私の研究日記(映画編)

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『ブロードウェイ♪ブロードウェイ  コーラスラインにかける夢』(Theater)

2008-11-18 14:08:49 | は行
原題 Every Little Step: The Journey of a Phenomenon
監督・製作 ジェームズ・D・スターン、アダム・デル・デオ
製作総指揮 ジョン・ブレグリオ
製作 2008年
時間 93分

 舞浜イクスピアリ。結婚式の待ち時間を利用して鑑賞(11月3日)。

 ニューヨーク、ブロードウェイ。2006年秋、伝説のミュージカル『コーラスライン』が16年ぶりに再演されることが決まり、出演者を選ぶオーディションに3000人を超えるダンサーたちが応募する。この中で合格できるのは、たったの19名。その熾烈なオーディションを描いたドキュメンタリー映画である。

 ミュージカルの名作『コーラス・ライン』。「コーラスライン」とは、「稽古で舞台上に引かれるラインのこと。コーラスつまり役名のないキャスト達が、ダンス等でこれより前に出ないようにと引かれる。メインキャストとコーラスを隔てる象徴ともなっている」(Wikipedia)。ミュージカルの『コーラスライン』は、新作ミュージカルのコーラス役のオーディションで、最終選考に残った17人のダンサーたちが、一人一人自分たちの過去や悩みを赤裸々に語っていくというストーリーである。

 日本でも劇団四季が公演しており、そのCMを何度か見たことがあるので、ミュージカルに対する造詣が全くない私も、名前ぐらいなら知っている。逆にいうと、知っているのは名前だけという状態であった。そのオーディションを撮影したドキュメンタリーである本作を見て、ストーリーを知らない私が楽しめるのかどうかという不安もあったが、そんな不安は杞憂だったといえる。結論からいえば、心の底から見てよかったと思える秀作であった。

 上に書いたように、オーディションは約3000人の中から19名を選び出すというものである。しかも、ダンスの素人の中から出演者を選び出すのではない。応募者の中には、既にいくつもの舞台を経験しているようなプロのダンサーもいる。さらには、オーディションが数カ月に及ぶため、中にはオーディションを受けるために、ニューヨークへと引越しをしてきた者もいる。まさに「他の全てを投げ捨ててダンスに取り組んできた」人たちによる過酷なオーディションなのである。

 19人の役が一つ一つ選考されていく様子が映し出される中、圧巻だったのはポール・サンマルコ役の選考場面。なかなか決まらないポール役。もうダメかと思っていた頃に現れたのが、ジェイソン・タムである。選考会場で、ジェイソンは、ゲイであるポールが女装した姿を両親に見られた時の思い出を語る場面を演じる。目には涙が浮かび、声が震えている。オーディションの様子が映し出されているだけなのに、私も涙を抑えることができなかった。感情のこもった迫真の演技に、演じ終えたジェイソンは涙を止めることはできない。選考委員の方はというと、やはり感動して涙を流している。

 『コーラスライン』のストーリーを知らなかった私であったが、映画の中で19人の役柄が説明されるので、問題なく楽しむことができた。何より、人が全てを捨てて何かに打ち込む姿は、『コーラスライン』を知らずとも共感できるはずである。

 ドキュメンタリー映画は作品そのものの数が少ないが、今年初めに見た『アース』を始めとして、最近は優れた作品が多い。本作もそんな作品の一つである。自信を持ってお勧めできる秀作であるといえるだろう。マイケル・ダグラス主演の『コーラスライン』もぜひ見てみたい。

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