翻 身 Fanshen

いつの日か『翻身』を遂げる事を夢見て
歩き続ける想いの旅。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

石焼き芋売りのプロ(1)

2005年02月05日 | 映画・音楽・読書

タイムリーな話題「焼き芋」つながりのお話で。

昔勤めていた録音スタジオでのこと。
あるシーズンの1クール(3ヶ月)前に遠州の方面からやってくるおじさんがいた。
その人、夏は「氷売り」冬は「石焼き芋売り」その他の時期は「わらび餅売り」を商っていた。
そんな商人が録音スタジオへ何しに来るのか?とお思いかもしれない。

しかし、そのおじさん、見た目は本当にただのおっさん風なのにもかかわらず、その商売のプロ意識の高いこと高いこと。
トラックから流れる例の声「い~しや~き、いも~!お芋だよ~!」をプロのナレーターさんに叫んでもらい、きちんとした録音スタジオで収録したものを使いたい、と依頼してきたのだった。

私はこのおじさんのプロ根性を高く評価し、ナレーター料、録音・マスタリングスタジオ使用料、マスター音源収録メディア料(CD)などなど計算し、見積りを作成した。
当時、私が在籍していたスタジオは県内一位の設備を誇るスタジオだったので、スタジオの使用料もじゃっかんお高めだったのにもかかわらず、そのおっさんは見積もり通りの金額で即OK。ただ、どうしても、もったいなかったのが、マスターをエンドレステープに変更して欲しいとの依頼が。
(CDの方が安い上、音質も劣化しないし、お薦めなのに、よりによってエンドレステープか・・・)
どうやらおじさんの商売道具、トラックにはCDプレーヤーの設備はまだ整っていないらしい・・・。残念!

と言うわけで、少しだけややこしい(?)かもしれないが、そのおっさんは、春には「氷売り」、夏には「石焼き芋」、冬には「わらび餅」のテープ作りの為、スタジオまで連絡をしてきたのだ。

また、1クール(3ヶ月)前に次の商売の先手を打っておく、おっさんのプロ意識の高さばかりか、呼びかけのクオリティーにも妥協しないその姿勢に私は感心するばかりだった。

録音当日。
菓子折り3つを手提げ袋に入れ、遠州の方から静岡市街にあるスタジオへやってきたおじさん。
1つ目の菓子折りはスタジオへ、もう一つはナレーターさんへ、さて、最後の一つはどうすんだろう・・・(?)

その後、同じく遠州の方から男性ナレーターが来スタ。
クライアント(おじさん)とナレーターさん、両者を引き合わせる。
この時私は少し嫌な予感がした。それは私のナレーター人選ミスだ。
私は、ギャラの価格や、その人の技量ももちろんだが、結果的にはスケジュール最優先で、地元一番人気のFMラジオ局でパーソナリティーも勤める、じゃっかんインテリ風の男性ナレーターを選んだ。一番大切なこと、なりふりかまわず仕事として「石焼き芋」のナレーションを読める人かどうか、を考えて選んではいなかったのだ。

そんな不安を抱えつつも、私はそのまま録音の進め方の説明に入る。
ナレーターさんから、「今日私が読む原稿は?」との質問が。
おじさんがかばんから取り出したのは、クシャクシャになったA4用紙に、
「石焼き芋~お芋だよ~甘くて美味しいお芋だよ~」
とマジックで殴り書きしたものだった。そう、これが本日のナレーション原稿なるものです。
それを見たナレーターは少し固まる。しかし私は俄然やる気が出てくる。(いい味出してるよおじさん)

「石焼き芋」のナレーションをお願いしているのに「今日の原稿は?」とすました態度で聞いてきた男性ナレーターさんにfanshen心の中で、駄目だし入ります。
(今日の録音にはそんなものありません!あなた気取ってるけど、今日は『焼き芋』って叫ぶお仕事ですからっ!)
そう、何を隠そう私はイケメンにはめっぽう厳しい、おじさん派なのだ。
(しかしながら、お仕事ですぞ、fanshenさん。あなたの笑顔は会社の笑顔。)
「これでお願いしますぅ!」とおじさんの殴り書きのコピーをナレーターさんへ笑顔で手渡す、化け猫fanshen。

そして、録音は速やかにスタートした。

(つづく)
コメント   この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 頑張れおじさん。 | トップ | 石焼き芋売りのプロ(2) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画・音楽・読書」カテゴリの最新記事