である彼にも似ていなくて。
それはまさしく『あの男』にそっくりで。
悪夢だ。悪夢でしかない。
周囲は息子が彼に似ていると言う。
あの優しい青い目がそっくりだと言う。
どこがだと、そのたびに彼女は叫びたかった。
優しい彼の青と、恐ろしい『あの男』の青。
同じ青でもまったく違う!!
怖い怖い怖い!
『あの男』は自分を許してなんかいない!!
自分の息子に生まれ変わってまで、自分を見張ろうと言うのだ。罰しようと言うのだ。
償えと、赦されないと!!
『あの男』は責め続けるのだ。
何とかしないと。
彼女は考える。
何とかしないと。
幸せを、この陽だまりを、守らなければ!!
彼女は決意する。
まるでとり憑かれたように。
事実、彼女は憑かれているのだろう。
己の過去に。
己の不幸に。
全ては彼女の思い込みであると言うのに。
息子は、幼い彼は、別段彼女を見張るために見ているわけではない。
だって彼女は母親だ。
子供が母を見るのは当然のこと。
ただ母の温もりを求めているだけのこと。
そしてその黒髪も青い目も、『あの男』に似ているかもしれない顔立ちも、父である彼が事実上の血縁に当たるのだ。
それならば似るかもしれない。
面影はあるかもしれない。
けれど、それだけだ。
それだけのことなのだ。
それでも彼女は気付かない。
その考えに至らない。至ることが出来ない。
過去の不幸で自分の心を縛る彼女は気付けない。
だから、彼女は実行した。
かつて、彼女の母が彼女に行った仕打ちを。
彼女が神の傀儡となったきっかけの行動を。
繰り返した。
繰り返された。
もしかしたら、ここが始まりだったのかもしれない。
彼が家を空けたその日。
彼女は息子を連れ出した。
幼い娘に、家にいるように優しく言い聞かせて。
訝りながらも母との外出に笑顔を見せる息子。
その小さな手を引いて彼女は歩く、歩く、歩く。
息子の歩幅など無視して、半ば引きずる様にして。
辿り着くのは深い谷。
底は、恐らく流れの早い河だろう。
谷が深くて、底から響く音だけしか聞こえない。
彼女は思う。
自分の母は、冷たい谷に置き去るだけにした。
だから自分は神の傀儡になった。なってしまった。
自分はそんな過ちを犯さない。
神の傀儡など作らない。
だから――。
…どんっ。
母の異様な雰囲気に気付いた息子の体を、力一杯押した。
悲鳴を上げる間もなく落ちていく体。
谷の影に飲み込まれ、頼りなく、儚く、消えていく。
彼女は哂う。
これでいい。
これで幸せになれる。これで皆幸せになる。
あとは家に帰って泣けばいい。
息子が行方知れずになったと泣けばいい。
そうすれば優しい彼も愛しい娘も、周囲の人々も、きっと自分を慰めてくれる。
「ふふ、ふふふふふふ…」
漏れる笑み。
彼女は本当に、嬉しそうに哂った。

「ごめんなさい…」
弱弱しく呟く母を、父は優しく抱きしめる。
「きっと見つかるさ」
大丈夫だよと語りかける父、それでも母は泣き止まない。
少女もまた母を慰めた。
泣かないで、と。
「嗚呼! ごめんなさい!!」
母が、ぎゅうっと自分を抱きしめる。
少し苦しかったが、それだけ母が自分を愛しているのだと思えるので、何も言わなかった。
彼女は双子だった。
片割れが行方不明になった。
朝、母と出かけて、母だけが帰って来た。
母は言う。
少し目を離した隙にいなくなったのだと。
父は母を責めなかった。
すぐに探しに行こうとした父の足を止めたのは、泣き出した母だ。
酷く泣くので、父は母を放っておけなかった。
少女にはなんとなくわかっていた。
母は片割れが嫌いだった。
少女は母の心を敏感に感じ取っていた。
だから、わかった。
きっと母は片割れをどこかに捨てたのだ。
けれど少女はそれを誰かに告げるつもりはない。
だって母は優しいから。
優しい母が自分から奪われてしまうかもしれないから。
だから少女は何も言わない。
優しいは母を、泣き続ける母を、抱きしめられながら慰める。
大丈夫だよ、と。
少女は知っている。
自分が愛されていることを。
母の胸に顔を埋めながら、笑う。
これで母を独り占めできる。
片割れがいる間は、どうしても出来なかった。
母の意識は片割れにも向いてしまうから
でも大丈夫。
これからはずっと自分だけに向く。
自分は特別。
だってこんなにも母に愛されている。
だからきっと神様にだって愛されるに違いない。
「お母さん、大丈夫だよ。ね?」
母に抱きしめられながら、少女は呟く。
優しい温もりの中で、無邪気に笑った。
ラララ、ララララ……。
そしてどこかで、歌が聞こえる。

