翻 身 Fanshen

いつの日か『翻身』を遂げる事を夢見て
歩き続ける想いの旅。

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感性のある人

2004年12月28日 | 日記

年賀状の話題がタイムリーな今頃になるとある事を思い出す。

私が以前勤めていたレコーディングスタジオの社長のこと。
社長は、CMソングや社歌、演歌、ポップスなどの作曲家だった。同時に、プロのギターリストでもある。

こう言った類の事を仕事としてこなし、ご飯を食べている人は、やっぱり人とは違う感性を持っていると思う。
その会社の社長も、やはりそうだった。
その感性は時に素晴らしく人を感動させたり、時に素晴らしく人を困らせたりした。
一般的に前者を『ファン』、後者を『表現の犠牲者』と私は呼ぶ。
そう、私はまさしくの犠牲者の一人だった。


その会社が郊外から市街地へ移転して2年目の冬に私は入社した。
それから、覚えている限りだと5回ほど、私はその会社の年賀状制作を担当した。
この年賀状制作。最初は私の感性で自由に制作していいようなニュアンスで一切を任される。
しかし、私がこれだ、と思って提出したデザインが、そのまま採用された事は5回のうち一回もない。
もしもこれが、デザインセンスのNG出しなら、納得する。

が、その社長の場合、私の作成した年賀状を原画として、独自の感性でアレンジしていくのである。
しかも、それはすべて頭の中のイメージの話であり、それをイラストに起こしていくのは私の仕事なのだ。
この社長のイマジネーションの世界は、一般人の範疇を越えた場所にあるのだ。
だから、社長のイメージをイラストに起こすことは、言葉で言うと容易い様に思われるだろうが、実際にはSF小説の映画化と同じ位の難しさだった。

兎年。
『兎が昼寝をしていて(鼻ちょうちんアリ)、夢を見ている。その夢の中はレコスタの映像。そしてその夢をサウンドが支えている。』
辰年。
『辰がパラシュートで空から降りてくるのだけど、そのパラシュートは穴が空いていて、辰は大慌て。そしてその辰はエレキギター(これだけ実写)を下げている。』

一体社長のイメージはどんな世界なのか、一度でいいから映像化して欲しいと、何度切に思ったことか。
どうか、毎年突っ込みたい衝動を必死でこらえてきた私の気持ちを理解してほしい。
もしも、理解できなくても、察していただきたい。
一応、県内トップの設備を誇るRecording Studioの年賀状だ。
できる限り、ハイセンスなものを発信したいじゃないか。
それが、実際のそれは一体どういう事だろう。
前後にもう何コマかある、漫画のワンシーンじゃないんだから。
私のない画力ではどう頑張ってもおしゃれに仕上げられないのです。

未年。
とうとう私は勇気を出してこう言った。

「社長、音楽スタジオですから、楽器を前に出してみませんか?今年はシンプルにいきましょう。社長の持っているレアなギターを私がうまく切り抜きますから、白バックにギター一本だけ配置して下にスタジオのロゴかネームを入れませんか?」

「いいねぇ。それにしよう。じゃあ明日早速ギター持ってくるよ。」

やった。とうとう、『れこーでぃんぐすたじお』ではなく『Recording Studio』の年賀状が作れる。
5年間たまりにたまった私の年賀状の作成ストレスは、これで全て解消されるはずだった。
しかし。
デザインマスターも作り終わり、印刷会社へ入稿予定だった日の朝。

「fanshenクン、年賀状だけどさ。やっぱり、ギターの上に5ミリ大くらいの羊が載ってるんだよね。」

「・・・はい、5ミリ大の羊ですね。すぐ載せます。」(涙)

やっぱり、感性のある人には、私達が見えないものまで見ているんでしょうか・・・。
その時は、大変だったけど、そんな社長が私はとても好きだったと、今になって思います。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
だよね!! (jeepway)
2004-12-28 22:03:52
こんな風に言えるようになったのは、時間が経ったからなのかなあ。

時間は何よりも残酷だけど、何よりも優しいのだと思うのです。
Unknown (fanshen)
2004-12-29 01:44:22
うん、そうだね・・・。

振り返ってみて、全てがこんな風に思えること

ばかりだとイイのになぁ。

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