翻 身 Fanshen

いつの日か『翻身』を遂げる事を夢見て
歩き続ける想いの旅。

コレが本当の負け犬の遠吠え?

2004年10月06日 | 恥の肥し

そんちょさんのスーパーのおばちゃん話に去年のあの日の出来事を思い出した。

ちょうど去年の今頃、転職の合間で暇になった1ヶ月、小遣い稼ぎをしようと、一日単位で契約できる「売り子」のアルバイトをしていた。
基本的に酒類が大好きだったため、自然にお酒の試飲を勧めるアルバイトを選択した。

それは、マネキン会社から仕事の電話を受けると、指定されたスーパーへ一人で出向き、商品の在庫を預かり、店内の指定された場所でカウンターやゴミ箱の設営をし、営業開始とともに試飲サービスと販売を始めるという、メーカーから派遣された人間として通して一人でこなすものだった。
私は数回ほどその仕事を受け、小田原や島田のスーパーに一人で出向いた。

三角巾に白いブラウスと紺・グレー・黒いずれかのパンツかスカートにエプロン姿、服装は会社から厳しく指定されていた。
そして、開店と同時に店内全域に響き渡るほどの大声を出し、商品のアピールと試飲を勧める文句を叫ぶのが基本姿勢である。
その日の売上は、細かく会社へ報告する事になっていて、最後にはお店の責任者から服装、接客態度、勤務態度などの項目を5段階で評価されるのである。

この売り子の仕事は、冷房が常にガンガンの店内で且つ酒コーナー冷ケースの傍で一日中立っている為、体は芯から冷え切り、その上8時間ぶっ通しで大声を張り上げるため、想像以上に大変だった。
バイト終了後に報告する、売上と勤務評価は実際の所はどんな評価であっても、手を抜いても抜かなくても給料は同じであった。でもやる以上は「一生懸命」がモットーであるから、私はかなり頑張っていた。
もちろん、その成果も売上に反映されていた。

事件が起こったのは、そろそろこのアルバイトもこのお店で最後にしよう、と思っていた富士市のスーパーでのことだった。
その日私は最後のバイトを終え、バックヤードにある事務所へ行き、評価表をスーパーの責任者に手渡し、自分の評価をお願いした。

「え、コレ何?評価しなきゃならんの?どうしよう、よく見てないからわかんないや。いいや、全部3で。」

そう言って、その責任者は至極いい加減な口ぶりで私の評価表の項目全てに3を書き入れた。
私はこういう絵に描いた様な「嫌な奴」に直接接触したのは多分生まれて初めてだったのかもしれない。

「あ、ありがとうございます。」

私はその評価表を受け取り、一旦は帰ろうとそのお店を出た。

しかし、その途端、その責任者のいい加減な態度、自分にとっては過酷ながらも一生懸命やりその成果は売上にも反映しているのに評価が3であったこと、その日が疲れのピークだったこと、様々な想いが込み上げそれが悔しさとなって爆発した。
もうその時は何も考えていなかったと思う。私は回れ右をして再び店内へ戻り、バックヤード事務所にいる責任者の前に立った。

「私は今日一日きちんと仕事をこなし、それは売上にも反映されています。先ほどの主任の評価ですが、見ていないと言っていながら3と評価するのはおかしいと思います。正当に評価して頂かないと困ります。」

そう言って、評価表をつき返してしまった。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。強気に出たものの私の声や足は完全に震えていた。
信用している人以外には感情的にならない、が基本姿勢の私だが、恐らく社会人になってその日会ったばかりの他人にあれほど怒ったのは初めてだと思う。
しかし、その主任は私の人生で出会った中で殿堂入りの嫌な奴だった。

「はぁ?じゃあ誰があなたの仕事を見てたの?教えてよ。」

私は常に気遣って言葉をかけてくれたある店員Sさんの名前を言った。

「そーなんだ、おーいS!ちょっとこっち来てくれる?この子さぁー「3」じゃ不満なんだって。全部「5」でも付けてやったらぁ?」

この言葉で完全に火山は爆発した。

「お、お言葉ですが、「3」がいいとか「5」がいいとかそう言う問題ではありません。私は自分の仕事が評価されてそれが残される以上、正当に評価して頂かないと困るんです。きちんと私の仕事を見た方でしたら「1」を付けても一向にかまいません。そもそも、会社からは主任さんが最後に評価すると始めから聞いておりす、そういう話がある以上、主任さんは私の勤務態度を見るのも仕事だと思います。それを怠っておいてよく人を評価できますね。」