その男と竜は炎に包まれ、消えた。
英雄と呼ばれた青年の前で。
史実ではそうなっている。
話を聞いた永遠の幼子たる神官長もそう思った。判断した。
彼らは、死んだ、と。
本当に?
彼らは灰となった。その灰は空へと溶けた。
溶けた? 違う。流れただけだ。
最終封印たる赤き竜。
最終封印の破壊はすなわち世界の崩壊。
実際、その死の直後、空は、世界はひび割れたのだから。
世界の崩壊。それは終末。
誰もが忘れている。
いや、気にも留めていない。
それどころではなかったから。
それは、あの蒼き竜でさえも。
けれど、誰も知らなくとも気付かずとも。
それは起こる。それは成る。
それは、そうなっているものだから。
人の意向など、関係無いのだから。
故に、それは出現した。
――再生の卵。
世界の終わりに現れるもの。
神の意思は正しく世界に示された。
気付かなかったのは、気付く場所に現れなかっただけのこと。
その後、真人類の手によって世界は守られ、だから誰もわからなかった。
その卵の一つに、灰が流れ込んだことを。
卵が正しく機能し、その灰を元に命を造り出したことを。
もとより、英雄自身が死した女と歪んだ愛を持つ男が再生の卵――それが骨の棺と呼ばれる特殊なものであったとしても――、それにより産み出された存在。
ならば、他の卵にも、命を生み出す力が無いと誰が言えよう。
胎動する命。
穢れなき純白の表面が脈打つ。
神の支配が遠のいて、卵の力が弱まっても。
それでも卵は刻まれた使命を、その通りに遂行しようとした。
卵が揺らぐ。
弱まる力。天使文字が苦悶のように揺れる。
ばしゃり。
水の様に弾けた表面。
産声を上げたのは、小さな竜。
黒ずんだ身体。黒い角。
尾の先だけが鮮やかな赤を宿す。
クゥ~オォ~ウ。
竜は啼く。
さびしい。
生まれてすぐに抱いたのは、それ。
さびしい。
どうしてだろうか?
自分には誰かがいたはずなのに?
どうして自分は一人なのだろうか?
さびしい。
誰かがいたはずなのに。
一人ではなかったはずなのに。
さがしにいこう。
竜は思う。
よたよたと。
羽を広げてぎこちなく翔ぶ。
青い空の下、世界に向かって羽ばたいた。
小さな身体が少しばかり大きくなったある日。
竜は感じ取る。
どこからか、匂いがする。
それは自分に近い匂い。
もしかすると自分の捜し求める誰かかもしれない。
竜は翔ぶ。
風に乗れるようになった羽をひらりとはためかせ。
そして竜は見付けた。
谷の底を流れる早い河。
その途中の岩に引っかかる小さな人間。
ぐったりして力の抜けた身体を、竜は背負って懸命に飛んだ。
小さな竜には、小さな人間でも乗せるのは大変だったけれど。
もしかしたら自分の探す誰かかもしれない。
だから竜は頑張った。
小さな人間を下ろせる場所を見つけたときには、すっかり疲れきっていたけれど。
ちょいちょいと、小さな人間をつついて見たけど、瞑った目は瞑ったままで。
目を覚まさない。
ちょいちょいと、またつついてみた。
ぴくり、とまぶたが動いた。
みぃ!?
びっくりしたように、竜は高く鳴く。
開かれた青い目に、小さな竜の姿が映った。

彼女は繰り返し。
少女は歌い。
竜は生まれて。
少年は出会い。

そして、再び幕は開く。
それは即ち、惨劇の。


繰り返えされて、繰り返す! 独りで踊る群像劇!!

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