私の研究日記(映画編)

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『大いなる勇者』(DVD)

2008-11-18 14:08:10 | あ行

監督 シドニー・ポラック
製作 ジョー・ワイザン
原作 レイモンド・ソープ/ロバート・バンカー
出演 ロバート・レッドフォード
公開 1972年製作
時間 116分

 自宅(DVD)にて鑑賞(11月4日)。

 物語の舞台は、1850年代のアメリカ。主人公ジェレマイア・ジョンソン(ロバート・レッドフォード)は、人々の暮らす社会と決別し、厳しい自然との戦いに生きていこうと、ロッキー山脈へ入っていった若者である。「開拓者一家惨殺に遭遇したジョンソンは、ショックで口がきけなくなった少年キャレブを助け出し、仇を打つ。その後、犯人であった一味と敵対する部族の酋長から気品と美しさに溢れた娘スワンを贈られ、3人で平和に暮らし始める。永遠に続くかと思われた幸福な日々であったが、それもクロー族によりスワンとキャレブが殺され終わりを告げる。そして、どす黒い怒りがジョンソンを復讐へと駆り立てていくのだった…。」

 一言でいってしまえば、この映画は、クロー族とジェレマイアとの戦いを描いた作品である。だが、その一言で片付けてしまうと、この作品の凄さを正確に言い表すことはできないだろう。広大で過酷なロッキー山脈の自然の中で、あるいは次々と襲い来るクロー族の刺客を前にして、否が応でも感じてしまうのはジェレマイアの孤独である。

 映画の撮影はユタ州で行われたということだが、その大自然の美しさといったら、物語そっちのけで見たとしても相当楽しめたのではないだろうか。だが一方で、ロッキー山脈の山々や深い森、草原が美しく広大であるほど、1人で生きるジェレマイアがちっぽけで、頼りなく、そして孤独に思えてくる。見ている私も、初めこそ無邪気に感動していた美しい自然に対し、次第に不安を覚えるようになっていた。

 思いがけない結婚に、ようやく幸せの兆しが見えてきたのもつかの間、妻と少年は殺されてしまう。また、次々と襲い掛かってくるクロー族の刺客に対し、ジェレマイアを助けてくれる人はいない。どこにいっても彼は孤独なのである。

 こうして作品の中で描き出される孤独。鑑賞後の現在も孤独について考えさせられている。人は誰しも孤独と隣り合わせに生きている。社会的動物といわれる人間が、そもそも孤独でなかったならば社会的に生活する必要などないからだ。逆説的ではあるが、社会的動物である人は、実は本質的に孤独だといえるだろう。そんなわれわれに対し、一人山の中で生きようとするジェレマイアの姿は、孤独から逃れずに戦うよう言っているようだ。とても励まされる作品であった。

 それにしても、主演のロバート・レッドフォードの格好良さといったら、男である自分が見ていても惚れぼれするほどである。撮影が行われた山の気温は、零下25℃だったという。そんな中、オオカミと格闘するなど、文字通り命がけの演技だった。

 鑑賞後の余韻を実はいまだに引きずっており、感想を整理できていない。が、いろいろな点で、秀作であるのは間違いない。

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