私は最後の言葉は余分だったと思いながらも、もう抑えることができなかった。
その恐ろしく嫌な奴(主任)は、席を立ち、

「言っとくけど、あんたのうるさい話をこうやって聞いているのだって仕事に支障をきたしてるんだよっ!」

と捨て台詞を残し、その事務所を去っていった。
私はかなりワナワナしていた。Sさんは事務所内でその一部始終を聞きながらも、私の評価表に熱心になにやら書き込んでいた。
その後書き終えたSさんは

「ごめんね、嫌な思いさせちゃって。ホント、お疲れ様でした。」

と言って、評価表を私に渡してくれた。そこには、5段階評価だけでなく、その横の欄に私の仕事ぶりを評価したコメントが細かい字で書かれていた。
私は四面楚歌に近かった状況で、事務所内で一人吠えていた為、そんな思いがけない優しさに触れて思わず涙が込み上げてきてしまった。
しかし、いくらSさんと言えども、自分で吠え立てた以上ここで涙を見せるわけにはいかない。ぐっとこらえて、急ぎ足で車まで戻った。

最後はSさんの優しさに救われたからいいものの、あのこの上なく嫌な奴にはその後も腹が立ってならなかった。
また、アルバイトの立場の弱さ、またその境遇に身をおくはめになった自分、諸々の悔しさが日本海の荒波の様に私の胸に打ち寄せた。
そして、ようやく車内で一人になった私は

「私は悪くなーい!私は悪くなーい!」

と家路を走る車を運転中、涙を流して延々と吠えたのだった。
この時の叫びは、勝ち負けはないにしても、かなりの遠吠えだったであろう。
こんな私はもう少しで世間で言われる「負け犬世代」に突入する。




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4 コメント

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Unknown (そんちょ)
2004-10-06 08:19:52
立派だと思いますよ。

私だったら、「なんか、腑に落ちないけど、ま、いっか。」

で済ませてしまうところです。

(そういういい加減なところがあるのです・・)



私も最近、店番をする時に試食を勧めるのですが(陶器のご飯釜で炊いたご飯とか、おこわとか)、やはり食べてもらえないと言うのが一番ガッカリします。



評価の入り口にも立てないわけですから。

逆に、気に入ってもらえて、壱万円以上もするお釜を買っていただいたときの嬉しさはなんともいえません。



両方の立場が分かっていても、どうしても試食をするというのがニガテだったりもします。

困ったものです・・。



トラックバックありがとうございました。
Unknown (fanshen)
2004-10-06 15:06:30
自分で作ったものを売るのは気持ちが入っていていいですよね。

私の場合は毎回メーカーは違うし、実は安くないのに、「お買い得です~」なんて言わなければならなかったり・・・。

それでも、買って行ってもらった時は本当に嬉しいものです。



私も試食を勧められるのはどっちかと言うと苦手です。

話した事もない人が、いきなり友達みたいな雰囲気でなつっこくしてくると、ドギマギしてしまいます・・・。



結局は私の場合は「売り子」さんの仕事はムイて居なかったみたいです。そのせいでストレスが溜まりまくっていて、それであそこまで怒ることもないのに、大人気なく怒ってしまいました・・・。
判る、判る (god-des)
2004-10-06 23:16:43
自分も今の仕事に就く前に、そう言った日雇いの仕事してました。

僕の場合は土木とかの現場が主だったんですが、あーゆー関係の方ってのは荒い人が多くて。

ましてその日限りのバイト君なんざ扱いもかなーりぞんざいで。

よくイライラしてました。

まぁ一緒に働いている人達も「アンタ大丈夫か?」ってなオジサンだったり(リストラか?)

「この先この仕事続けてく気なのか?」ってな今の自分と同年代くらいの兄ちゃんとか。

かるーく訳あり系の人達だったんですが。

まっ今ではキチンと?就職して落ち着いて親も安心してくれているので良いかと・・・

人生結果オーライですから。
Unknown (fanshen)
2004-10-07 00:56:09
いくらアルバイトでも仕事は仕事としてキチンとこなす。

そういう姿勢の人だって沢山います。

私は肩書きにこだわる人や、それで全てを判断するタイプの人が苦手なんです。

god-desさんのフットワークの良さが、結果に繋がっているように見受けられます。

私の人生、果たしてどんな結果がオーライするのでしょうか・・・。